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パーソナライズされたメルマガを自動配信できる中小EC向けサービス「SimpleRelevance」

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オンラインでは、膨大な数のお得情報がものすごいスピードで行き交いしている。「なるべく良いものを安く買いたい」のは消費者の心理ではあるが、自分が興味をもったお得情報に適切にアクセスするのは容易なことではない。

そうした個人単位の趣味・嗜好にあった情報の提供を目指した試みとして、Amazonなどが行っている「おすすめ商品」を提示する電子メールの配信がある。これらは購入履歴や閲覧履歴にもとづいて個々の顧客を分析したもので、この機能により同社の売上は30%ののびを見せたそうだ。その後Amazonはより個々のユーザーに最適化された情報の送り手になろうと、facebookとの提携なども行うようになった。

このように企業にとっては効果の大きい「おすすめ機能」ではあるが、Amazonレベルの大企業ならいざ知らず、スタートアップやより規模の小さいECサイトが同様の機能を備えるのは並大抵のものではない。そのため個人に最適化されたメールの送信も限定的にならざるを得ないのが実情だ。

ところが、こうした「おすすめメール」をどんな企業でも取り扱えるようにしたサービスも存在している、それが今回ご紹介する「SimpleRelevance」だ。

同社は個人の趣味・嗜好に合った電子メールマーケティングを行うことにより、コンバージョン率を51%、メールの開封率を21%、クリック率を29%挙げることができると謳っており、実際に顧客のひとつである「Moxie Jean」は以前の売上を5倍に伸ばしたという。

個人の趣味や嗜好をとらえたサービスに着手

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SimpleRelevanceの創業者のErik Severinghaus(以下セバリングハウス)氏は、 ノースカロライナ大学在学中から「iContact」立ち上げに貢献した人物。経営学を専攻していた同氏は経営戦略はもちろん、IT技術の専門的な分野までサポートしていたという。

2004年に大学を卒業した後には、IBMのビジネスコンサルティング部門を担当し、この仕事で内外の投資家と情報交換する方法も学んだ。これまで連絡したことがない連絡先にいきなり電話をかけ、そこから収益を得ようとする「コールドコール」など、地味で苦しい仕事も多かったが、この経験がスタートアップを起ち上げるときに大いに役立ったようだ。

IBMでキャリアを積んでいたセバリングハウス氏が自ら起業を行おうと考えたのは、入社してから6年ほど経った2011年ごろのこと。このころはGrouponのようなお得な情報サイトが流行していたが、セバリングハウス氏にはこれらのサービスがどうも利用者のニーズとは距離感があるように感じていたという。

セバリングハウス氏の場合、頼りにしている情報、よく目を通す情報は「よく知る友人からの口コミ」だ。数百ドルも節約できるようなネット上の情報をメールで教えてもらったこともあるし。自分の趣味や嗜好を理解している友人からのメールは目を通してきた。一方企業から送られてくる、お得情報を掲載した大量のメールはどうも読む気にはなれなかった。

セバリングハウス氏はこの差は、企業から送られてくるメールがそれぞれの趣味・嗜好を踏まえたものではないことから生まれると考えた。そこで利用者が関心を持っている可能性が高い情報にめぐり逢えるサービスを提供しようと、2011年4月より「KoalaDeal」という個人を対象としたサービスをロンチした。

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KoalaDeaでは、利用者が自分でカテゴリを入力するか、自分のfacebookやtwitter、Googleのプロファイルを同期すると、興味を持ちそうな商品を教えてくれる。またネット上で情報検索すればより関連性の高い情報が表示される機能を持っていた。

このサービスは一定の評価を得ることはできたが、やがてセバリングハウス氏は、この技術をより必要としているのは一般的な利用者ではなく、お得情報を発信している企業、特に中小企業ではないかと考えるようになる

利用者の閲覧・購入履歴やサイトの閲覧歴を用いておすすめの商品を提示するサービスは既にある。しかしこれらができるのは高度な技術力と資金力を持つAmazonやWalmartのような大手だ。

Amazonのような高度な分析力をもった「おすすめサービス」を中小企業向けに提供すれば、彼らのサービス品質も大手並にアップできるのではないだろうか。

こうしてセバリングハウス氏らは、2011年10月より、この技術を企業向けに最適化したB2Bサービス「SimpleRelevance」をKoalaDealと並行する形で開始することになった。ちなみにKoalaDealの方は、すでにサービスを終了したようだ。

