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【読書感想】辞書から消えたことわざ

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辞書から消えたことわざ (角川SSC新書)

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辞書から消えたことわざ (角川SSC新書)

商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

著者はこれまで20以上の「ことわざ辞典」の類を著してきたが、最近気になることがある。それは、辞典・辞書から「こぼれる」ことわざが増えてきたことだ。本書は、『岩波ことわざ辞典』等を著した著者が、消えてしまうには惜しいことわざに再び命を吹き込むもの。言葉の成り立ち、使われた文学作品、時代背景などのうんちくを記しながら、ことわざを楽しく解説する。

 長年、「ことわざ」への強い興味を持ち続けた著者が、さまざまな文献や小説などから集めた「今はほとんど使われなくなったことわざ」たち。

 私のことわざへの関わりは三十年を超える。この間、新旧のことわざに着目した『岩波ことわざ辞典』、四千を超えることわざの絵の図版を解説する『図説ことわざ事典』、四百余の句と七百余のカラーのカルタ絵を収載する『岩波いろはカルタ辞典』などの辞典類や単行本などを手がけてきた。

 他方、出版物とは別に古代の文献から現代の新聞などに至る資料の中からことわざが使われている用例を拾いだす作業も続けている。この作業と<ことわざ拾いの旅>と名付け、種々の資料の中にあることわざとの出会いを楽しみに勤しんできている。

 著者は、「きちんと数えたことはないが、十万くらいのことわざを集めたのではないか」と述べておられます。

 辞書の編纂に関わる人たちというのは、なぜ、ここまでの言葉へのこだわりを長年続けることができるのだろうか……

 そもそも「ことわざ」とは何か、というのもなかなか難しい。

 読んでいて、「どうで有馬の水天宮」とか「蟻が鯛なら芋虫ゃ鯨」というような、ことわざというより、面白い言い回しみたいなものではないか、と思ったものもあるのですが、そういうものも含めて、この本では紹介されています。

 選定の基準としたものは、例えば「花の下より鼻の下」「うどん蕎麦よりかかの傍」「仏ほっとけ神かまうな」などのように、ことわざの生命線と考える文句の耳響きのよさと、表現の技巧を第一の柱にした。

 第二の柱としたのは、「這っても黒豆」「耳取って尻拭う」「心太(ところてん)の幽霊をこんにゃくの馬に乗せる」のように奇抜な譬えやユニークな着想をまとった、言い回しが面白いものに定めた。

 さらに第三の柱として、空海・道元・日蓮・蓮如・吉田松陰・坂本竜馬・福沢諭吉・新渡戸稲造など歴史的に活躍した人物の著作や、井原西鶴・近松門左衛門・平賀源内・滝沢馬琴・式亭三馬・鶴屋南北・森鴎外・夏目漱石・尾崎紅葉・幸田露伴・斎藤緑雨などの文芸作品類の中から注目に値する語句にスポットを当てたこと。焼物や染織物などの作品になぞらえば、さながら<ことわざ名品選集>とでも呼べようか。

 この「辞書から消えたことわざ」がすごいのは、用例が出典とともに、きちんと示されていることなんですよね。

 「昔はこんなことわざがありました」とうろ覚えで書いてあるのではなく、ちゃんと「証拠」が揃っているのです。

 さすが辞書編纂者!

 読んでいると、「世の中には、同じような意味のたくさんのことわざがあって、そのなかで、とくに優れていたり、印象に残ったりするものが、いまの時代にまで伝わっているのだなあ」と、「消えてしまったことわざ」たちを見ると痛感します。

 中には「なんでこんな面白いことわざが、残らなかったんだろう」と思うものもあるんですけどね。

丸くとも一角あれや人心

 温厚で円満な性格の人は他人との良好な人間関係を築ける。ただ、それも過度となれば相手に迎合することになったり、単なるお人好しとみられ、軽んじられもしよう。円満な中にも気骨が少しあるのが望ましいというものだ。「丸くても少し角あれ」ともいった。

 見出しの句は、江戸時代の庶民教育といえる心学の書『雨やどり』に「丸くともひとかどあれや人心、あまり丸きは転びやすきに」との古歌として引用されているものの上の句。古歌にある、円満過ぎると失敗に繋がるとの欠陥をいっている部分が削られて、五七五の句に仕立てられている。この句は「丸」と「角」の反意語を組み合わせる技巧がみてとれ、そこにことわざらしさが窺われる。

 こういう「言葉」に興味がある人にとっては、たまらない一冊だと思います。

 僕は、うーん、面白いけど、これ覚えても使う機会なさそうだなあ……とか、つい考えてしまうのですけど。

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