- 2015年04月03日 22:44
月給15万円という「破格の条件」
養育費に車…ひとり親家庭歓迎 過疎の町、求む介護職(朝日新聞)
島根県浜田市が4月から破格の条件で県外のひとり親家庭を迎える。月給15万円以上、中古車無償提供、一時金130万円など。1年限りだが、1世帯あたりの経済支援は最大400万円超。ひとり親家庭の支援と介護の働き手不足解消の一挙両得をねらう。ひとり親に絞った自治体の移住促進策は全国初という。
対象は高校生以下の子がいる母子・父子家庭。市内の介護事業所と1年間の雇用契約を結べば、転居費などの一時金30万円が支給される。月給は最低15万円で、加えて市から養育費が月3万円。契約通り1年間働けば、さらに一時金100万円が出る。
(中略)
ただし、公的な経済支援は1年限り。その後は介護業界で働き、定住することを期待する。
……なんと言いますかまぁ、月給15万円の介護職で「破格の条件」と銘打たれてしまう辺りに報道側の感覚が窺われるところでしょうか。この記事を書いた朝日新聞記者が、中古車と一時金を出すから月給15万円で介護の仕事をしてきなさい、定住することを期待しているから~と言われたら、絶対に嫌がると思います。これを破格の条件と感じられるのは余程の困窮者か、あるいは職にあぶれている人への差別心が強い人かのどちらかですね。月に15万でもありがたいと思う人、こんな奴らには15万円でも十分だろうと考える人、そういう人にはアピールできているのかも知れません。
日本では就労している女性の社会進出が進んでいないと言われますが、シングルマザーに限れば先進国中トップクラスの就労率を誇るわけです。働いている人が増えれば良いというものでもないなと、そんな気がしてきます。結局のところ日本社会とは、「低賃金労働の需要が高い」「人を安く働かせたい」ものなのでしょう。配偶者なり両親なりの収入があって仕事を選ぶ余裕のある女性の場合、当然ながら真っ当な待遇の職を求める、結果として就業する人が少なくなる、逆にシングルマザーで生活が逼迫して仕事を選んでいられない場合は低賃金の職にも飛びつかざるを得ない、その結果として高い就業率に繋がっているとも言えそうです。どこの会社も、薄給で働いてくれる人、安く買い叩ける人を切望していますから!
貧困が自由を奪う、その紛れもない現実を意識できているかどうかでその人の立ち位置が分かるように思います。いかに言論や思想、信教の自由が保証されていようとも経済的に困窮している人の手に自由はありません。明日を生きるための金に事欠けば、人生の選択肢は限られたものにしかならないわけです。月給15万円という人を馬鹿にしたような待遇でも、嫌だとは言っていられなくなるのが貧困というものです。政治的な自由ばかりを意識して経済的な要因が自由を奪うことに無頓着な政党/政治家やメディアは、それこそブルジョア趣味と呼ばれるべきものではないでしょうか。本当に国民の自由を奪うのは強権的な政治家である以前に、不況を放置する政治家の方ではないかと私は思います。
まぁ過疎化の進む貧しい自治体にとっては、この程度でも結構な勇気の要る決断ではあったのかも知れません。東京の求人と比べれば薄給でも、島根では悪くない部類なのでしょうか。首都圏在住で「職を選んでいる余裕のある人」がこの企てに興味を示すことはないと思われますが、地方在住で「職を選んでいる余裕のない人」ならば話は別だと、そう見込まれているところはありそうです。こんな待遇でも今よりは良くなると、そういう境遇の人もいることでしょう。政策としては一定の効果が見込めそうです――どうにも立場の弱い人につけ込んでいる印象も拭えないところではありますけれど。



