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ゼノフォビア襲撃 モザンビーク作家ミア・コウトがズマ大統領に公開書簡

一連のアフリカ諸国民襲撃事件で7人目の犠牲となったモザンビーク人の露店行商人、エマニュエル・シトレ(Emmanuel Sithole)さん(35歳)の殺害容疑者4人が逮捕された。

大勢の通行人や全国紙『サンデー・タイムズ』紙ジャーナリストの目の前で、白昼行われた殺しである。犯人の顔がはっきり映った写真が、4月19日付『サンデー・タイムズ』紙の一面に大きく掲載された。捕まらない方が不思議だろう。殺人の一部始終がカメラに証拠として残されたこと、目撃者が多いこと、更に、世界中で報道され、多くの注目を浴びてしまったことから、4人にはスピーディに有罪判決が下ると見られる。

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新聞社のカメラマンは通常大きなカメラを抱えているし、『サンデー・タイムズ』紙のジャーナリストはふたりとも白人。住民の殆どが黒人の地域では目立つ存在である。それでも躊躇しなかった犯人たちは「どうせ捕まらない」とタカをくくっていたのか。(ところで、先日、テレビカメラの前でレポーターを襲った強盗は捕まったのだろうか?)

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エマニュエルさんを病院に運ぶジャーナリスト(IOL News

現場に居合わせた被害者の姉(妹)ジョーディナ・マシア(Jordina Masia)さんによると、料金を払わず売り物のタバコを持ち去ろうとしたので、エマニュエルさんが咎めたところ、襲ってきたという。警察では「通常の強盗殺人事件か、ゼノフォビア動機か不明」と言っているが、ゼノフォビア襲撃の多く、特に商店襲撃は「外国人」を口実にした略奪と見られるケースが多い。少なくとも、武器を携行して路上を歩いていたこの4人は、時流に乗って「外国人」を襲おう、あわよくば懐を潤わせよう、と考えていたのではないか。また、最初から「外国人」を狙っていなかったとしても、タバコ数本のために殺してしまったのは、外国人襲撃風潮の最中、エマニュエルさんがたまたま「外国人」だったことが関係しているのではないか。(「ゼノフォビア」(xenophobia)については「収拾のめどがつかない外国人襲撃にアフリカ諸国が立ち上がる」参照のこと。)

4人の初公判を傍聴した、エマニュエルさんの家族の談話が今朝の『ザ・タイムズ』紙に掲載されていた。

(公判で笑ったり冗談を言っている4人を見て)「私の兄(弟)を殺した時、この人たちは同じように笑いながら立ち去りました。彼らは兄(弟)を犬のように追いつめ、通りで犬のように殺したのです。そして、今も笑っています。」-タンド・シトレ(Thando Sithole)さん

「エマニュエルは(ゼノフォビア襲撃が激しかった)2008年にもここにいました。命からがら暴力から逃げ出したものの、南アフリカの国と人々が素晴らしいと思ったから滞在を続けたのです。南アが危険ということを私たちは知っていましたが、それでも希望を持っていました。私は1996年からこの国に住んでおり、自分はこの国の一部だと思っています。この国が私の家族に牙を向けるとは思ってもみませんでした。」-フィリップ・シトレ(Philip Sithole)さん

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出廷した4人の容疑者(IOL News

土曜日にエマニュエルさんが襲われたアレクサンドラ地域では、2日後の4月20日、モザンビーク人夫婦が自宅で被害に遭った。警官を騙った男たちに撃たれ、重傷という。翌22日、南アフリカ政府はゼノフォビア襲撃が活発な地域に軍隊を派遣。遅まきながら、外国人保護と治安維持に政府が本気を出したのか?

ISS(Institute for Security Studies 安全保障研究所)のギャレス・ニューハム(Gareth Newham)は、軍隊派遣に「政治的」な意図を読み取っている。「通常軍隊が派遣されるのは、事態が警察の手に負えない時。しかし、ゼノフォビア襲撃が活発だった地域は既に概ね沈静化している。政府が目論んでいるのは、事態を深刻に受け止めているという強いメッセージを世界とアフリカに向けて送ることだ。

そんな中、ポルトガル系モザンビーク人の著名な作家、ミア・コウト(Mia Couto)が、南アフリカのジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)大統領に公開書簡を送った。ズマ大統領は解放運動時代、モザンビークで亡命生活を送ったことがある。以下、書簡の一部を訳して紹介する。(原文はポルトガル語。全文の英訳はこちら。)

「何年もの間、私たちはあなた方に避難場所以上のものを与えました。家を提供し、私たち自身の安全を犠牲にしてまで、あなた方に安全を与えました。この寛大さをどうしてあなたは忘れることができるでしょうか?

私たちは忘れていません。南アフリカの解放運動を支援したことで、モザンビークは他のどの近隣諸国よりも高い代償を払ったのですから。脆弱だったモザンビークの経済は壊滅状態になりました。国土が侵略され、爆撃されました。モザンビーク人は国境の向こうの兄弟を守って命を落としました。私たちにとって、国境も国籍もありませんでした。同じ大義を信じる兄弟だったのです。そして、アパルトヘイトが終わった時、国境の両側で同じように喜び合いました。

何世紀もの間、モザンビークの移民、鉱山労働者、農場労働者は隣国南アフリカで奴隷同様の状態で働き、南アフリカの経済構築に貢献しました。」

「現在あなたの国で起こっていることは想像を絶します。南アフリカの兄弟たちが、憎悪と迫害の標的として私たちを選ぶなんて、想像することもできません。」「私たちが生きている悪夢は、あなたが政治的迫害を受けた時より深刻です。というのは、あなたが受けた迫害はあなた自身の選択、あなた自身が選んだ理想がもたらしたものだからです。しかし、現在あなたの国で迫害されている者たちの罪は、国籍が違うということだけです。モザンビーク人であるということだけです。南アフリカ人でないということだけなのです。」

「現在南アフリカで噴出しているゼノフォビアは、単なる、「他者」に対する野蛮で卑怯な攻撃であるばかりではありません。南アフリカ自身に対する攻撃でもあります。10年以上前、南アフリカ人が誇りをもって宣言した虹の国に対する攻撃です。国と国の間、国民と国民の間の感謝の気持ちや連帯感に対する攻撃です。南アフリカ人の一部は母国の名前を汚しているのです。」

「あなたの国が現在、このような非人道的な理由で世界中のニュースになっているのは悲しいことです。」

公開書簡の最後でコウトは、両国民の連帯感を強化する長期的な対応策が必要だと強調する。そして、モザンビークのアーチストや作家たちは、南アフリカのアーチストと力を合せて喜んで努力する、と手を差し伸べている。

今だったらまだ、私たちはこの痛み、この恥辱を両国と両国民の崇高さや威厳を表現するものに変えることができるのです。


(参考資料:2015年4月19日付「Sunday Times」、4月20日、21日付「The Sar」、4月22日付「The Times」など)

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