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韓国外交のジレンマ 安全保障は米国依存、経済は中国依存 - 岡崎研究所

米外交問題評議会(CFR)のスナイダー上席研究員が、韓国は目下アジアインフラ投資銀行(AIIB)参加問題とTHAADミサイル防衛配備問題に関連して、米中の間で板挟みになっているが、今後更にTPPなどのFTA政策や半島統一に関する問題で益々難しい決定を迫られるであろうと論評しています。

すなわち、韓国は、リバランス政策やAIIBなどで圧力を強める米中の間で板挟みになっている。AIIB参加問題は、韓国の中級国家外交が米韓同盟を強化するのか、あるいは同盟に軋みをもたらすのかという問題を提起している。

韓国外交は、これまで米韓同盟の強化を推進してきた。しかし、これからは、同盟関係の枠組みと外交上の願望の間に緊張が惹起されることになるのではないか。

韓国は、米国のリバランス政策を強く支持してきた。しかし、米国の政策の主眼がむしろ北朝鮮への対応強化の必要性にあることが明らかになり、更に、その中で、米国は、韓国に対して域内の同盟国や友邦国、特に日本との協力強化を求めるようになっている。

韓国が願望する中級国家外交に対して、米国は複雑な反応を示している。大国との関係を強化し、海洋問題などで法による秩序を推進していくこと等については、米韓の間で何ら齟齬はない。しかし、韓国の東北アジア平和協力イニシャティブ(NAPCI)について、米国は支持を明らかにしておらず、また、地域機構の共同設立者の役割を果たしたいとの韓国の願望に、米国は関心を示していない。

韓国の願望の行方は、韓国が米国、中国との関係を如何に構築していくかによって決まる。米中関係が厳しくなればなるほど、韓国は難しい選択を迫られる。

更に長期的には、FTAへの対処、すなわちTPPへの参加の可否や中韓FTA等との連携について、「興味深い」決定に直面している。しかし、最も「興味深く、重大な、苦渋の決断」になるのは、米中の利益が対立する朝鮮半島の統一に関する将来の決定であろう、と述べています。

出典:Scott Snyder‘South Korean Middle Power Diplomacy and the U.S. Rebalance’
(Council of Foreign Affairs, March 24, 2015)
http://blogs.cfr.org/asia/2015/03/24/south-korean-middle-power-diplomacy-and-the-u-s-rebalance/

***

3月26日、韓国はAIIB参加の決定を発表しましたが、韓国がAIIB参加問題やTHAADミサイル防衛配備問題で米国と中国の間で板挟みになり、難しい判断を迫られてきたとのスナイダーの論評は、妥当な見方です。

スナイダーは、現下の韓国外交を「中級国家外交」と呼んでいます。米中の間で、また日中の間で、自らの国益と存在感を最大にすべく積極的に動こうとする外交です。盧武鉉大統領(2003~08)の時代には、「北東アジアバランサー論」と呼び、日米との関係を見直し中国との関係を強化しようとしましたが、基本的にはそれと同根の考え方で、韓国外交の底流に根強くある考えであると言えます。

しかし、かかる考えは、状況によっては、無原則、非現実的な外交になります。外交は基本的に自分の力以上のことはできません。中国は韓国にミサイル防衛の配備をしないように求めるとともにAIIBの参加を求め、他方で、米国は韓国にミサイル防衛の配備を求めるとともにAIIBの不参加を求める状況で、韓国は苦悩してきました。英国等が参加決定したことでハードルが低くなり、AIIB参加を決定しました。これでTHAAD配備も認める可能性が高くなったかもしれませんが、そういうことになれば、結果的に、米中双方に不満と不信をもたらすことになるかもしれません。理論的にいえば、無原則なバランサー外交は同盟外交とは相容れないものです。

韓国にとって問題なのは、この種の問題は今後も起こりうるということです。スナイダーもいう通り、今後、FTA政策についても同様のことが起こり、朝鮮半島の統一政策については一層難しいことになります。韓国は、安全保障は米国に依存し、経済は中国に依存しようとしているので、このままだとジレンマの構造はより強くなるでしょう。それに加えて、中国は、韓国に強烈な外交攻勢をかけています。

しかし、韓国が北東アジアで過度にバランサー的な外交をすることは、当該地域を不安定化させます。中国に間違った信号を送るリスクもあります。日韓関係、米韓関係、日米韓関係を適正に運営していくことが、地域にとって、また、日本にとっても、特に韓国にとっても利益になることです。残念ながら、目下の韓国の一般的な考えはそういった志向ではなく、対日競争志向が大勢です。日韓関係を競争よりは協力の関係にし、その上で中国とも利益になる関係を発展できるようにする努力が望まれます。

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