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「女子力男子」の実態を徹底分析! - 原田曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)〔2〕

〔1〕はこちらから→「女子力男子」の実態を徹底分析!〔1〕

「仕方なく」女性向け商品を購入する

 一方、マーケット的な視点では、今後はマイルドヤンキーと同様に女子力男子も日本経済を潤す層になると期待しています。

 マイルドヤンキーは車やたばこなど男性型商品にお金を使い、クラシカルな消費をする傾向があります。対して女子力男子の場合、消費金額は同じように多いのですが、バレンタインデーにチョコを作ったり、自分の肌に合った化粧水を買うなど「美」の方向にお金を使う傾向があります。美容メーカーは、女子力男子の消費傾向をもっと正確に把握するべきです。企業のマーケティング担当であれば、女性用シャンプーを使用したり、眉毛を整える小綺麗な男性が増えていることぐらいは当然、知っているでしょう。

しかし残念なことに、マーケティング調査に莫大なコストを掛けているメーカーでも見えていない面が多い。たとえば以前、ある生活用品メーカーの商品開発部の方から「女性用のシャンプーを使う若い男の子が増えているのはわかるが、勝手に女性向け商品を買ってくれるなら、わざわざ『女子力男子』向けのジャンルをつくる必要はないんじゃないか」といわれたことがあります。女子力をもった男子は、男子でも女子でもない人たちであることを、この商品開発部の方は理解していないのです。

 たしかに、女性向け商品を買う男性の割合は増えています。でも彼らはその商品が欲しくて購入しているわけではありません。顔の汚れを拭き取る洗顔シートを例にとれば、肌のケアに気を遣う女子力男子の多くは、皮膚への刺激が強いメンズ向けは敬遠し、肌に優しく、香性が強い女性用の洗顔シートを使用しています。

 美意識が高い女子力男子は、「自分の価値観とは違う」といって男物のジャンルになかなか手を出しません。男性向け商品よりはマシという基準で、「仕方なく」女性向け商品を購入しているのです。もちろん彼らは、男女の体の構造が異なることは百も承知です。「本当に自分の体に適しているのか」という不安を抱きながら女性向け商品を使っている男子の声に、各メーカーはもっと耳を傾けるべきです。女子力男子が安心して使える女子力男子を対象にした商品を各社が開発することで、これまで二の足を踏んでいた男子のニーズを吸い上げることになり、市場を席巻できるかもしれません。

 化粧品や洋服のほかに、スイーツも女子力男子をターゲットにした効果が期待できる市場でしょう。話題のパンケーキやポップコーンのお店に頻繁に足を運ぶ「スイーツ男子」の話を聞くと、店内は基本的に女性客ばかりで、周りの目を気にして入店するのに躊躇するそうです。これも先ほどのケースと同様に、女子力男子になれない男子力男子がいるということです。個人的には、映画館のレディースデーのようにメンズデーがあってもいいと思います。業界全体でお客さんの傾向に対するサービスサイドの意識が低いことに、歯がゆい気持ちです。

「壁ドン」する他者意識タイプ

 もう1つ、女子力男子を分類する一つの基準に、自分に意識を向けている「自己満足」タイプと、他人の目を意識している「他者意識」タイプの2つがあります。前者は、先述した「日傘男子」や女装を趣味とする「女装男子」がカテゴライズされます。他人からどう思われようが、自分が楽しければいいと捉えるタイプです。

 一方、後者の他者意識タイプの女子力男子にとって、女子力を身に付けることは異性や同性からモテるための処世術として捉えられています。彼らのほとんどはいわば羊の皮を被ったオオカミで、腹の底では保守的な考えをもっている。他人の目を意識した、いわば偽装の女子力男子です。

 彼らはソーシャルメディアが普及したことで、他人からどう見られるかという自意識のプレッシャーを強く感じるようになり、「女子力=モテ力」の概念にとらわれた人たちです。フェイスブックに料理の写真をアップして「いいね!」の反応を期待したり、本当は興味のない美容やファッションを追いかけている節があります。さらに、一見すると優しい印象でも、ナイトクラブなどで「壁ドン」して女の子を口説いているエセ女子力男子はたくさんいます。彼らは、恋愛やセックスには消極的な草食男子とは対極に位置します。基本的には自身の女子っぽい趣味を隠すことはせず、むしろそれを大々的にアピールすることで肯定的に見られるので、彼らが異性・同性問わず人間関係に苦労することはありません。

 彼らより上の世代の人たちは、自己満足型の女子力男子の存在にしか気付いていません。せいぜい「なよなよしていて、かわいい小物をもつ男性が増えているだけだろう」くらいに思っているだけです。そうではなく、処世術として女子力を付けた男子が実数として増えている現実に目を向けるべきです。

