ぼくが今年力を入れている「ビッグイシュー・オンライン」の運営のお話を。
「政策提言」というNPOの役割
画像を見る先日、「[提言] 引きこもり、ニート、うつ病…社会的困難を抱える「若者」を総合的に支援する政策が、今求められている」という記事をアップしました。こちらは「若者政策提案書」の原案発表シンポジウムの書き起こしで、委員会がまとめた本格的な「若者政策」の方向が語られています。
中身は読んでいただくとして、若者をどのように政策的に支えていくか、本格的な議論が交わされています。ここでの議論は実際に法制度を作る上で、大いに参考にされてしかるべきものです。もちろん、今後は実際に制度を作るために動いていくことになります。
画像を見るで、この提案書を作る旗振り役をしたのが「ビッグイシュー基金」というNPOなんです。その名の通り、ビッグイシュー関連の団体で、ホームレス当事者への生活自立支援や、スポーツ文化活動、被災地支援事業などに取り組んでいます。
画像を見る自分も多少関わっておいてなんですが、ビッグイシュー基金がこのような「政策提言」をしているのは、本当にすばらしいことだと思うんです。
一般的に、NPOというと「現場の支援」の要素がどうしても濃くなります。カンボジアで学校を作るとか、被災地にボランティアに行くとか、ホームレスに仕事を与える、移住促進をするなどなど。
こういった現場の活動自体は本当にすばらしいものであって、政策提言をする上でも「ベース」となるものです。が、現場の支援だけで終わってしまうのは、もったいないんです。せっかく現場で得たすばらしい知見があるんですから、それらを「政策」というより大きなレイヤーに反映するための努力をすべきです。そうしないと、顔の見える範囲でしか問題が解決されませんから。
というわけで、ビッグイシュー基金は、この分野の専門家たちとの議論して「政策提案書」にまとめているんですね。少し前には「住宅政策提案書」も公開しています。さらっとやってのけているように見えますが、これはすばらしい仕事だと思います。
『若者政策提案書』が完成しました|活動報告・イベント案内|ビッグイシュー基金
未成熟な日本のNPO
着々と変化は起きているという前提はありますが、日本のNPOは、現場の支援までは取り組めていますが、そこから先の「政策提言」にまでは、まだまだ食い込むことができていないように感じます。厳しくいえば、「未成熟」ともいえます。
活動領域によっては、下手すると、その発想すらなかったりもします。繰り返しですが、これは「もったいない」と思うんですよ。
具体的にはNPOの側から、政治家とメディアに働きかけを行っていく、という仕事が求められるのでしょう。
特にメディア活用は重要で、メディアを通じて現場の課題が「社会問題」になれば、政治も取り組まざるを得ません。
わかりやすく言えば、自分たちの活動と主張(解決策)がNHKの「クローズアップ現代」に取り上げられれば、1/10くらいゴールは達成できたようなものなのではないかと思います。政治家と直接つながるのは得てして困難なので、まずは「メディアを刺激して空気を作り出す」のが日本における政策提言のセオリーなのではないかと思います。
事例としては、駒崎弘樹さんが旗を振った「休眠口座」は鮮やかだと思います。わかりやすいウェブサイトを作り、各国の事例を研究した「白書」をリリースし、議員を集めてシンポジウムを開催し、要望書を提出し…テーマ自体が「現場支援」ではないとはいえ、すばらしい手際で感動しました。法制度化まであと一息といったところでしょうか。
画像を見るもっとも、業界全体として政策提言が重要なのは前提ですが、すべてのNPOが政策提言に関わるべきかというと、そうではないとも思っています。地元のおばちゃんたちがやっているNPOに政策を作れ!みたいなのはズレてますから。団体レベル、スタッフレベルでの「うちは現場で、提言は彼ら」と役割分担ができてくると、業界全体のインパクトが大きくなると思います。
ビッグイシュー・オンラインは、各NPO団体の政策提言活動を支えるメディアになっていこうとも思っています。何かピンと来ていただける方は、ぜひ連携させてください。ビジネスとはまた違うアプローチで、世の中を変えていきたいと思っています。