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戦争ができなくなるのは良いことだ

食料輸入止まっても、イモ中心なら供給可能 農水省指標(朝日新聞)

 農林水産省は17日に原案をまとめた「食料・農業・農村基本計画」で食料自給率目標(カロリーベース)を50%から45%に下げる一方、日本の食料生産力を示す新たな指標を示した。もし食料の輸入が止まっても、国内農業をイモ中心に切り替えれば必要なカロリーを確保できるという。

(中略)

 新たな指標は、いざという時に国産でどれだけの食料を供給できるかを示す「食料自給力」だ。戦争などで輸入が止まった場合に、国内で国民1人に対して1日にどれだけのカロリーを提供できるかを示す。

(中略)  一方で、生産額ベースの食料自給率目標は70%から73%に上げる。この指標だと、肉類や果物など価格が高く、消費者の需要が多い農産物の実態が反映されるため、「もうかる農業」を後押しするねらいだ。

 この「イモ中心に切り替えれば~」云々というファンタジー溢れる推計は以前から農水省が出していたもので今に始まったことではないらしいのですが、それを朝日新聞が「戦争などで輸入が止まった場合に~」と煽りを込めて伝えたことで結構な話題にもなっているようです。まぁ、食料輸入が止まるような情勢であれば先に化石燃料など必需品の輸入も途絶えていることでしょう。農業機械を動かすエネルギー無しに、どうやってイモを生産するつもりでいるのか、その辺は見所ですね。

 なお「食」の領域に関しては左派を装っているような人でもタカ派としての本性を現すと言いますか、諸外国をパートナーではなく侵略者であるかのように位置づけたがる、外交的な破綻(つまり食料が輸入できなくなる事態)を自明の前提として論を進めたがる人が目立つように思います。話し合いで戦争は回避できると言いながら、食糧問題に関しては国際的な枠組み作りへの関与という「話し合い」に反対し、逆に防壁を高くするような主張を繰り広げていたりする人も目立つだけに、いやはや自家撞着もいいところです。

 一方で現行の政府案は伝統のカロリーベースでの自給率目標を引き下げ、反対に生産額ベースでの自給率を重視する方向性が伝えられています。これは概ね、良いことなのではないでしょうか――戦争でもするつもりの人にとっては、話は別ですが。例えば農産物の輸出大国としてはオランダなどが挙げられますが、これは徹底して「売れる農産物」を追求した結果であり「食糧自給」を放棄することで成し遂げられたものです。オランダは農産物の輸出大国ですが、全く自給自足できていません。食べるためには、どこから食料を売ってくれる国との友好関係が不可欠です。

 でも、それで良いと思いますね。我が国にしても然り、自給自足なんて糞食らえです。自給自足できれば戦争で食料輸入が途絶えても竹槍を持って戦えるのかも知れませんが、そんな国になる必要はありません。むしろ食料を売ってくれる国との友好関係が必須となる国であるべきです。ハト派ならなおさら、そう考えるべきではないでしょうか。カロリーベースの自給率が下がれば、それだけ諸外国との安定した平和的な関係が重要になることを意味します。それは良い意味で自民党政権へのブレーキともなる、歓迎されるべきことです。

「安倍自民党は弱肉強食の競争政策」民主・枝野幹事長(朝日新聞)

■枝野幸男・民主党幹事長
 安倍自民党の政策は基本的には競争政策だ。競争を加速すれば良くなるという、非常に時代遅れの古い経済政策だ。競争政策というのは、要するに弱肉強食の弱い者は切り捨てるという政策だ。第1次産業は、競争原理で弱い者を切り捨てるということでは社会は成り立たないというのが我々の明確な立ち位置だ。弱肉強食の自民党農政か、それとも金目だけではない一次産業の価値というものをしっかりと支える民主党かという非常に明確な対立軸。これは今に始まったものではなく、一貫していると自負している。(福井県敦賀市で記者団に)

 さて確実に外れる天気予報というのは的中率が五分五分の天気予報よりも当てになるわけですが、そういう意味では存在意義の認められる民主党側の主張はどうしたものでしょう。これは冒頭の政府方針へと直接に言及したものではありませんが、みっともないシャドーボクシングといった風情ですかね。民主党こそ与党時代は旧態依然たる構造改革路線を微塵も修正せず弱肉強食の経済政策だったではないかとツッコミたくもなりますが、枝野ではこの辺が限界なのだと思います。加えて、ここで語られている「第1次産業」に限ればなおさら、やっぱり民主党はダメだなという思いが強くなります。

 果たして「弱肉強食の自民党農政」「金目だけではない一次産業の価値というものをしっかりと支える民主党」という対立軸は現実に存在するのではないでしょうか。元より「金目だけではない一次産業の価値」などと言ってしまう党には議席を持って欲しくないなと感じるところでもあります。農家だって理想と霞を食べて暮らしているわけではない、金を稼げない産業に従事したがるのは一握りの変人だけ、枝野路線では農業の先細りが加速するのは不可避と確信が深まるばかりです。では自民党は?

 むしろ自民党の伝統的な農政は、農家の保護を優先して産業としての農業を競争から隔離してきた、そうやって農村部の票を集めてきたわけです。この辺から転換しようとしているのを指して「弱肉強食の自民党農政」などと枝野は言ってみたのかも知れません。しかし「じゃぁ昔ながらの自民党農政で農家の保護に努めれば良いのか?」と問われれば、それに頷ける人は至って少数派でしょう。何でも変えれば上手く行くものではない、下手な改革よりは現状維持の方がマシなケースは多々ありますけれど、第一次産業に関しては明らかに「保護」に偏りすぎていた、この分野に限っては競争原理を少しばかり加えた方がバランスが良いのではないかと思いますね。

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