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ひきこもりの若者は、生活保護で自立できる


「弱者の正義」が蔓延する日本:生活保護バッシングに見る、日本の不思議な国民性」という記事を書きましたが、いい本なのでもう少しご紹介。


ひきこもりの若者は、生活保護で自立できる

画像を見る生活保護から考える (岩波新書)[Kindle版]
posted with ヨメレバ
稲葉 剛 岩波書店 2014-12-18

すでに段階的な基準の引き下げが始まっている生活保護制度。社会保障制度の、そして生きるための最後の砦であるこの制度が、重大な岐路に直面している。不正受給の報道やバッシングのなか、どのような事態が起ころうとしているのか。当事者の声を紹介するとともに現場の状況を報告、いま、何が問題なのか、その根源を問う。

生活保護をめぐる動向について、コンパクトかつ網羅的に論じた新書作品です。執筆しているのはビッグイシュー・オンラインでもご協力いただいている稲葉剛さん。「扶養義務の強化」に関する文章で、たいへん共感するものがありました。

私が〈もやい〉で関わった相談事例でも、長年引きこもっていた若者がホームレス状態になり、生活保護を利用して自立したケースがいくつかあります

現在でも、福祉事務所の窓口では、若年の生活困窮者に対して「実家に戻れ」という圧力がかけられており、「自分が死んでも骨ひとつ拾わないと親に一筆書いてもらったら、生活保護を認めてやってもいい」と言われて、窓口で追い返された若者もいました。制度が変わるとさらにその圧力は強まってしまうでしょう。

こうした若者たちの自立にとって必要なのは、親からの経済的な援助ではなく、空間的・精神的に一人になれる環境であることが多いと私は感じています

信田さよ子氏が指摘しているように、親との関係が依存的になり過ぎて、こじれてしまっている場合には、親子の経済的な関係をあえて断ち切ることが有効な「支援」になることもあるのです。

生活保護にはそういった効果も期待できる一方で、自民党政権下において、生活保護制度は「まずは親族を頼れ」という「扶養義務強化」の動きが進んでいます。

扶養義務が強化されると、生活保護利用者や申請者の親族は福祉事務所から扶養義務を履行するよう求められることになります。

しかし私は、親子関係に限らず、経済的な援助をするように、行政から求められることは逆に親族関係を悪化させる危険性が高いと感じています

ひきこもっている以上、経済的に親の家を出ることは難しいでしょう。扶養義務を強化する流れというのは、「臭いものに蓋」ではありませんが、問題を家庭のなかに閉じ込める意味を持ってしまいます。ひきこもり問題に関しては、神頼み的に親子関係が改善することを祈るのではなく、生活保護を始めとする公的なサポートを提供すべきだと考えます。

感覚的な話ではありますが、ひきこもりというのは、そもそも親子間の人間関係トラブルに起因している場合が多いように感じます。

「ひきこもり問題の処方箋としての生活保護」というのはほとんど語られていません。現場レベルでは実効性が認識されているわけで、真面目に可能性を考え、検証していく必要があるといえるでしょう。


生活保護問題についてまとめながら、日本社会のあるべき姿にまで射程を広げた良著です。ぜひ。

画像を見る生活保護から考える (岩波新書)[Kindle版]
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稲葉 剛 岩波書店 2014-12-18

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