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自宅にスパを持ち込んだオンデマンドマッサージサービス「Zeel」


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日本でもおなじみのマッサージだが、欧米でも歴史が古く、代替医療として広く浸透しているという。欧米ではマッサージといえばスパに行くのが主流で、エステというよりもヘルスケアとしての認識のほうが一般的で需要も高い分野だ。

ところがこのマッサージは、予約を入れるのがなかなか大変だという。空き時間が限られているため自分のスケジュールと調整する必要があり、疲れがたまった当日にマッサージを受けてリラックスして次の日にのぞむ、というようなわけにはいかないのが現状だそうだ。

そんな予約の取りづらさを解決しようと立ち上げられたのが、2013年4月にニューヨークでデビューしたオンデマンドマッサージアプリ「Zeel」だ。同サイトでは週7日、午前8時から午後10時半の間で予約を受け付けており、48時間以内までであれば好きな時間帯、好きな場所を指定可能。自宅やホテル、職場でゆったりとマッサージを受けられるのが特長だ。

現在は、ロングアイランド、ロサンゼルス、マイアミ、サンフランシスコでサービスを展開。ニューヨークで420人、南フロリダで170人、ロサンゼルスで150人、ベイエリアで150人ほどのセラピストが同サイトに登録している。

2012年には第1シードラウンドとして150万ドル(約1億5000万円)、2013年に第2シードラウンドとして175万ドル(約1億7500万円)、2014年には170万ドル(約2億円)の資金調達に成功。スマートフォン操作でスパから自宅へと簡単にスイッチすることが出来る、ありそうでなかった魅力的なサービスをじっくりと探っていこう。

データから導いたマッサージサービスへの特化

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Zeelの創業者は前Vaultの創業者であり、Campusfood.comの投資家兼アドバイザーを務めていた実績を持つSamer Hamadeh(以下、ハマダ氏)。小学生時代には1個あたり25セント(約25円)のキャンディを学校で50円で売って儲けたこともあるという。

同氏は2012年初期、ZocDocMedicastのような仕組みを作ろうと健康に関する総合的な代替サービスを提供するサイトとして、「Zeel」を立ち上げる。そして保障が整っていて、直接予約ができ、専門の治療を行うスタッフを簡単に探すことができるサービスを目指し、マッサージセラピストや個人トレーナーから栄養士や鍼師まで、医療の代替えとなる残りのマーケットすべてを網羅しようとした。

ヘルスケア産業への進出は思った以上に複雑で、健康保険に関する込み入った法律や州によってことなるマッサージ師のライセンス、地方ごとの規制などさまざまなことを理解し、対処する必要があったが、ハマダ氏は2年ほどかけてこうした問題をひとつひとつクリアし、Zeelのサービス基盤を築いていったという。

こうして起ち上げられたZeelだが、いざ実際立ち上げてから統計を見てみると、意外なことが分かった。過去18ヶ月間の予約の約50%がマッサージで占められていたのだ。

マッサージは人気が高く、なかなか予約を取ることができない。たとえば休日に疲れを癒そうとスパに予約を入れても、空き時間と自分のスケジュールが合わずにその調整に追われ、結局予約出来たのは、休日の最終日の遅い時間だったりする。その点Zeelでは直前予約が行いやすく、自宅でマッサージを受けることができる。Zeelのサービスでマッサージに注文が集中した背景には、こうした事情があったようだ。

また利用者のほとんどが自宅でのサービスを要望し、55%以上が当日(4時間以内)の予約を希望していることも分かった。統計からマッサージの需要を見てとったハマダ氏は、Zeelをこれまでの総合的なヘルスケアサービスから、マッサージに特化したオンデマンド・サービスに切り替えることを決意する。

当日予約のオンデマンドサービスにサービスを切り替えるにはUberのような機動性が必要不可欠な要素であったため、より利便性の高いアプリの作成も開始。2013年にはデリバリーマッサージサービスとしてニューヨークでリロンチし、2014年にはサウスフロリダやロサンゼルス、ベイエリアへの展開も果たした。

Zeelのサービス

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現在、Zeelでの予約はアプリ、サイトの両方から行うことができる。時間帯は当日から48時間以内、場所は自宅やホテル、オフィスなど利用者の好きなところを指定可能だ。なお施術には専用のマッサージテーブルを使っているが、これも持参してくれる。

