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「一人の人間、事件に簡単にレッテルをはることはできない」~『黒い迷宮──ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』著者・リチャード・ロイド・パリー氏インタビュー~

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犯罪者も被害者も、誰もが持っている人間としての“複雑さ”

―犯人の織原が日本に帰化した 在日韓国人だったことは、日本のメディアの報道に何らかの影響を与えたと思いますか?これは非常にセンシティブな問題なので、日本のメディアでは報道のテンションが下がっていくと言われています。海外紙の記者の立場から見て、実際には、どのように感じましたか?

ロイド・パリー:日本ではある種のタブーという部分があるという意味でしょうか?

日本のニュース機関というのは、どうも在日外国人 などの出自の問題になると、非常に神経質になる部分もあるようです。時にはそういった出自を極力記事で書かないといったこともあるようですし、それが記事の執筆を難しくさせるということも感じています。

しかし私にしてみれば、それは単なる事実でしかない。彼の出自は 明らかに在日韓国人なわけです。ただ、それと同時に重大な犯罪で有罪になったという事実があります。在日韓国人であったことと、事件の犯人であるということは、すべて並列な事実の中の一つであって、その事実を読者に知らせるために、それぞれ述べることに関しては何の問題もありません。

ただ、事実として彼は日本で生まれて、日本で育って、その上で事件当時のような状況が生まれている。どうして、あのような織原が生まれたかということを考えた時、私自身はその説明を明確には出来ていません。ただ、彼が日本という国で生まれ育った人間であることを考えると、その意味で日本にも何らかの原因はあるのではないかと考えています。

もしそうした事情を無視して、彼の出自と犯罪の原因を結びつけて語るのであれば、それは人種差別主義者と同じで、馬鹿げたことではないでしょうか。

―最後に今回の本の読みどころや読者の方にメッセージをいただけますか?

ロイド・パリー:もちろん、たくさんの方に読んでほしいですし、この本こそが私からのメッセージだと思ってほしいですね。もし他にあれば、Twitterで400ページ分のツイートをしますよ(笑)。

この本は、言うなれば登場人物一人一人の個人の物語でもあります。私は、この本に出てくるすべての登場人物、それぞれが唯一無二のものであることをとらえようと考え、家族や警察関係者、弁護士といった様々な人たちに取材をして、話を聞きました。その過程で、当初ルーシー・ブラックマンという事件の犠牲になった女性は、登場人物の中でも最も興味をひかない女性ではないかとも考えていたのです。

何故なら、彼女はまだ若かったですし、ごくごく一般的な、それなりに品のある良い人間だったからです。特に突出した才能があるわけではないですし、ごくありふれた女の子だったと思っていました。ところが、彼女の家族や友人、知人に話を聞いてくと、ルーシー・ブラックマンという人間は非常に若い人間にも関わらず、それぞれが異なるイメージ、見解をもっていました。「彼女はこういう人間だ」と、みんなそれぞれ違う人間のような表現をするわけです。

つまり、一人の人物のことを語っているにも関わらず、様々な意見が出てくる。その意味では、パズルの一つ一つのピースをつなぎ合わせて、一つの人間像をつくっていくというような作業でした。

執筆を終えて考えたことは、一人の人間であっても、それぞれが非常に複雑なものを持っているということです。一人一人が、非常に複雑な人格や心理などを組み合わせて一人の人間になっている。ですから、ある一人の人間を「ブロンドのホステス」と言いきったり、「欲深い父親」「悪のモンスター」という風に簡単にレッテルを張ることは出来ないのだと思いました。

この本を通じて伝えたいことがあるとするならば、どんな人間にもその人格において唯一無二のものがある。それがたとえ、こうした犯罪の犠牲者であろうが、犯罪者自身であろうが、誰もがその人にしかないものを持っているということを伝えたいと思います。

リチャード ロイド パリー Richard Lloyd Parry
早川書房


黒い迷宮──ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実 - Hayakawa Online

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