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公務員の残業減らし ~ 国会への法案提出資料は9割以上減らせる

 今日の日本経済新聞ネット記事によると、政府は国家公務員の残業を減らすため、法案づくりの新システムを導入する。現行法と改正案の新旧対照表などをパソコン上で自動作成できるようにし、2016年10月から始めるとのこと。

<記事概要>
・法案をつくる場合、担当省庁が原案を作成し、内閣法制局が妥当性を審査。

・法制局審査を受けるには、指定された正式な法規集をコピーするなどして資料を作成する。

・新システムでデータベースから必要な条文をダウンロードして資料をつくれるようになれば、手間が省ける。

・法改正されればデータベースも更新されるため、誤って古い条文を使うようなミスも防止できる。・担当省庁と法制局で何度もやり取りをするため、電子データを使えるようになれば担当者の負担が軽減。

 法案作成は、国家公務員の実務において最も煩雑な作業の一つ。法制局審査の対象となる法案の内容について、それが憲法や他法令との関係で整合的であるかどうかを検証することには当然実益があり、必要不可欠なことに決まっている。

 しかし、それに係る審査プロセスでの手作業の内容がいかに実益のないものであるかは、その“成果物”が実際にどのように利活用されているかでわかる。では、その“成果物”とは、具体的にどのようなものか?

 今国会に昨日付けで提出された「労働基準法等の一部を改正する法律案」(朝日新聞や毎日新聞が呼ぶところの、いわゆる“残業代ゼロ法案”)を例として見ていく。

 国会に提出される法案の関連資料は法制局審査を経るわけだが、それは“5点セット”と呼ばれるもので、次のような資料群を指す。(この4つを5点セットと呼ぶ理由は、下記(2)を「法律案」と「理由」に分けて2つと数えるからであるが、こんなのはどうでもいいとして・・・。(現在はそうでないかもしれない。))

 (1)法律案要綱  (2)法律案・理由  (3)新旧対照条文  (4)参照条文 

 このうち、正式な法律案は、上記(2)の「法律案」。また、国会での「法案審議」の対象となる公式の「法案」とは、上記(1)・(2)だけ。上記(3)・(4)は参考資料に過ぎず、この2つは提出しなくとも、法案を提出しなかったことにはならない。とは言え、上記(1)~(4)を全て国会の議場に呈示するのが慣習となっている。

 しかし、上記(1)~(4)のリンクを開いてみると、すぐにわかることがある。これだけでは、何を言っているのか、多くの一般国民は理解できないということだ。法律の専門家であっても、これだけ見せられても、この法案がいったいどのような効果や利益をもたらすものなのか、わかりようがない。

 というわけで、担当者は殆ど場合、法案の概要を記した資料を呈示する。もっとも、これだけでも全貌はわからない。事程左様に、法案というのは一般的に非常にわかりにくいものだ。多くの国会議員は、これら“5点セット”をまともに見ないだろう。国会議員であろうがなかろうが、これらは無味乾燥である以上に、理解不能な文字の羅列にしか見えない。

 したがって、上記(1)~(4)を法案審議の場に呈示する審議上のメリットは皆無である。但し、行政実務的には、新旧対照表は必要になることが多いので、作成・保存しておく意義はある。だが、法制局審査を通す必要はない。新旧対照表以外は、行政実務的にも不要だし、一般的にはもっと不要。

 今回の新システム導入について、上記の日経ネット記事では、
「女性公務員の有志が法案作成業務の改善を求めたのを契機に開発を始めた。セキュリティー対策を講じて職場以外でも作業しやすくし、仕事と家庭を両立できる職場環境を整える」
と書いている。

 どのようなきっかけであれ、国会での法案審議の際の公式資料の様式を改める必要がある。一般国民が審議を傍聴しに来た際に、紙媒体であれ電子媒体であれ、配布する公式資料がこんな体たらくであり続けることは、もはや即刻改善すべきだ。 

 法案の概要に加えて、関係審議会で示された資料やデータの概要を付け加えるだけでも、かなり理解度や認知度は広まるのではないだろうか。国会への法案関連提出資料も、そうしたわかりやすさを追求していくべきだ。法制局審査の対象とする資料は、新旧対照表だけに限定すべきだ。

 枚数で考えると、ここで書いたような改善により、新旧で9割以上は削減できるだろう。

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