買われることのなかったショッピングカートの中身も有効利用

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(出典:YouTube「SimpleRelevance」)

SimpleRelevanceは高い学習機能を持つアルゴリズムが、パーソナライズ化(個々の利用者に最適化)されたメールを自動で配信する。

取り扱うデータは契約した企業のサービスから収集したものだけではなく、サードパーティのデータプロバイダからの情報も追加し、各顧客のための最高のメールマーケティングのアプローチを提案するために、高度な予測モデルを使用。また継続的に各顧客のデータを収集・分析しているため、メッセージは常に適切に調整されているそうだ。

サービスの料金は3種類。5万人の顧客を持つ企業向けのベーシックプラン500ドル(約6万円)~/月、10万人の規模向けのプレミアムプラン1000ドル(約12万円)~/月、100万人の規模を持つエリートプラン1万ドル(約12万円)だ。いずれも規定の人数以上の顧客を取り扱う場合は1人あたり0.01ドルの超過料金が発生する。

基本プランでは最適な時間にメールを自動送信し、商品をおすすめしてくれる。また件名も利用者の嗜好を踏まえたものに最適化してくれる他、商品のリコメンドを編集することも可能。プレミアムプランやエリートプランではこれに加えて24時間365日のサポートとカスタムレポートなどが利用できるようになるようだ。なお、いずれのプランにおいても収益保証がついている。

過去の購買行動などの情報をチェック、またターゲットを絞るために、地理的、社会的データや人口統計を確認。これらを件名や内容、適切なタイミングでの配信に結びつけている。また分かりやすいところでは、ショッピングカートに入れたものの、結局購入しなかった製品をおすすめ商品に組み込んでいるという。

たとえば、スノーボードとアウトドアが好きな独身の20代中頃の女性がいたとする。彼女が白いメタリックなスノーゴーグルと、ピンクと黒の入ったスノーパンツを購入し、その一方でスノーボードはカートには入れたが後に削除したときには、24時間後にスノーボードの20%オフのコードの入った電子メールを送信したりするのだ。

またおすすめする商品を最適化するのみでなく、顧客情報からメールを送るタイミングや件名もブラッシュアップ。1人1人に合った時間帯にメールを送信していることから、クリック率が3割アップしたというデータもでているという。既存のメールマガジン配信ツールではできない文章の調整までが自動化されているのがすごい。

SimpleRelevanceのサービスを利用しているサイトには子供服の販売を手掛けるECサイト「Moxie Jean」などがある。

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(出典:Moxie Jean

Moxie Jeanでは以前は、子供の年齢や性別に関係なく、一斉メールを顧客に送っていたが、現在は子供の性別や成長に合わせてオススメの服をピックアップしてメーリングした。これによりリピーター率がのび、顧客がメールを閲覧する確率も20%前後上昇。売上は5倍にも伸びたそうだ。

メールはまだほとんどの人にとってキラーアプリでありつづけている

SimpleRelevanceの一番の強みは、技術的に手を出しにくかった個人単位での顧客の分析とメールのパーソナライズ化を自動化し、どの企業でも扱えるようにしたことにあるだろう。

もうひとつの利点としては、この分野にかける資金や人材を必要最小限に抑えられることだ。顧客の嗜好を把握し、商品をおすすめするための技術の開発と運用を一企業が独自にやろうとすると、通常のスタッフではなかなか対応できない。そのため専門の技術者も必要になってくるし、価格費用も莫大になる。

上記のSchneider氏も、手間がかからなくなったことを強みとして述べている。

“ECサイトを運営する上で必要な難しいシステムの管理は必要なくなったわ。小さな投資で管理を任せられるSimpleRelevanceがいるんだもの”

またこの事例は電子メール・マーケティングの有効性を示す一例としてみることもできるだろう。この昔ながらの手法の効果について、セバリングハウス氏は以下のように語っている。

”電子メールマーケティングは古いという考えが一般的になりつつありますが、これは誤解です。ジャーナリストの中には「私の子供は電子メールは使ってない。利用しているのはfacebookやtwitterだ。だからメールはもう終わったものなのさ」と書く人もいます。”

“しかし現実には、メールはまだほとんどの人にとってキラーアプリでありつづけています。専門的にも個人的にもワークフローを管理し、通信できる格好の方法だからです”

 - セバリングハウス氏

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