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南シナ海における中国の危険な振舞い - 岡崎研究所

新アメリカ安全保障センター(CNAS)のフォンテイン会長が、3月3日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、南シナ海において中国が勝手気儘に推し進める埋め立てと諸施設の建設に対して、米国とアジアのパートナー諸国が協力して当たることの必要性を説いています。

 すなわち、南シナ海で中国が進める埋め立てと施設の建設の衛星写真が米国の懸念を高めている。中国の大胆な動きは、単に礁や島にとどまらず広範囲に及ぶ主権の主張、米国および近隣諸国との緊張を高めるリスクをとる用意があることの証明である。このことは米国とアジアのパートナーが安全保障上の関係を強化する必要性を示している。

 中国は、主張する領域を防衛するために軍事力を投射し易くすべく、南沙諸島において、ヒューズ礁では人工島とヘリポート、ジョンソン南礁では埋め立て、ガベン礁では航空妨害用の塔を建設し、フィアリー・クロス礁では滑走路を造るなど、地勢の変更を行っているようである。

 近隣諸国は警戒すべきである。これらの前線拠点は、いずれ、駆逐艦、空母、ミサイル部隊の基地になり得るし、防空識別圏を強行する拠点にもなり得る。

 中国は、ベトナムやマレーシアも地勢の変更を行っている、と反論するとともに、国際法違反との非難を無視して九点線の内側は全て中国領だと主張している。

 これら中国の活動は、より広範な自己主張の高まりの一部である。軍事力増強には接近阻止・領域拒否の能力に対する投資が含まれ、米国の軍事力投射の能力を粉砕することを狙っている。これに対して、地域の諸国は軍事関連投資を増加させ、近隣諸国と米国との安全保障上の関係の深化に動いている。米国の力に裏打ちされた開放的でルールに基づく国際秩序は、中国を含め多くの国にとって利益であった。力即ち権利なりというドクトリンが罷り通れば、著しく好ましくない未来となろう。

 米国と有志のアジア諸国は、中国封じ込めではなく、中国の自己主張に対するバランスを図る方法として、安全保障協力を本気で強化せねばならない。中国が台頭する地域で威圧と紛争を避ける最良の方策は、強力で他国と協調する米国のプレゼンスである。

 そのためには、ワシントンはその防衛体制を整えねばならない。中国の潜水艦の数が初めて米国を上回ろうというのに、強制的歳出削減が国防省予算を脅かしている。ベトナムやフィリピンとのより意味のある協力を進め、これら諸国に日本と協力するよう促さねばならない。インドの台頭を促すことは、いずれ、中国に対するカウンター・バランスとして働くであろう、と論じています。

出典:Richard Fontaine, ‘Chinese Land Reclamation Pushes Boundaries’(Wall Street Journal, March 3, 2015)
http://www.wsj.com/articles/richard-fontaine-chinese-land-reclamation-pushes-boundaries-1425405550

* * *

 中国の南シナ海における振舞いの危険性は散々指摘されていますが、微温的な対応しか出来ていません。そして、中国は、米国等はその程度の対応しか出来まいと読んでおり、中国の行動を抑止する決定的な手段は見つかっていません。

 しかし、この問題を放置することは出来ません。近隣諸国相互間および米国との安全保障上の関係強化は勿論必要かつ有益ですし、日本も一役買うべきですが、最も重要なことは、フォンテインが指摘するように、効果的で強力な米国のプレゼンスです。アジアへの「リバランス」政策の真価を問うのはTPPではなく、米軍のプレゼンスです。ただ、南シナ海をにらんだプレゼンスの拠点は日本やグアムでは遠すぎます。効果的で強力なプレゼンスには、フィリピンが重要になってきます。

 このための最初の布石は既に打たれています。2014年4月、オバマ大統領のマニラ訪問時に、米国とフィリピンは「防衛協力強化協定」に署名し発効しました。この協定は、米軍の恒久的な駐留や基地を認めるものではありませんが、両国が合意する場所への米軍のローテーションによるプレゼンスと軍事物資の事前集積を認めることを中核とする協定です。この協定が機能すれば、この地域の米軍のプレゼンスが強化され南シナ海方面に睨みを利かすことが出来ると思われます。しかし、遺憾なことに、昨年5月、フィリピンの左翼系の元議員やNGOが、この協定は外国軍隊の「駐留」を禁じた憲法に違反している、協定は議会の承認を要する、などとして最高裁判所に提訴しており、協定は未だ機能するに至っていません。この点、1992年には米軍はスービック海軍基地から撤退した後、1995年に中国がフィリピンの抗議を無視してスプラトリー諸島のミスチーフ礁を占領した、苦い歴史的事実が想起されます。

 中国の接近阻止・領域拒否の戦略によって南シナ海が中国の内海と化し、米軍が中国のいう第一列島線(南シナ海もその内側に含まれる)から追い出されることは、悪夢以外の何物でもありません。

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