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オーストラリアが覚せい剤対策国家プロジェクトを立ち上げ

オーストラリアでは近年、「アイス」「クリスタル・メス」などと呼ばれる覚せい剤(メタンフェタミン)乱用が急速に広まり、社会に様々な問題を巻き起こしていますが、このほどアボット首相は、国として覚せい剤問題に対処するために、「覚せい剤対策国家プロジェクトNational Ice Taskforce」を立ち上げると表明しました。

シドニー・モーニングヘラルドの4月8日付のニュースによると、このチームは、覚せい剤問題対策としてこれまでに行われてきた全施策を検討したうえで、教育、保健、法執行分野に対する組織的、包括的かつ連携のとれたアプローチ手法を特定するために設立される、といいます。
州政府や地方自治体など、あらゆる行政府が覚せい剤問題への対策を講じているが、こうした取り組みがより効果的に行われるよう、連邦政府がこれらを評価し、調整するということです(下記参照①)。

本格的な問題提起がなされたのは、今年3月のことです。オーストラリア犯罪委員会Australian Crime Commissionが、拡大を続ける覚せい剤乱用問題をまとめて「オーストラリアの覚せい剤マーケットThe Australian methylamphetamine market」という報告書を発表したのです(下記参照②)。
なお、報告書のタイトルにあるメチルアンフェタミンmethylamphetamineとは、メタンフェタミンの別名で、日本でいう覚せい剤をさします。

この報告書は、オーストラリアの覚せい剤乱用の衝撃的な状況を示しています。
・2013年の全国調査によると、14歳以上の全オーストラリア人口の7%が、これまでに1回以上覚せい剤(メタンフェタミンまたはアンフェタミン)を使ったことがある。
・同調査では、1年以内に覚せい剤を使った人は、2.1%。
・覚せい剤使用者のうち、毎週または毎日使用する常用者の割合は、2010年調査の9.3%から2013年調査の15.5%と増加している(17ページ)。
リンク先を見る
↑The Australian methylamphetamine market

報告書は、オーストラリア全土の覚せい剤ユーザーは、最大130万人にのぼると指摘していますが、その数字は、覚せい剤乱用者の多い日本の現状をはるかに超えるものです。ちなみに、日本では、覚せい剤を1度でも使ったことのある人は、15-64歳人口の0.4%です。

太平洋に位置するオーストラリアは、世界の薬物流通ネットワークから隔絶していたため、以前は国内で密造された覚せい剤が出回っていましたが、近年では、日本とともに、世界の覚せい剤流通の標的市場のひとつになり、中国や東南アジアから大量の覚せい剤が流入しています。
そういえば、報告書中に、オーストラリアでの覚せい剤の末端価格がありましたが、近年では、1グラム当たり500米ドルで密売されているそうです。日本円に換算すると約54,000円、日本での実勢価格とあまり違わない感じです。古い統計では、日本と比べてかなり安かったのですが、乱用の拡大とともに密売価格が上がってきているのでしょうか。なお、日本の覚せい剤末端価格は、警察の発表などでは1グラム7万円で計算されています。

さて、日本以上に深刻な様相を呈しているオーストラリアの覚せい剤問題、国家プロジェクトチームは、はたしてどんな解決策を示してくれるのでしょう。オーストラリアでは、薬物の末端使用者に対する刑罰回避の政策が進んでいるだけに、乱用者に対する厳正処罰で難局を乗り切るなどという選択肢は、当然ないはずです。健康問題として、地域の問題として、どのようにアプローチしていくのか興味がわいてきました。
とりあえず、薬物問題に関わる方たちに、この報告書をぜひ読んでいただきたいと思います。

[参照]
①シドニー・モーニングヘラルドのニュース
Tony Abbott to announce new taskforce to tackle ice scourge(April 8, 2015 - 12:15AM)
http://www.smh.com.au/federal-politics/political-news/tony-abbott-to-announce-new-taskforce-to-tackle-ice-scourge-20150407-1mg80o.html
②オーストラリア犯罪委員会の報告書
The Australian methylamphetamine market
https://www.crimecommission.gov.au/publications/intelligence-products/unclassified-strategic-assessments/australian-methylamphetamine

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