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【スマホフル活用】思いついたら“いつでもどこでもメモ”習慣 -三越伊勢丹HD 大西 洋社長

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三越伊勢丹HD社長 大西 洋氏

アベノミクスの効果もあり、百貨店の販売額は最近好調に推移しています。といっても、小売業全体の販売額約135兆円に対して、百貨店のそれは約6兆2000憶円と、わずか5%弱にすぎません。

つまり百貨店は、量の面ではもう「小売りの王様」ではなく、コンビニやカテゴリーキラー(大型専門店)に主役の座を譲っているのです。にもかかわらず、百貨店の販売額の推移がさも重大事であるかのように報じられるのは、おかしなことと言わなくてはいけません。

ただ、量としては5%の業界ですが、質の面では依然大きな役割を担っていますし、将来にわたっても担い続けるでしょう。そのことを認識したうえで、「これからの百貨店はどうあるべきか」を考えるのが私たち百貨店経営者だと思うのです。

しかし残念なことに、質ではなく目先の量の確保に血道をあげていたのが、最近の百貨店の姿です。前年同月比の数字を気にするあまり、季節のセールを前倒しにする、ムリな値引きに走る、といった手法で「今月だけ」「今期だけ」の売り上げを立ててきました。

すると半面、質の追求がおろそかになり、百貨店の特徴や優位性は失われ、長期的にはさらに販売額や存在感が低下します。業界はいま、こうした負のスパイラルから抜け出せなくなっているのです。

お客様が百貨店に求めるものとは何か。どうしたら私たちの店舗へ足を運んでもらえるか。三越や伊勢丹など個別の百貨店が生き残っていくには、たとえ目先の売り上げを犠牲にしても、それを考え、そこを目指すしかないのです。

では、百貨店にしか提供できないものとは何でしょうか。それこそが質であり、一言でいうと「ワクワク感」です。単にモノを買うだけなら、最近はコンビニでも高級チョコレートの「ゴディバ」を売っていますし、おいしいコーヒーも飲めます。また、ネット通販も便利です。しかし百貨店は「モノを買うこと」以上の価値をお客様に提供できるのです。

そこに一歩足を踏み入れると、ワクワクして時間の経過を忘れてしまうような環境空間。これを用意できるのは、小売業界の中でも百貨店ならではの特徴なのです。

13年3月、当社は伊勢丹新宿本店を改装しました。世界一の売上高と入店客数を誇る旗艦店です。ただ、それにふさわしい環境空間を提供できているかといえば疑問でした。そこで、お買い物に訪れたお客様にも、世界一のワクワク感を味わっていただけるようにしようというのが、改装を決めた最大の理由です。

百貨店の常識にとらわれず環境と空間を優先した店づくりを進めようと、あえて業界とは無縁の気鋭のデザイナーを起用しました。予想どおり、これまでにない斬新な案が提示され、現場のバイヤーとの衝突が起きました。しかし、お互い議論を重ねたことで、陳列商品点数は12%減ることになりましたが大胆で贅沢な内装を実現できました。

商品数が減れば、売り上げが落ちてもおかしくありません。ところが実際には、10%以上も販売額が伸びました。環境空間と売り上げの関係を定量的に分析するのは簡単ではありませんが、以前にも増してお客様がリラックスし、ワクワクしながら買い物を楽しめるようになったことが一つの要因だと思っています。

12年9月にオープンした伊勢丹新宿本店メンズ館8階の「サロン・ド・シマジ」にも、私の持つ近未来の百貨店像が投影されています。元「週刊プレイボーイ」編集長で作家の島地勝彦さんにお願いし、島地さん本人がシェーカーを振るバーと、島地さんのセレクトによる売り場を設けたのです。

それがただちに利益につながるかといったら、そうではありません。マーケティングを駆使し、売れ筋商品をそろえておく従来のやり方に比べたら非効率でしょう。しかし、魅力的な人物のライフスタイルや価値観に触れることで、新たなものの見方や興味が広がり、それが大きな市場に育つということは珍しくありません。いまはまだ注目されていなくても、大きな花を咲かせる可能性を秘めた種を探し、それを2年、3年かけて育てるほうにこそ、大きなビジネスチャンスはあるのです。

もちろん、すべての種が芽を出すわけではありません。だから、世の中の隅々にまで目を向け、できるだけたくさんのビジネスの種を集めてくることが大切なのです。

そのためにはとにかく、人に会う。それも自分と違う世界の人ほど、たくさんのヒントがもらえます。雑誌編集者、コンサルタント、ITクリエーターなど、ふだん仕事では縁のない人たちからの情報はすべてが新鮮です。

そしてその場で「おもしろい」「ビジネスに活かせそうだ」というヒントを得たら、帰りの車中でスマートフォンを起動させ、メモ機能に打ち込んでおきます。紙のメモを取り出すよりも手軽だからです。それこそワクワクするようなネタが、ずいぶんたまりました。

問題は、そのネタをスピーディに事業化できるかということです。

とりわけ新しい事業は、担当者が納得して本気にならなければ成功しません。だから新規事業のヒントを得たときは、担当部署に「命じる」のではなく「提案」することにしているのですが、営業本部や婦人統括部などのラインに提案しても、日常業務で手いっぱいのこともあり、思うようには動いてくれないというもどかしさがありました。

競合相手は百貨店だけではなく、意思決定の早いベンチャー企業などさまざまです。世の中の動向に目を向け、これと思った事業を機動的に立ち上げる。そのスピード感が従来の百貨店には欠けていたのです。

13年4月、経営戦略本部に新規事業開発を担当する「マーケット・開発部」を新設しました。おかげで事業開発に機動性が出てきましたが、まだまだ足りません。百貨店業の未来へ向けて、新しいことに素早く貪欲に取り組む社風をつくりあげたいと思っています。

時間管理3カ条
1. 目先より20年先が大事と心得る
2. 思いついたらスマホにメモ
3. 移動時間に進捗チェック

●大西社長のある1日

06:00 起床
08:30 出社
09:00 省庁関係者と面会
10:00 店内巡回
10:30 開店の挨拶
11:00 IT関連会社幹部と面会
11:30 経済誌取材
12:00 海外取引先とのランチミーティング
13:30 地方の行政トップと面会
14:30 社内打ち合わせ
15:00 経営ミーティング
16:00 営業ミーティング
18:00 レセプション出席
20:30 通信関連のトップ・幹部との情報交換会
23:30 帰宅
01:00 就寝

三越伊勢丹HD社長 大西 洋
1955年、東京都生まれ。麻布高校、慶應義塾大学商学部卒。79年、伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。常務執行役員などを経て2009年、伊勢丹社長。11年、三越伊勢丹社長。三越伊勢丹ホールディングスでは10年に取締役、12年2月から社長。紳士服市場で圧倒的な存在感を誇る伊勢丹新宿本店メンズ館を03年に立ち上げた「創業メンバー」の一人。

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