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人は学歴を欲しがり、教育は職業訓練の機会を搾取する

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既存のルールを疑い、常識を破り続けてきたZohoのシュリダー・ベンブCEOに、サイボウズ社長の青野慶久が話を聞く。前編「私が博士号を取っていなければ、会社は今の10倍になっていたでしょうね」、中編「ルールだらけの日本の働き方は創造性を遠ざけ、楽しさを破壊している」に続き、後編となる今回は「職業と教育」について。

ワークスタイルムービーから考える働き方

画像を見る 御社のムービーを拝見しましたよ。とても興味深かったです。


画像を見る ワークスタイルムービー「働くママたちに、よりそうことを。」ですね。どんな印象を持たれましたか?




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Zohoの基本思想は、ただ製品を売るだけではなくて、新しい働き方や生き方、ワークライフスタイルをも提案するということなんです。日本では特にそれが大事ですよね。社会的メッセージを付加したマーケティングで知名度を上げつつ、優れた信条をも広められるわけですよ。

画像を見る 率直に言って、サイボウズの日本オフィスはZohoのインドオフィスほど革新的(社会的)ではないんですよね。

画像を見る でも頑張って変化をうながしているでしょう。


画像を見る そうですね、頑張っています。


画像を見る 米国ではチームの感覚が違いますよ。特にシリコンバレーの会社なんて本当にくだけています。最近は社内にビールやウィスキーを置いたりね。私はそれはやり過ぎだと思うんだけど、でも置いている。スタートアップではそういう感じは多いよね?

画像を見る ビールはそうですねぇ。ウィスキーもですか?


画像を見る ですね。米国はさまざまなことが大きく変化してるのですが、Zohoが促進するのは教育や新しいワークスタイルなど、もっと本質的な問題です。

いま米国でも、学生は大学進学のために高額の借金をして、その負担が非常に大きいんです。だから多くの人々が大学にいく経済的余裕がない。私たちは「ひょっとすると大学へ行く必要はないかもしれないよ、高額の借金なんか背負わなくていいかもしれないよ」というメッセージを出しているんです。そういうことを広めていきたい。

ちなみにサイボウズは過去、働きすぎな時期もあったとか

  画像を見る 以前は4人に一人が辞めていたのですが、今は離職率が4%にまで下がっているんです。

生きることの価値を体現するホンダに惚れ込んだ

画像を見る 私はいまだに自分で車を運転しますが、高い車なんかいらないし。普通の車で満足ですよ。


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画像を見る トヨタのカムリです。いい車ですよ。レクサスもBMWも持っていません。前の車はホンダのシティでした。いい車だった。青野さん、車は何をお持ちですか?

画像を見る 車は持ってないんですよ。自転車です。


画像を見る いいですね。そういえば「ドライビング ホンダ」という本を買ったんですよ。アメリカで発行された本で、世界一イノベーティブな車メーカーの話です。

ずっと長い間、私はホンダを尊敬してきまして、特に本田宗一郎をですね。彼は非常にイノベーティブなエンジニアだし、ユニークな社風を創り上げたので、私のロールモデルなんです。ホンダはとてもユニークな会社だし、利益性も高い。

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画像を見る 生きることの価値を体現しているからですよ。ハイエンドな車だけでなく、普通のひとのために実用的な車をつくっている。マスのマーケット、つまり一般消費者の方を向いているんです。

二輪バイクの分野では、一般人や、とても貧しい国へさえも輸出している。同じように、灯油発電機やディーゼル発電機も。これらを全部製造しているんです。インドは電力供給カットがありますから、ホンダはまだインドで発電機を売っているんですよ。

ホンダの歴史も、もともとはまだ電力供給カットがあったような1950年代の日本で始まっていますよね、それでホンダ製品はインドで人気があるんです。ホンダは一般消費者のために実用的な製品を作ってくれるんですよ。ラグジュアリーな車だけではなくて普通のひとが乗る車、しかも信頼性が高くて、技術力も高い。ホンダのエンジン技術は最高です。

画像を見る ビジネスに対する考え方が御社にも似ていますよね。


画像を見る 似ています。米国に研究開発施設がたくさんあるし、技術志向ですし、研究開発志向です。ホンダのそういう哲学が好きですし、他にも、教育でもたくさん雇用して育てていますよね。

ですから、ホンダは1950・1960年代にホンダらしさを育んだということを分かってほしいんです。日本が経験したできごとはすべて、かつて創業者たちがつくった会社がみな官僚主義的になってしまったことのあらわれなのではないでしょうか。

私は「ドライビング ホンダ」を買って、自社のシニアマネージャー全員に配りましたよ。

画像を見る あなたにとっての教科書ですね。


画像を見る まさに、ホンダはわれわれの教科書ですよ。私は自分の会社の社風を作る人ですから。


画像を見る 素晴らしい。シュリダーはいつ本をお書きになるんですか?


