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景気は低調なのに雇用改善する背景に何があるのか 少子高齢化が経済成長を下押しする時代へ 急がれる企業の対応 - 中島厚志

現在、労働需給はひっ迫しつつあり、失業率は人手不足で賃金が上がる水準にまで達したとも計算される。しかし、1%前後の成長率と景気は大して強くないのに、雇用が改善しつづけている現状は違和感があるようにも見える。

 実は、人口増減と経済成長との間には多くの国で共通の傾向が見て取れる。そして、日本は、ドイツと並んで少子高齢化の影響が最も色濃く出る段階にあり、現状程度の弱い景気でも雇用が改善する一因ともなっている。

 原油安や円安もあって、今後景気は力強く回復し、人手不足がさらに広がる可能性は強い。少子高齢化もさらに進むことから、このままでは人手不足は恒常化していくことになる。これは、何年も前に少子高齢化の帰結として想定された事態がいよいよ実現しつつあることに他ならない。

 このことは、日本企業にとって人材活用や省力化などでの生産性向上と労働力の確保が大きな経営課題となっており、それに注力しなければならないことを意味している。ところが、日本企業には、まだこの喫緊の経営課題が広く共有されているようには見えない。

各国共通する生産年齢人口比率と実質GDPの関係

 生産活動に中心的に従事しうる15歳から64歳までの年齢の人口が総人口に占める割合(生産年齢人口比率)と実質GDPとの間には多くの国で同じような動きが見て取れる。

 それは、横軸に生産年齢人口比率、縦軸に実質GDPをとると、図表1のような横M字型となるものである。すなわち、第1段階は、人口が大きく増加して生産年齢人口比率も上昇することで経済が成長する段階である。

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【図表1】生産年齢人口比率と実質GDP

 第2段階は、人口増加率が鈍化し生産年齢人口比率の上昇も止まる段階である。ただし、この段階では、それまでの経済成長や教育普及の成果が出て、生産年齢人口比率の上昇は止まっても人材の開発と資質向上で経済成長は持続する。

その次の第3段階では、興味深いことに再度生産年齢人口比率が上昇する。それは、少子高齢化が進み始める初期では、子供が増えなくなるものの生産年齢人口がまだ増えつづけるからであり、人口増が乏しくなる中で生産年齢人口比率は見かけ上増加する。

 そして、少子高齢化がさらに進展して生産年齢人口比率が一方的に減りだすのが、第4段階である。この段階になると、総人口も場合によっては減少に転じ、実質GDPの増加も極めて緩やかなものとなる。

 以上の生産年齢人口比率と実質GDPとの関係が主要国でどうなっているのかを見たのが、図表2である。見ての通り、日本とドイツが第4段階にある。また、アメリカやフランスも第3段階から第4段階に入ったところにある。一方、中国は第2段階、ブラジルは第1段階にある。

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【図表2】生産年齢人口比率と実質GDP

生産性向上と労働人口確保にまい進すべき日本

 日本の課題は、この第4段階にあって、どのように経済活性化を実現するかにある。ちなみに、第1段階にあるブラジルといった国では、教育の充実と人材開発が柱となるし、第3段階にある国では、少子高齢化の速度を遅らせることで良好な成長をより長期間享受できることになる。

 しかるに、第4段階にある日本やドイツでは、経済成長をするにも、活力ある社会を維持するにも、少子化対策が最優先の課題と言える。とりわけ、生産年齢人口が比率だけではなく、人数でも減少するようでは、良好な成長を維持し続けることは難しくなっていく。

 しかし、少子化対策を強力に行うとしても、それが効果を挙げるには時間がかかる。特に、女性が働くと同時に出産育児をしやすい社会を創っていくとすれば、多方面での施策や環境整備が欠かせず、一朝一夕には実現しない。

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【図表3】主要国:労働生産性増減率の推移

 したがって、日本の活力ある経済・社会の維持には、長期戦略である少子化対策だけでは足りない。短期的な対応も強力に推進していかなければならず、その最たるものが人材の一層活用やより少ない人数で同等の成果を挙げることによる生産性向上であり、内外の労働力の動員・確保である。

 このうち労働生産性の伸びについては、日本は主要国と比べると比較的良好な位置づけにある(図表3)。しかし、内訳を見ると安心はできない。近年の日本の労働生産性上昇の背景には、短時間(パートタイム)労働者を多く含む非正規労働者が増加して労働者当たりの年平均労働時間が減少したことが効いているからである(図表4)。とりわけ、短時間労働者は平均で一般労働者(フルタイム労働者)の6割弱の時間しか働いていない。

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【図表4】一般労働者・短時間労働者別年平均労働時間

 年平均労働時間の減少自体は、生活にゆとりをもたらすものであり、必ずしも悪いことではない。しかし、それが一般労働者の労働時間が高止まりする中で労働可能時間を充足しない短時間労働者が増える形で実現されている現状は、非効率であり、人材の十分な活用にもなっていない。

 一方、労働力の動員・確保も欠かせない。同じような第4段階にあるドイツと比べても日本の生産年齢人口割合は4%ほど少なく、その分経済を支える活力は乏しいことになる。

 もちろん、対応としては女性や高齢者の労働参加率を上げてその一層の活躍を図ることが第一である。くわえて、短時間労働者を多く含む非正規労働者を正規化すれば、その労働時間が増えて一層の労働力確保につながる。

 また、ドイツを見ると、日本にない大きな外国人労働力の流入がある(図表5)。とくに近年では、経済危機にある南欧諸国から景気が堅調なドイツに優良な労働力が数多く流入している。一概に日本に当てはめることは出来ないが、可能な限り外国人材を活用することも不可欠である。

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【図表5】労働人口増減内訳の推移

少子高齢化下での企業戦略を急げ

 多くの日本企業では、未だにかつての労働力豊富な時代を引きずっているように見える。それは、相変わらず多人数のチームで事に当たったり、短時間労働者を中心に非正規労働者をバファ―として需要変動に対応したりすることである。

 しかし、時代は変わった。ドイツ以上に少子高齢化が進み、今後さらに進む日本の現状は直視されなければならず、そこに対する企業の戦略は明確である。それは、医療介護産業がさらに発展するとの見方ばかりではない。恒常化する人手不足への対応如何がビジネスの成否と企業存亡をも左右するとの見方である。

 これからは、人材の一層の活用にくわえて、IT投資などを駆使した省力化と、女性・高齢者などいままで十分に活用されてこなかった人材の発掘・開発がどこまでできるかが企業の競争力を大きく左右することになる。人手不足の広がりといった形で世界で最も速く進む少子高齢化の経済への具体的影響が見えてきた中、新たな企業競争が本格化している。

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