記事

どうすれば「大将の器」になれるか - 飯島 勲 「リーダーの掟」

1/2
内閣参与(特命担当) 飯島 勲

私は「世界連邦文化教育推進協議会」の名誉顧問に就任した。この「世界連邦」運動とは、アインシュタイン博士や湯川秀樹博士が核廃絶を訴えて始め、日本では「憲政の神様」尾崎行雄が帝国議会に決議案を提出し、湯川スミ夫人が長く尽力されてきたものだ。このたび、「世界連邦文化教育推進協議会全国推進大会」が京都で開催され記念講演を行った。会長は東久邇信彦さま、理事長は日本宗教連盟幹事で、神道扶桑教の宍野史生管長である。これまで宍野管長から名誉顧問就任の要請を受け、幾度も断っていたのだが、最終的にお引き受けすることにした。どう見ても文化や教育とは無縁のように見える無骨な私が、お役に立てることが何かあるのだろうか。

今回は、その講演の内容をご紹介したい。講演の内容があまりに堅すぎると思ったので、「私の人生で一番面白くないお話をすることになる」と宍野管長に事前にはっきりと宣言したところ、ずいぶんびっくりされていらっしゃったが(笑)、幸い好評を得たようで、安堵している。

読み書きができるという奇跡!

いまどきの若者には、馴染みがないかもしれないが、新作映画を公開するときの「封切り」という言葉は、江戸時代に生まれた言葉だ。文字通り封筒の封を切るところからきていて、何が出てくるのか楽しみだという喜びから「封切り」という表現になったそうだ。

江戸の人々が楽しみにしていた封筒の中に何が入っていたかというと、貸本の新刊だ。江戸時代は貸本業者が多く、それぞれが顧客のところに封筒に新刊を入れて届けていた。客の側にとってはまさに、封を切る楽しみがあったわけだ。

そういう習慣から生まれた「封切り」という言葉が、明治、大正、昭和と時代を超えて残るほど、江戸の庶民には漢字仮名交じりの物語を日常的に楽しんでいた人が多かったということだろう。当時の日本は、同時代のヨーロッパにも見当たらないくらい識字率が高く、豊かな読者層を誇っていた。

男性に人気があったのが、弥次さん喜多さんの東海道中膝栗毛。女性に人気があったのが、源氏物語を脚色したシリーズ本。流行りの着物を身に着けた登場人物の絵が描かれていて、江戸の貸本はいまでいうところのファッション雑誌の役割も果たしていたようだ。見方を変えれば、江戸時代の女性たちは、文字を読みこなす教育を受けていたことがわかる。17~19世紀の世界を見渡して、一般の女性や子どもが日常的に本を読んでいた国というのは、非常に少なかったと思う。


掛け算の九九は平安時代の一般教養

教育の基礎について、俗に「読み書きそろばん」というが、江戸時代から培われたこの教育の底力が日本を支えているのだと思う。

だからこそ、読み書きそろばんをおろそかにしてはいけない。九九という暗算法は平安時代の貴族の教科書にも記されているので、当時の一般教養だったのだろう。面白いことに、九九の覚え方は今とは逆に、「9×9=81、9×8=72……」と覚えさせるものだった。とても覚えにくいような気がするが、現在覚え方が逆転しているのは、そういう理由からだろう(笑)。ただの暗記と軽く見る風潮もあるが、こういう伝統を愚直に子どもたちに伝えていくことも、日本の大人の責務であろうと考えている。


次の日本を背負うリーダーを育てよう

さらに重要なのが、これからの日本を引っ張っていく、リーダーをつくる教育だ。かつて私が仕えた小泉純一郎元総理、そして、現在の安倍晋三総理を間近に見て、指導者を後天的に育てるのは難しいのではないかと感じるようになった。

私がよく知る2人のリーダーには、読書家という共通点がある。小泉元総理は歴史小説好きで有名だったが、安倍総理は、特に近現代史に強く百科事典的な知識を持っている。それも、ただ知っているだけではなくて、ここぞというときに頭の引き出しから、必要な知識が出てくるというような特別な記憶力だ。

しかし、記憶力がいいだけでは、大将の器とはいえない。物事に動じない度胸であるとか、最後は一人で決断できる力とか、それから、どこでダッシュをかけてどこで待ちに徹するかなどを即時に判断できる勝負勘のようなものも必要だろう。

たとえて言えば、総理大臣の仕事とは、日本中の国民を従業員として抱える日本一大きな事業体の長みたいなものだ。人の能力を見分けて、適材を適所に配置する能力も絶対に必要だ。

では、こういうリーダーの素養は、どうすれば身に付けることができるのか。

あわせて読みたい

「リーダーシップ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    賭け麻雀合法? 宗男氏声荒らげる

    BLOGOS しらべる部

  2. 2

    役満狙った黒川氏 イカサマ失敗

    毒蝮三太夫

  3. 3

    裏に電通? 怪しいコロナ業務委託

    青山まさゆき

  4. 4

    黒川騒動で賭け麻雀モラル崩壊へ

    木曽崇

  5. 5

    森法相の迷走 元凶は安倍首相

    猪野 亨

  6. 6

    769億円で「幽霊法人」に発注か

    文春オンライン

  7. 7

    新検事長は安倍政権の不正に迫れ

    天木直人

  8. 8

    コロナで「おさわり」も禁止せよ

    幻冬舎plus

  9. 9

    解除後初 都内で集団感染発生か

    ABEMA TIMES

  10. 10

    テラハ制作の無責任 過剰演出も

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。