画像を見る まだ先ですよ。私にはまだまだやることがあります。いまのところ、私は「本なんか書かなきゃならないとしたら、それは私に引退しろといっているようなもんだ」と冗談で言うんです。まだ引退したくはないですね。書くとしても、たぶん10年後ですね。

画像を見る 10年ですか。


画像を見る 日本ではこういうことはずっと言い続けていかねばならないのだと思っているんです。製品だけでなくて、ビジネスのやりかたももっとイノベーティブになれるんだ、と。働くのに大学の学歴は要らないとか、そういうことも世の中の標準になればいいなと。

人は学歴を欲しがり、教育は訓練機会を搾取する

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シュリダー・ベンブCEOとサイボウズ 社長の青野慶久

画像を見る そうそう、ずっと読んでいた面白い本があるんですよ。1968年に出版された「教育と職業」です。著者はペンシルバニア大の教授で彼が言っていたのは、ほとんどの職種に学歴は必要なくて、我々はまったく必然性なく学歴を欲しがっているとういことなんです。それが現実だと。彼はそれを「訓練機会の重大な搾取」と呼んでいます。あの当時でさえも筆者が気づいていたんですね。

画像を見る 搾取ですか。


画像を見る 搾取ですよ。つまり教育システムは人々から、職業的には必要ない人々からさえも金を巻き上げていると。彼はいまだに我々のやり方が間違っていると考えていますね。これは大切なことですから、世の中に広く知らしめていいと思うのですよ。

画像を見る ここで指摘されていることは、日本でも大切だと。


画像を見る そうです。この本は経済問題についても触れています。日本は出生率がとても低いでしょう。もし18歳から22や23歳の若者を大学に入れてしまったら、経済的価値を生んだかもしれない貴重な4年間はただ失われて経済は悪化しかねない。

若者というのは、本当にいろんな意味で経済を活性化させるんです。彼らはお金を稼いで、たくさんたくさん使って、もっともっと稼いで、それで経済は活性化するんですよ。

日本の消費が伸びない問題を見て下さいよ、すっかり落ち込んでいるではないですか。若者の給与が上がれば消費が伸びて、問題もだいぶ解決するんですよ。だから若者が23や24、25になるまで待つのではなく、18や19で労働市場に入って、いい仕事をして、収入があるんだから結婚したら、出生率だって上がりますよ。そうすれば社会問題もたくさん解決する。こういう考えを広めていきましょう。こういう神聖な考え方がいいですよね。

画像を見る まさに「ルールを破れ」ですね。


画像を見る みんなすぐには賛成してくれないでしょうけれど、この考え方は広めていかなきゃ。「(こういう生き方が)可能なんだ」と声を出さないと。1つの企業がこれに取り組んだら、他企業も真似して徐々に社会システムが変わっていくかもしれませんから。

長期視点のない会社に未来はない

画像を見る Zoho大学を卒業して4年前に日本へ来たエンジニアがいます。彼はウチに17で入社して、いま25ですが、25で40人のチームを取りまとめているんですよ。

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画像を見る 40人です。彼は非常に経験豊富だし、優秀です。そんな例はいくつでもあります。我が社で4年間プログラミングをやっている、22歳の女の子がいます。彼女が入社したのは16歳半のときで、18でエンジニアになり、22歳で4人の部下ができたんです。22歳で4人ですよ。

既にきちんと社会人として成熟していますが、彼女を見るとたった22です。世間の大学卒業者を見てみても、まだ子どもみたいな顔をしていますよ。でも彼女は既に4年間の社会人経験を持ち、成熟しているんです。彼女の顔を見ればわかる。

画像を見る Zohoは新しい教育企業なのだと理解しました。


画像を見る そうなんです、だから私はZohoのことを継続的な学習システムと考えているし、「大学」と呼んでいるんです。あなたがいなくなったら会社はどうなるのか、と問われると、これは私のミッションだなと。我々の未来とは、大学と会社であり、それがミッションです。大学も会社も長期的であってほしい。従業員を教え、育て、雇用するんですよ。

画像を見る 教育と職業ですね。素晴らしいです。


翻訳:河崎環/写真:橋本直己

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