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【読書感想】サラバ!


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「ひとり本屋大賞」10作品目。

 西加奈子さんは、この作品で、第152回直木賞を受賞されています。

 2冠なるか?というところなのですが、『本屋大賞』のこれまでの傾向からすると、すでに直木賞を穫っている作品は不利ではないかと思われます。

 今年は混戦模様なので、蓋をあけてみないとわからないところはありますが。

 

 率直なところ、僕は西加奈子さんという作家が苦手なのです。

 『さくら』のときから、「上手いとは思うけど、なんか登場人物(生物)の命を、あまりに簡単に操ってしまっているのではないか」と思っていて。


 日本人は、メイドを使うことや、運転手を雇うことに、そもそも慣れていない。だから、彼らを引き継ぐ際、日本では当然ともいえることを見落としてしまう。新たに面接をし直したりしないし、住んでいるところや家族構成、年齢すら聞かない。日本では考えられないことだろう。だが、「海外に住む」、挙句「運転手を雇う」、「メイドを雇う」という非日常が、通常の判断を狂わせてしまうのだ。旅行に行った海外で、日本でなら決して許せなかったことが、簡単に許せてしまうことがあるが、それと似ている。その土地のやり方に任せる、というよりは、そうしていいのかが分からないのだ。

 その「分からなさ」は、彼らへの接し方にも現れる。結果的にざっくりとふたつに大別されるが、ひとつは雇い主なのだからと、必要以上に尊大になり、彼らを見下すタイプ、もうひとつは、彼らに気を使い、下手に出てしまうタイプである。

 僕と父は、明らかに後者のタイプだった。このタイプは、人を使うということに、いつまでたっても慣れない。曲がりなりにも父はサラリーマンなのだから、上の立場、というものを経験しているはずである。だが、同じ社に属している部下と、自分が雇っている人間には、大きな隔たりがある。部下を使っているのは自分ではなく、結局は会社なのであって、自分は部下に教えているだけなのだ。


 この『サラバ!』、僕は上巻の、イランやエジプトでの駐在員の家族としての生活ぶりや、幼稚園で「好きな子アピール」のために、クレヨンを使って駆け引きをする場面のほうが面白くて、下巻は「なんかよくわからんうちに、人が幸福になったり不幸になったりして、腑に落ちない小説だな」と思ったんですよ。

 ただ、主人公のお父さんとお母さんが、ぎくしゃくしはじめた理由というのは、どちらかというと「なぜそうなったのか、よくわからないほうがリアルなんじゃないか、とは感じました。

 それを言うと、人が幸福になったり不幸になったりする理由というのは、すべからく「なんかよくわからない」ということになってしまいそうなのですが。

 僕にとっては、「理由が必要ないところで、わざわざ理由が説明されていて、理由が欲しいところで、スルーされている」そんな感じです。


 主人公の歩は、なんだか、「村上春樹作品の主人公になりそこねた男」みたいだしなあ。

 それは、この作品の魅力でもあるのだけれど。

 僕にとっては「共感」というより、「ザマーミロ」みたいな気分に、ちょっとなってしまったのですよね。

 

 僕は、「映画論をスクリーンの向こうから観客に語りかけてくる映画」って、あんまり好きじゃないんです。

 そういうのをつくりたい、やってみたい気持ちはわかるのだけれど、観ているほうが、ちょっと気恥ずかしくなってしまう。

 いや、そこに「作り手の気恥ずかしさ」みたいなのが透けている場合は、ちょっと許せたりもするんですけどね。

 この『サラバ!』に関しては、最後にちょっと主人公が饒舌になりすぎているというか、「蛇足」だと思うのです。

 そこまで読者に対して決意表明しなくても、読む側には伝わるはずなのに。

 いや、そこで、つい「くどいくらい自分を語らずにいられない」のが、西加奈子さんの作品らしいのかもしれないけどさ。

 

 でも、この作品、とくに上巻のディテールは、ものすごく魅力的なんですよね。

 よくこんなに「残酷でややこしい子供時代の感情」みたいなのを文章にできたよなあ、って。

 僕にとっては、「好きじゃないけど、なんだかとても気になる作品」でした。

 うーむ、西加奈子さんって、たぶん、ものすごく正直なんだろうな。

 そして、大人の話を書くのは、あんまり好きじゃないのかもしれないな。

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