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安倍農政には数字の誤魔化しが多過ぎる

私は農政に与党も野党もないと思って仕事をしてきた。

しかし、安倍総理はそうではないようだ。

とにかく、安倍農政は完璧で(「この道しかない」)、一方、民主党時代の農政は完全否定すべきものということらしい。

安倍総理や林農水大臣の答弁にも、その姿勢が貫かれている。

具体例を挙げよう。

まず、安倍総理は予算委員会で、民主党時代の戸別所得補償制度を止めた理由として、「集約化のペースを遅らせる面があった」ことを上げている。先週、林大臣も私の質問に対して同様の答弁をした。

しかし、これは真っ赤なウソである。

下図を見ていただきたい。



農地集約の度合いを表す指標として、農地の権利の移動がどれだけ行われたかを表す「権利移動面積」という数字がある。実は、この数字、平成22年に戸別所得補償制度を導入したことを契機として上昇に転じている。

戸別所得補償の導入を契機に、農地集約のペースはむしろ加速している。

それなのに、総理や農相は、あえて平成19年と平成22年を比較して、戸別所得補償を入れたから減少したかのような説明をしているのだ。

意図的に都合のいい数字を抜き出した説明であることは、図をみていただければ一目瞭然だと思う。

一方、この戸別所得補償の予算を削って設けた農地中間管理機構(いわゆる「農地集積バンク」)の予算の執行率が極めて低いことは、これまで指摘してきたとおりである。

農地バンクの下で、農地集積のペースは加速していない。



もう一つ、ウソの例をあげたい。

安倍総理が何度も口にしている農業所得「倍増」についてだ。

断言しよう。農業所得は絶対に「倍増」しない。

理由は簡単だ。農林水産省(審議会)自身がそう認めているからだ。

3月17日発表された食糧・農業・農村政策審議会企画部会の資料によれば、今後10年間で「農業所得」は、約20%増えるとされている(私は、これでも挑戦的な目標だと思うが)。

しかし、これまで選挙のときや外国でのスピーチでかっこよく「倍増」と宣言したために、20%では飽き足らずに、なんとしても「倍増」を実現するため、無理して数字を“いじって”いる。

具体的に言えば、農業所得だけだと20%増にしにしかならないので、「農村地域の関連所得」という統計上聞いたこともない概念を持ち出して、これが1.2兆円から4.5兆円に3.3兆円増えるので、「農業所得」と「農村地域の関連所得」を足し合わせた額は4.1兆から8兆に増えるので、「農業・農村所得」は、「倍増」すると言っているのだ。

ちなみに、「農業所得」は純粋な農産物にかかる所得だが、「関連所得」には水産物の輸出額なども入っている。統計上、単純に足し合わすべきではないものを足すことで数字を膨らましている。

全くデタラメである。




メディアも、こうした細かいカラクリについての理解が乏しいので、政府、農業所得倍増を決定!などと、浅はかな見出しをつけて、政府の大本営発表を垂れ流す。

言葉は悪いが、詐欺まがいの手法だ。

ちなみに、民主党政権時代、戸別所得補償制度を導入することで平成22年度の農業所得は対前年度比17%も伸びている。ここに誤魔化しはない。純粋に「農業所得」が伸びたのだ。農家が求めてるのは「農業所得」の向上なのだ。



また、「倍増」などという無理な目標を掲げることで、優秀な官僚諸君の頭脳が、この滑稽とも言えるつじつま合わせに使われていることも国家的損失だ。もっと他に意味のある仕事をやってもらった方がいい。

安倍総理に申し上げる。

もう無理して「倍増」なんて言うべきではない。これ以上、農家をだますな。

TPPについても同じことが言える。

そもそも自民党は、TPP交渉に参加しないといって政権に帰り咲き、政権についた途端に、前のめりで交渉をどんどん進めている。

最近では、衆参の農林水産委員会の決議を守るとさえ言わなくなった。

農政改革の目玉であるJA改革だって同じだ。ウソや虚構に包まれている。

まず、今年1月の農林水産委員会で、私は西川前農相に、JA全中の監査権限をいじるとなぜ農家の所得は増えるか説明して欲しいと質問した。その際、西川前大臣は答弁できず、しどろもどろになった。

あれから約2か月。

今に至るまで、JA改革と農家所得向上との関係について政府から明確な説明はない。さらに、中央会の指導や監査が地域農協の自由度を妨げている具体例を示して欲しいと頼んでも、ただの一つの事例さえ出せないでいる。

一体、誰のための何のための改革か。

政治的パフォーマンスのための農政改革ではなく、農家や農村の発展につながる農政改革を実現していかなくてはならない。

少なくとも、誇大広告のような目標を立てたり、都合のいい数字だけを取り上げて調子のいい説明をするようなことは止めるべきだ。

日本農業の再生のため、安倍総理には事実に基づく中身のある改革をお願いしたい。

今週、民主党は農政についての対案を出す予定だ。法律にできるものは法律の形で、法律化が間に合わないものは「基本的考え方」を示していきたい。

私たちの案の方が、農家所得の安定と向上につながるものと自負している。

今後、国会の論戦で議論を深めていきたい。

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