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「インドのハンセン病の現状」

ハンセン病といえばインド、インドといえばハンセン病といわれる時代が長く続きました。

WHOは人口1万人に1人以下の患者数になることを公衆衛生上制圧されたと定めました。インドでの制圧は不可能といわれていましたが、政府並びに各州政府の懸命な努力によって、2005年12月、見事国家レベルでの制圧に成功し、インドの奇跡ともいわれました。

私は多い時には一年に7回もインド各地を訪問し、この活動に参加してきました。1980年以降、1100万人が病気から解放されましたが、日本財団が5年間、世界中でハンセン病の特効薬を無料で配布したことが大きく寄与したことはいうまでもありません。

世界中で激減したハンセン病ではありますが、今現在も約20万人の人々が新たに発症しています。その6割がインドで、統計学的には今もインドといえばハンセン病といえなくもありません。

インドの父マハトマ・ガンジーは、国家政策のマニフェストの17番目にハンセン病の制圧を掲げていました。それほど深刻な問題だったのです。ガンジーは「ハンセン病の患者を治すことは、その人の生活を変えることだけでなく、村を変え、最後は国を変えることなる」と述べていました。

昨年9月と11月の二度、モディ首相と面談し、ハンセン病対策へのさらなる努力を要請しました。モディ首相はガンジーと同じグジャラート州の出身です。今年1月の『世界ハンセン病の日』には、「ハンセン病は完全に治る病気です。皆さんと一緒にインドをハンセン病のない国にしましょう」と、力強く宣言してくれました。

父・笹川良一がインドのアグラにハンセン病の病院を建設したのは1967年、48年前のことで、以来、親子二代にわたり活動してきました。しかし2005年のハンセン病制圧で各州のハンセン病対策は、残念ながら停滞気味になり、患者数も毎年12万人程度と横ばい状態です。

大都市スラムや国境地帯、山岳地帯にはまだまだ隠れた患者がいるものと推測されます。この反省に立ち、各州の『ハンセン病担当者会議』に出席して下記のスピーチを行いました。

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州ハンセン病担当官会議

2015年3月10日
インド・ニューデリー

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インドは、2005年12月に国家レベルでの公衆衛生上のハンセン病制圧に成功しました。このような偉業を成し遂げることができたのは、ハンセン病による苦しみから一人でも多くの人々を救うために、皆さまがたゆまぬご尽力をされてきたことに他なりません。

しかし、この10年の間に、ハンセン病を取り巻く状況は変化し、ハンセン病制圧への勢いが失われてきているようです。当時と今とでは状況が大きく異なり、インドでは未だに毎年12万人が新たにハンセン病を発症し続けているという停滞状況にあります。

私はWHOハンセン病制圧大使として、ハンセン病患者と回復者が直面している状況について理解を深めるために、世界各地の離島や山岳地帯に足を運んでまいりました。多くの場合、このような地域に暮らすハンセン病患者は治療を受けておらず、彼らの多くは身体に障害を負っていました。特に国境付近など人の移動が激しい場所や都市近郊のスラムなどにおいて、この傾向は強いようです。さらに、スティグマや差別を恐れて、家の中に閉じこもり、ひっそりと暮らしている人々もいます。

このような状況はインドも例外ではなく、遠隔地域や国境付近、都市近郊のスラムなどサービスが行き届いていない場所で有病率が高くなる傾向にあります。こうした地域に暮らす人々にリーチすることは困難ですが、だからといって、そのまま放置していると、症状が進むにつれ、身体に障害が出てきてしまいます。それがハンセン病の怖さなのです。そして、インドには、ハンセン病によって障害を負ってしまった人々が約30万人もいるといわれています。

さらに、私が懸念していることは、子どもたちが障害を負っているケースを目にすることです。他の国の島を訪れた時のことですが、若干4歳でハンセン病を発症している女の子に出会いました。幸いその女の子は、ハンセン病患者の家族を定期的に訪問していた意識の高い看護師により発見され、早期の対応がなされ、目に見える障害も見られませんでした。しかし、もしも発見が遅れ、治療をしていなかったら、彼女の人生はどうなっていたかと思うと心が痛みます。

ここインドにおいても、私はハンセン病により障害を負ってしまった子どもたちに会い、その度に胸が締め付けられる思いをしてきました。もし、子どもたちがハンセン病を発症し、障害が出るまで症状が進行してしまっている場合は、そのコミュニティにおけるハンセン病対策が機能していなかったと言わざるを得ません。

インドのように広大な土地を持つ多様性に富んだ国においは、それぞれの州や県において状況が大きく異なっております。ハンセン病患者へのサービスをいかに改善し、最も必要とする人たちに届けるかが大きな課題です。

当面の課題は、皆さまがそれぞれに担当している州が抱える問題を明らかにし、問題に対応した明確な目標を掲げ、個別の行動計画を立ててくことです。さらに、各県が抱える問題を明らかにし、それらの問題に対応した個別の行動計画を立て、最大限の結果を得られるような革新的な取り組みができるよう、県のハンセン病担当官を指導していただきたいと思います。

早期発見・早期治療に成功している県、すなわち、新規患者やグレード2の障害(目に見える障害)を負う患者の減少が報告されている県においては、県のハンセン病担当官の努力を称え、今後も様々なステークホルダーと連携し、継続的に活動してもらえるように励ましていただきたいと思います。

中・長期的にハンセン病対策を継続、改善するために、今後の協力が期待できるNGO、特にハンセン病患者と回復者がハンセン病対策に積極的に関わっていけるよう検討していただきたいと思います。コミュニティに根差し、幅広く活躍しているASHA ladies(女性のボランティア)のようなステークホルダーと協力することで、早期発見・早期治療を促進させることができるでしょう。同様に、研究者、医療専門家、国際ハンセン病団体連合や笹川インドハンセン病財団などの支援組織との連携強化も期待できます。

皆さまご存知の通り、ハンセン病は単に病気だけの問題ではなく、病気に起因する偏見や差別という深刻な問題を伴います。早期発見・早期治療に取り組むことは、単に患者数を減らすだけではなく、同時に、ハンセン病による偏見や差別による苦しみから解放される人々を減らすことにつながることを忘れないでください。

今こそ、私たち一人ひとりが決意を新たにし、2017年までにすべての県において公衆衛生上のハンセン病制圧を実現し、ハンセン病による苦しみを抱える多くの人々を救うために、ともに手を携えていきましょう。

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会議には約100人が参加

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