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日銀審議委員にトヨタの布野氏起用は安全策か

 政府は21日に6月30日に任期満了となる日銀の森本宜久審議委員の後任に、トヨタ自動車の布野幸利相談役を充てる国会同意人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提出した。

 昨年10月31日の量的・質的緩和の拡大(異次元緩和第二弾)の決定にあたっては、政策委員の票が割れ、かろうじて5対4で追加緩和を決定した。今回任期を迎える森本氏はこのとき反対に回っていた。反対した4人は産業界出身者で、執行部(総裁と2人の副総裁)以外で賛成に回ったのは2人の学者出身者であった。

 このため、内閣官房参与の浜田宏一氏は、今年3月と6月に相次いで任期を迎える2人の日本銀行審議委員の後任人事について、産業界や金融界などから選ぶべきではないとの見方を示していた。つまりこれは現在の日銀の政策を理解するリフレ派の学者から選出すべきということになる。現実にリフレ派の原田氏を前回、政府は起用した。ところが、今回は浜田氏の主張通りにはならず、森本氏(東京電力出身)と同じ産業界から、しかも日本を代表する輸出産業のトヨタから布野氏が選出された。

 リフレ派を代表するような学者であった原田泰審議委員の選出にあたっては、日銀が財務省と擦り合わせしながら官邸に人選をあげていく過去のプロセスを経ずに、一貫して官邸主導だったとされる。今回も同様に過去の慣例にとらわれず、浜田参与などの意見をもとにリフレ派を代表する学者を選出してくる可能性もあるかとみていたが、官邸の決定は極めてオーソドックスなものとなった。

 むろん、昨年10月の異次元緩和第二弾での票割れは意識したとみられ、黒田総裁など執行部の意見寄りの人選であったと想像される。しかし、リフレ派学者による日銀政策委員のシェア拡大といった事態にはならなかった。

 官邸としても、ここにきて日銀とはやや距離を置き始めている。異次元緩和第二弾にも絡んでいたとみられる消費増税を巡っての意見の相違、さらには財政健全化を巡っての経済財政諮問会議での黒田総裁のオフレコ発言等もあった。円安そのものについても、政府と日銀はやや意見を異にし、円安の効果を含めて物価目標達成を目指す日銀に対して、円安による中小企業などへの悪影響も政府は意識しているようである。物価目標そのものの見方についても浜田参与は「インフレ目標はそんなに重要ではない」とまで言い切っている。

 安倍首相がアベノミクスの中核となっていたリフレ的な発想を放棄したとは思えないものの、今回の人事案を見る限り、政府が日銀とやや距離を置いた上に、過度なリフレ的な政策についても、やや懐疑的な見方をし始めている可能性がある。物価そのものが日銀の掲げる目標に届かないばかりか、前年比マイナスとなる可能性も出てきている現状を見る限り、政府がある程度の安全策をとったとしてもおかしくはない。

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