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事後規制時代における新しい裁判所の役割-アートネイチャー株主代表訴訟への意見

またまた旬刊商事法務の最新号(2062号)からの話題ですが、巻末「スクランブル」においてアートネイチャー株主代表訴訟最高裁判決への筆者の評価が記されています。スクランブルは(一般的に)辛口評が多いと思いますが、筆者は同最高裁判決を「この判決は画期的」「裁判所の役割に新しい地平線を開くものであるように思われる」「全員一致でこのようなはっとさせる判断に至ったことに最高裁の慧眼を感じる」と、かなり好意的に評しておられます。これから出されるであろう学者や実務家の方々の判例評釈がますます楽しみになってきました。

私自身も、第一印象的なものではありますが2月20日の拙ブログのエントリー「お天道様と最高裁はみている-ある最高裁判決への雑感」において、

何か紛争が勃発して、その後、優秀な弁護士が登場してビジネスの経過を無視して証拠をそろえてみても無駄、ということであり、日頃からコンプライアンス経営を積み重ね、企業の持続的な成長のために経済的合理性のある行動を重ねている企業が勝てる司法制度であってほしいと思います。「予測可能性」という言葉が判決に登場しますが、結果の重大性から過失を認定したり、後日、会社が成功したから非公開株式の評価額を算定する、というのは後出しジャンケンの発想かもしれません(自戒をこめて)。

と書きました。(当ブログとスクランブルとのレベルの差は別として)個々の事案で何が真実であったかをミクロ的に追求するのではなく、経済活動があるべき手順に従って行われていることを確認することに裁判所の役割がある、と感じています。「事前規制時代から事後規制時代となり、裁判所の役割は重くなっていたが、そこからさらに経済社会の自律(自立ではなく自律です)の時代にパラダイムの変更がなされたのではないかと感じる」とのことですが、まさにそのとおりかと。

もちろん損失や利益の公平な分担、という視点を重視することも民事訴訟を解決する裁判所の重要な役割だと思います。裁判所の判断が必然的に結果論になってしまうところを否定するものではありませんし、あるべき「公正な価格」を探るために後出しジャンケン的に裁判所が株価算定を行うということも法の定めたルールに則った形であれば許容されるものと思います。しかし、予見可能性を重視することが経済社会の「効率性」に資するものであるならば、このような裁判所の判断過程が今後は広く受けいられるのではないでしょうか(もちろんご批判もあるでしょうけど・・・)。

同じような意味において、このたび「親権者(法定監督義務者)の子に対する監督責任」(民法714条責任)に関して最高裁で弁論が開かれたというニュースにも注目しています(ちなみに新聞記事では民法709条なのか714条なのかわかりませんでしたが、NHKニュースによって、714条責任が争点であることがわかりました)。責任能力に乏しい子供の過失行為について、親が監督責任を尽くしたことを立証できない以上は責任を負うことになります。

一般的には損害の公平な分担という見地から、親の監督義務の免責は容易には認められないと考えていますが、このたびの最高裁はこの「監督責任」の具体的な判断基準を提示する可能性は高いと思われます。仮に最高裁が新たな判断基準を示した場合、認知症高齢者の監督者責任などにも影響を及ぼす可能性があるはずです。ここでも「予見可能性」が問われ、監督者の行為規範が本気で議論されるきっかけになるのではないでしょうか。

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