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4月8日(水) アジアインフラ投資銀行(AIIB)の新設をめぐる3つの失敗

 とうとう、このような失態を演ずることになってしまいました。TPP(環太平洋経済連携協定)によって日米が連携して環太平洋諸国を取り込み、経済や金融面で中国を締め出そうとして躍起になっていましたが、気が付いたらアジアインフラ投資銀行(AIIB)の新設によって、カヤの外に取り残されたのは日本とアメリカだったというわけです。
 安倍首相の判断ミスが日本外交の失敗をもたらしたことは明らかです、小さな島に目を奪われて「中国憎し」に凝り固まり、世界の趨勢を見ながら対応するという大局観を失ってしまったためです。

 第1の失敗は、アメリカによる一極支配から多極支配へのパワー・シフト、別の言い方をすれば、アメリカの没落と覇権の消滅、中国をはじめとした新興国やEUの相対的な影響力の増大と国際政治・経済における大転換に気が付いていなかったという点です。
 このような世界的な変化の趨勢は、すでに10年ほど前から明らかになりつつありました。たとえば、イラク戦争への軍事介入にフランスやドイツが反対してブッシュ米大統領から「古いヨーロッパ」だと批判されたこと、シリアのアサド政権を攻撃しようとした時、ロシアのプーチン大統領が反対してイギリスも攻撃に加わらないと決めたため、結局、地上軍の派遣が実現できなかったこと、ウクライナ紛争ではアメリカではなく、ドイツとフランスがロシアと交渉して停戦合意を実現したことなどがありました。
 そして今回、アメリカの意向に逆らう形で、G7の一員であるイギリス、フランス、ドイツ、イタリアがAIIBへの参加を決定したというわけです。安倍首相が目標としている米英同盟は大きく変容し、イギリスはもはやアメリカの忠実な同盟国という地位に満足していないこと、ヨーロッパ諸国は日米ではなく中露や新興国との共同歩調を取る方向へと転じたことが明らかになりました。

 第2の失敗は、このような国際情勢の趨勢が明確になりつつあるとき、安倍政権はそれに逆行する方向へと日本の進路を定めようとしていることです。国際政治の面でも安倍政権は愚かな「逆走」を始めていることになりますが、このようなコース・シフトは第1の失敗をさらに大きなものとすることでしょう。
 TPPへの参加や集団的自衛権行使のための法制化、日米ガイドラインの再改定、沖縄での辺野古新基地建設の強行、中国や韓国との不和や対立を高める方向でのヘイトデモの放置、歴史認識や従軍慰安婦問題についての発言、教科書記述への介入、そして周辺諸国の警戒や懸念を高めている「戦後70年談話」と改憲への動きなど、この間、安倍政権が行ってきた外交・安全保障政策の全ては、日米同盟の強化と中国敵視を基本とするものでした。これらは全くの時代遅れであり、これからの世界が向かおうとしている方向と正反対の方向を向く誤った進路選択です。
 そもそも、これからの日本が目指すべき外交・安全保障の方向は、戦争と紛争のない世界であり、対立や偏見のない東アジアであり、外国軍隊と基地のない日本でなければならなりません。安倍首相はこのようなビジョンを持たず、安倍政権が進みつつある「この道」はそのようなビジョンから遠ざかっていくばかりです。

 第3の失敗は、このような時代に逆行する国際路線しか頭にない時代錯誤の指導者を首相とし、先の総選挙でも「信任」を与えたような形になってしまったことです。これは日本国民にとって痛恨きわまりない大失敗であり、いずれ大きな苦難として誰もがそれを実感できるようになるでしょう。
 しかし、それでは遅すぎます。国際情勢の趨勢を理解できずに孤立し、国策を誤り無謀な戦争を始めて周辺諸国に巨大な被害を与えたばかりでなく、日本を滅亡のふちに立たすことになった戦前の愚かな歴史を繰り返すことになってしまいます。
 今回の天皇と皇后によるパラオ訪問とペリリュー島での慰霊は、このような歴史を繰り返してはならないという暗黙のメッセージなのではないでしょうか。それをどのように受け止め、安倍政権による好戦的逆行政策をどのようにして押しとどめることができるのかが、いま問われているように思われます。

 歴史的な岐路に立っているということを、はっきりと自覚するべきでしょう。内外の政策的逆行は日本の国際的な孤立を招き、いずれ破たんすることは免れないのですから……。
 今回のAIIB参加をめぐる大失敗は、その予兆にすぎないものです。戦後社会を支えてきた「岩盤規制」をひっくり返し、「戦争立法」と改憲をめざす安倍政権は、さらに増幅された巨大な失敗によって歴史のしっぺ返しを食らって破たんするにちがいありません。
 しかし、その破たんは国策の失敗ということであり、多くの国民を不幸と苦難に直面させることになります。安倍首相はバックミラーに映る「戦前」の姿をめざしつつ「危険ドラッグ」を吸いながら「逆走」を続けているようなものですから、日本という国の存立を危うくするような大事故を起こすことは避けられません。

 アメリカ一極体制という時代遅れの構造を前提にした日米同盟の強化をめざし、文化や「平和国家」への国際的な評価など日本が持つ豊かなソフト・パワーではなく軍事力一辺倒のハード・パワーに頼り、海外でいつでもどこでもどのような戦争にでも加われるような「戦争立法」にばかり力を入れ、周辺諸国との関係改善と友好関係の構築を阻害している安倍政権の逆走を阻止できるチャンスは今しかありません。そして、それができるのは、今を生きている私たちだけです。
 一斉地方選挙での投票は、そのための最も有効な機会になります。ここでの投票によって安倍首相の好戦的政策にノーの意思表示を行い、その与党である自民党と公明党、その応援団である維新の党に痛い目を見せることが必要です。

 そうしなければ、今度は、私たちが後世の人々によって厳しく指弾されることになるでしょう。「なぜあの時、戦争に反対しなかったのか」と……。

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