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バロンズ誌:Fedは早期利上げ観測を払拭、定年退職者には打撃に

Barron’s : Fed Indicates A Rake Hike Won’t Arrive Soon, Bad News For The Little Savors.

バロンズ誌、今週のテーマは世界で最も優秀な最高経営責任者(CEO)です。バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏といった常連のほか、今回はアップルのティム・クック氏やウォルト・ディズニーのロバート・アイガー氏、アンダーアーマーのケビン・プランク氏がリストに初参入しています。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートでは、もちろん17−18日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)が主軸。FOMCは声明文からフォワード・ガイダンスの「忍耐強くなれる(patient)」を外した一方、FF金利見通しを下方修正してきました。2015年の中央値は前回から65bp引き下げ0.675%、2016年も62.5bp引き下げ1.875%へ変更しています。

利上げ観測が後退したため、超低金利に煽られてきたリスク資産は唸りを上げて上昇していきました。ナスダックは2000年3月に達成した最高値5048.62pに接近し、アップルが構成銘柄に加わったダウ平均も18000ドルを回復。ラッセル2000も、過去最高値で取引を終えています。

Fedが利上げ開始時期を6月ではなく9月と示唆した結果、エコノミストが予想を変更しただけでなく、ドルは上昇を巻き戻し米10年債利回りは2%割れへ回帰しました。経済成長見通しを下方修正した理由は、大寒波と積雪といった悪天候要因だけではないでしょう。結果的に、バイオジェン・アイデックが10%も急伸したように景気敏感株に該当しないバイオ薬品株の買いが膨らみ、上場投資信託(ETF)の”マーケット・ベクターズ・バイオテック(BBH)”は2014年4月から50%ものラリーを謳歌しています。2014年7月当時と打って変わって、イエレンFRB議長が記者会見でバブルが生じつつある一部セクターを指摘しなかった点もサポートとなったことでしょう。

バイオジェン、開発中のアルツハイマー治療薬で効果を確認し20日に一段高。
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(出所:Stockcharts)

過剰流動性は、過去にマリンベストメントを生み出し、バブルを築いたものです。ITバブル、住宅バブルが一例にあたり、足元ではウバーやエアビーアンドビーなど、バイオテクノロジーと違って人命とは関係ない非上場株に押し寄せています。

一般家庭は、こうしたFedの低金利政策の恩恵を受けているとは言い難い。例えば本誌の”エコノミック・ビート”担当のジーン・エプステイン氏は、預金金利に頼る定年退職者はインフレ以下の金利に直面し、リスク資産に投資せざるを得なくなったと説きます。リスク資産の投資先としては株式だけでなく、地方債という手段も。2014年に債務不履行リスクが浮上したプエルトリコの場合、プエルトリコ高速道路輸送機関が発行する債券の利回りは8.25%でした。再びデフォルトの危険性が高まりつつあるため、利回りが上振れしているだけですが・・。

投資先より深刻な問題点は、自宅を担保とする選択肢が奪われつつあることでしょう。住宅情報サイトのジローによると、2014年10−12月期にアンダーウォーター(住宅価値がローン債務残高以下)の割合は16.9%と、同年7−9月期とほぼ変わらずでした。しかも低価格の住宅保有者ほどアンダーウォーターのシェアが高く、27.3%という有様。こうした住宅保有者は自宅を売却することもできず、じっと耐えるしかない悪循環に捕われています。

——住宅を保有していない”持たざる者”にとって、低金利は両手を上げて歓迎できない要因が潜みます。国内富裕層だけでなく外国人が住宅を買い上げていくため住宅価格は急伸し続け、賃貸を余儀なくされる層を生み、結果的に家賃を引き上げるため、低金利は百害あって一利なしといっても過言ではない。定年退職者だけでなく、ミレニアル層にとっても逆風を吹き付けています。

ストリートワイズは、FOMCを受けた株高がテーマ。ウェルズ・ファーゴの米株ストラテジスト、ジーナ・マーティン・アダムズ氏は向こう12ヵ月先にS&P500は足元から6%上昇し2222pに届くと見込んでいます。その他のストラテジストは一段と強気で、”メルトアップ”を予想。S&P500は20%以上も跳ね上がるとの期待を寄せていました。

ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)サンフランシスコ・フォーティナイナーズ所属のLB、クリス・ボーランド選手は16日にわずか1年のキャリアに幕を閉じました。頭部外傷を理由に挙げ、NFL選手として得た富と名声は、長期的に健康という代償を払わざるを得ないと判断したかたちです。米株相場も、ボーランド元選手のように長期的スパンでのダメージに気づくのでしょうか。

過去を振り返ると、見通しは明るくありません。1)業績の伸び、2)配当利回り、3)バリュエーションの変化——を背景に、上昇余地が狭まる可能性が出て来たからです。S&P500の配当利回りは足元で1.7%で、1983年から2013年までの平均2.6%以下にとどまりました。業績は1株あたり利益伸び率が1.3%増となる見通しで、過去30年平均の2.8%増に大きく水を開けられています。バリュエーションはというと、割高感が高まるなかでリターンを2.6%押し下げる可能性が出てきました。総合的にみると、インフレ調整済みで0.4%のリターンしか得られない見通しです。

株高を受けて祝杯を上げた翌日に、二日酔いにならないよう気をつけたいものです。

——ストリートワイズ、今回は冷静なスタンスで株高を手放しで歓迎していませんでした。楽観スタンスの後退は、来週号でも続くのでしょうか。

(カバー写真:Anne Worner/Flickr)

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