予約時にはまずマッサージを受けるタイプを選択する。1人で利用する「Single」、恋人や夫婦の2人で受ける「Couples」、次々順番にマッサージを受けられるため、グループ予約に最適な「Back-to back」、職場に専用の椅子を持ち込んでおこなう「Chair」がある。

つづけてマッサージのタイプやセラピストの性別、どのぐらいの時間マッサージを受けたいかを選択する。用意されているマッサージの種類は「スウェーデン式マッサージ」「ディープティシュー」「プリーネイタル」の3種類。

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スウェーデン式マッサージはオイルを使って強い刺激やもみ返しを与えることなく、じっくりと優しくコリをほぐしていくやり方だ。ディープティシューは「筋肉の奥深く」という意味で、強めの圧をかけて疲れやコリをほぐす、よりストレスが残りやすい利用者を対象としている。

またプリーネイタルは出産前マッサージのこと。特別な訓練を受けたセラピストが骨盤や背中の痛みを和らげ、妊娠にともなう不快感を緩和してくれる。このサービスは外出しづらい出産前の女性が体調を回復させる方法のひとつとして注目されているようだ。

セラピストの性別で選択できるのは「男性」「どちらかといえば男性」「どちらかといえば女性」「女性」「こだわらない」の5種類。またマッサージにかける時間は60分、75分、90分の3種類を選択できる。

その後はマッサージを行う住所や駐車場の有無、その場所は何階にあるか、ペットを飼っているか、マッサージテーブルを持っているかなどの部屋情報を入力すればOK。サイト側で料金表示とともにZeelに登録されているセラピストの中からあなたにピッタリの人を選び出し、15分以内に予約確認メールを送ってくれる。

サービスの利用は週7日、8時から22時30分まで可能だ。価格は地域によって値段は多少変動するが、60分間159.25ドル(約1万7000円)から90分間214.38ドル(約2万4000円)ほどでいずれも税込、チップ込の料金となっている。ちなみにこの料金は一般的なスパと同程度というから、かなりお得と言えるだろう。

セラピストはマッサージテーブルを含め、必要なキットをすべて持参してきてくれるため、利用者の方で特別な器具を用意する必要はない。セラピストの中には、小さなスピーカーセットを持ってきて癒しの音楽を施術中かけてくれたりする人もいるという。

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Zeelのセラピストは少なくとも3~5年の経験者で、厳しい審査を受けてパスしたもののみが登録できる。Deep tisueからタイマッサージまで、さまざまな技術を会得しており、どのセラピストも質が高いと評判のようだ。なおセラピストへの報酬は料金の75~80%ほどで、週払いで口座へ振り込まれるとのこと。

マッサージを家庭に持ち込んだことで起こりうる問題を解決

利用層とニーズを見極め、サービスを出張マッサージに特化することで成功を収めたZeelだが、利用者の家庭内でマッサージを提供するには、安全性の懸念もあった。利用者は見知らぬセラピストを自宅に招く必要がある。またセラピストの方も利用者の部屋に入るため、どのようにお互いの信頼性を担保するかが問題だったのだ。

ハマダ氏らはこの問題を解決するために90カ国以上でデータや分析ツールを提供している情報サービス企業、Experianのサービスを利用している。

利用者がZeelのアプリやサイトにアカウント登録する際には、登録された氏名、住所、生年月日が正しいものか、使用するクレジットカードが有効であるかどうかをチェック。これにより偽名を使っての犯罪行為や、無効なクレジットカードを提示することによるキャンセル料の未払いなどを防ぐことができるというしくみだ。

同サイトのシステムにはマッサージ開始時と終了時を知らせる機能もあり、セラピストの動向が把握しやすく、このことも安全性を確保する一要素となっている。またセラピストは予約を受け付ける前にクライアントの情報に目を通した後、アプリでその予約を確定させるが、自分に合わないと思うようなクライアントの場合は、予約をスルーすることも可能だそうだ。

「個人の部屋」に入る仕事だからこそ、セラピストもより安全な環境が必要となる。こうした問題点をうまく解決している点が、同サイトの成功要因のひとつだろう。

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