もし女子力男子が部下になったら……

 あなたの会社に突然、女子力男子の新入社員が配属されたとします。皆さんが新入社員を指導する立場だとしたら、彼らとどのように接しますか。若い女子力男子に対して、徹夜で仕事をすることを美化して「根性を見せろ」と檄を飛ばすのはもちろん逆効果です。「おじさん熱いなぁ。俺は家で料理作りたいから、早く帰らせてよ」としか思われていません。ややもすると、ここで「仕事ができない男子」というレッテルを貼りかねません。しかし、男性的なエネルギーが求められていた時代とは生きてきたステージが違うのです。ここでコミュニケーションギャップの理解を放棄するかどうかで、新入社員の働きぶりはまったく違ったものになるでしょう。

 解決策をお伝えすると、女子力男子を、たんに「仕事ができない男」と烙印を押すのではなく、やはり貴重な戦力として認めてあげるべきです。普段から女性誌を読み、美容情報に関心を示し、料理にも精通している力は、ある種の専門性を習得しているのと同じです。われわれの世代にはない女子力男子の関心の深さやアンテナの本数と幅広さを仕事でどう活用してあげるか、という目線で接すればいいのではないでしょうか。

 化粧品開発を例にとれば、女性の市場が圧倒的に大きい化粧品の企画を美容に無頓着なおじさんに任すより、ユーザーとして美容製品を使いこなしている若い男性が担当したほうが、消費者に寄り添ったアイデアや洞察が生まれるのは明らかです。昔の社員と同じ力を要求するのではなく、お互いの役割を決めて、コラボレーションする感覚で仕事を分担するのが理想的な働き方ではないでしょうか。「俺が徹夜して企画書にまとめるから、おまえは周りの女の子たちのトレンドを調べてこい」というのは上司には酷かもしれませんが、仕事の効率は向上すると思います(笑)。

 団塊世代より下の新人類世代~バブル世代は、上の世代からガチガチに管理されてきた辛い思い出があるせいか、自分より下の世代には、本人の裁量に任せようとする寛容さが強い気がします。たとえばプロ野球を見ても、新人類世代よりは少し上ですが、読売ジャイアンツの原辰徳監督や日本ハムファイターズの栗山英樹監督は、その上の落合博満さんや野村克也さんといった世代の監督に比べると、柔らかい印象があります。栗山監督は大谷翔平選手の「二刀流」を認めたり、なかなか結果が出ない斎藤佑樹選手を辛抱強く起用し続けるなど、若者に理解を示す姿勢が見られます。

 考えてみれば、バブル世代~団塊ジュニア世代は若いころから消費する習慣が身体に染みつき、新しいもの好きが多い。女子力男子が広がることで、新しいライフスタイルだとして流行に飛び付き、「女子力おじさん」に変身する人は意外に多いと私は見ています。

 もちろん、バブル世代より上の世代は女子力男子を理解できないかというと、そうではありません。最近、団塊世代の方から「生け花や舞踊を始めた」という声をよく聞きます。社会的抑圧がなくなったことで、次第に解放された女子力おじさんも増えてくるでしょう。これは日本に限らず、アジア全域を含めたマスマーケットに繋がる可能性があります。だからこそ、増え続ける女子力男子を若者に限定した傾向と決め付けず、関心をもつことが重要なのです。
(『Voice』2015年4月号より)

■原田曜平(はらだ・ようへい)博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー
1977年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所などを経て現職。日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行なっている。近著に、『ヤンキー経済』(幻冬舎新書)、『女子力男子』(宝島社)がある。

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■『Voice』2015年4月号<総力特集:地獄の中東、日本の覚悟>
ISIL(イスラム国)の拠点があるイラク北部のティクリートでは、イラク軍による奪還作戦が始まっている。すでに「戦争」は起こっている。今後、米軍は地上戦を行なうのだろうか。日本は国際テロの脅威にどう備えるのか。4月号は「地獄の中東、日本の覚悟」との総力特集を組んだ。

第二特集は、「歴史の常識を疑え」と題し、先の大戦で描かれてきた歴史のストーリーに違う角度から光を当てた論考を紹介する。 他に、2大インタビューとして、観阿弥、世阿弥の流れを汲む観世流宗家・観世清和氏に、能楽堂を渋谷から銀座に移転させる理由などを聞いた。また、東大生の就職先として人気の高いDeNAの設立者・南場智子氏に、「これからの日本人に求められる4つの力」について話を伺った。若い人たちにぜひ読んでいただきたいインタビューだ

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