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日本の学会系科学雑誌を盛り上げるには:研究者も海外ブランドがお好き?

仙台の桜も見頃はこの週末が最後。桜に限って言えば、日本国民は自国の文化を非常にリスペクトしているように思えますが、ことが「科学」になると、未だに欧米礼賛の傾向が強いように思われます。

過日、某学会の某オフィシャル・ジャーナルの編集委員会がありました。英語で出版している国際誌ですので、国外にもEditorial Boardにお名前が載っている方はおられるのですが、日本在住の方が集まって、学会誌の将来等についての意見交換をしました。

当然ながら、学会誌としては、どのようにその権威を高めるのか、という「競争」を他の雑誌との間に繰り広げています。生き物と同じ、生存競争ですね。生き残るためには、投稿数が多いことや、掲載された論文が他の論文で引用されることにより、結果としてインパクト・ファクター(IF)が高くなることによって、さらに投稿数を多くして、より良い論文を掲載することに繋げたいという課題があります。

この雑誌のIFは現在2.86で、国内の生命科学系の国際誌の中では高い方であり、コンスタントに投稿もあり資金的にも安定している健全な雑誌です。ついに紙媒体での提供は無くして完全オンライン化になりましたが、編集委員会で配布された資料によれば、掲載されている日本からの論文の割合に比して、日本国内からのアクセス数が少ないという数字が出ていました。つまり、日本から論文は掲載されるのに、日本の研究者がそれを見ていない、気にしていない、ということになります。

これは、日本の研究者が自分の研究室からの論文を掲載している雑誌をリスペクトしていない、ということを意味すると考えられ、たいへんに残念なことです。

日本人にとって「科学」とは、明治維新の頃に「パッケージ」として西欧から輸入されたものでした。東北大学名誉教授である科学哲学者の野家啓一先生の近著『科学哲学への招待』によれば、日本にとっての「科学」は、近代科学が成立した時点の「science(集合名詞)」という段階よりも、より細分化されてきた時代の「sciences(複数)」として取り込まれたと言います。産業革命を経た西欧諸国に追いつけ、追い越せという目的のため、技術と不可分なものとしての科学という側面もあったかもしれませんが、何より、自国で独自に築かれた文化よりも、産業に役立つことが求められていたのでしょう。その名残なのか、欧米の雑誌の方がブランド力があるという意識に囚われている日本人研究者が多いように思います。

ちなみに、中国のGDPが日本を追い抜いて久しいですが、Cell Researchという中国の生命科学系の雑誌の2013/2014年のIFは、なんと11.981になっています。Nature Publishing Groupの傘下に入っていることも影響しているのでしょうが(一種のフェイクですね)、自国で強い雑誌を作るべきという目的で作られ、急増している中国人研究者からの強い後押しがあったものと思われます。近代科学の輸入に関して中国よりも長い歴史のある日本では、国内に種々の雑誌が存在し、それらの統廃合もせずに放置したために、どのIFも3を超えることが無いというのが現状です。国内生命科学系の雑誌を3つか4つ統合すれば、中国に対抗できる雑誌が創れるように思いますが、ある意味、成熟してしまった日本の研究者は、そんな面倒なことはしたくないし、それよりもCell, Nature, Scienceを狙うという、個人の目的の方が勝っているように感じます。

繰り返し書いていますが、IFはいわば「雑誌の価値」であって、個々の論文の価値ではありません。にも関わらず、種々の評価資料等において、この数字がひとり歩きしています。より融合的な研究を進めることが奨励されると、専門家同士の狭い学会内での評価が難しくなり、何らかの「客観的」な数字が求められる傾向は、より強くなるように思います。そうであればこそ、日本国内における学会誌の統合は、もっと戦略的に進めるべきなのではないかと考えます。

【追記】インパクト・ファクターについての記事
トムソン・ロイターのIFについての説明
ブログ「負け犬主義」:2014年インパクトファクター発表!

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