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【読書感想】なぜ、この人と話をすると楽になるのか

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 吉田さんは「人前で話をして大丈夫なくらいになるには、三つのステップがあった」と仰っています。

(1)自己顕示欲がなくなったこと

(2)コミュニケーションは「ゲーム」なんだと気づいたこと

(3)コミュニケーションの盤面解説ができるようになったこと


 このうちの(3)については、こんな話をされています。

 コミュニケーションには、こう来たらこう受ける、こう受けたらこう出すという「型」がたくさんある。それはある種のパターンで、反復可能だし人に教えることもできる。定石を駆使するだけで、いまこうなってるからこっちに振ってみようとか、相対的なコミュニケーションがとれるようになったんですね。

 定石って意外とあるんです。誰しもたくさん身についてる。「ありがとう」って感謝されたら「こちらこそ」って返すのも定石。「どうも」も「どういたしまして」も「そんな」も「いえいえ」も全部、定石です。そうやってずっとコミュニケーションをモニタリングしていたら、いつのまにかコミュニケーションの盤面解説ができるようになっていたんですね。それが三つ目のステップです。

 テレビでプロの棋士が、棋譜を示しながら盤面解説するでしょう。「この一手はこういう意図があって、その流れだったら次はこんな手が考えられる」みたいな分析をする。同じように、コミュニケーションをゲームと捉えると、その流れから「この質問だったらこう受けるのがベスト」とあ、「この答えだったらこっちに話を振ったほうがいい」とか分析できるんです。

 そうか、「ゲーム」にしてしまって良いんだな、と。

 こういうのを聞くと「そんな定石通りの会話なんて、面白くない」と思われるかもしれません。

 僕もそう感じました。

 でも、それこそ将棋に例えると、プロ棋士たちだって、将棋を覚えた最初の頃は「定石」から覚えていったわけです。慣れてきて、実力がついて、はじめて「定石を外れた、自分オリジナルの指し手」を考案していく。

 「まずは定石から」というのは、結果的に早道でもあるんですよね。

 サッカーだって、トラップもうまくできない人が、そんなのはみんなできるから、まずドライブシュートのやりかたを教えてくれ、なんて言われたら、失笑されるだけなのに、コミュニケーションに関しては、「何か特別な近道」があるのではないかと、つい考えてしまうのだよなあ。

 そういえば、お笑い芸人が、合コンのあとに参加者で「反省会」をするという話を聞いたことがあります。

 その話を聞いたときは、「なんでそんなに合コンに一生懸命なの?」って思ったのですが、彼らはまさに「ナマのコミュニケーションの盤面解説(あるいは感想戦)」をしているんですね。


 吉田さんは、「コミュニケーション巧者」になるための手段として「愚者戦略」というのを推奨されています。

 欠点から自分のキャラを戦略的につくるというのは、ひとことで言えば、そこをツッコまれてOKにすることです。相手に自分の欠点をツッコまれたとき、ヘコんだり心が折れたりするんじゃなくて、喜べなきゃいけない。コミュニケーション・ゲームをプレーするうえでは、弱点があったらラッキーなんです。

 極端な話、ハゲチビデブの人、全部ラッキー。それをネタにされてOKの人になる。自分のコンプレックスをツッコまれてもウェルカムできる。そうして自分を低く設定しておくと話しかけられやすくなるんです。ボールがよく回ってくるようになるし、パスを出す足場もしっかりする。


 吉田さん自身も「オタクキャラ」であることを「ツッコミどころ」にしているそうです。

 いやまあ、こういうのって、僕はあんまり好きじゃないし、ツッコミを入れるほうにもある種の「作法」みたいなものがあるとは思うのですが、「あまりプライドを高く持ちすぎない」のは、大事なことなのだろうな、と。

 吉田さんは「コミュニケーションというのはチームプレーであり、誰かを打ち負かして個人としての自分の評価を上げようとするのではなく、周囲をうまくサポートしてみんなが楽しくなれば、それが最良の『勝利』なのだ」とも仰っています。

 そういう意味では、「誰かの欠点を過度にあげつらう人」というのも「チームプレーができないプレイヤー」ということになりますよね。

 それでは、ハリルジャパンには選ばれない。

 

 正直、これだけでは、この本の魅力を伝えきれてはいないとは思うのですが、「コミュニケーションは勇気じゃなくて、技術なのだ」ということと、「他人と上手くコミュニケーションをとれるようになっていくのは、けっこう楽しい」ということが書かれている本なのです。


 もちろん、この本だけですべてが解決するわけではないけれど、「エレベータや飲み会が嫌いな人」は、読んでみて損はしないと思いますよ。

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