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強制という事実はなかった

「殴られても構いません」野球部員に書かせ体罰 和歌山(朝日新聞)

 上富田町立上富田中学校(同町岩田、小森弘二校長)で、野球部顧問の男性教諭(35)が昨年8月から今年2月ごろにかけて、2年生の複数の部員に体罰をしていたことが12日、同校などへの取材でわかった。町教委によると、「『野球部のルールが守れなければ殴られても構いません』という文書を書かされた」と話す部員が複数いたという。県教委は男性教諭の処分を検討している。

 どこの会社でも似たようなことはあると思いますけれど、上の人達が下らないことを思いついて、その実作業を振ってくるわけです。「そんなこと絶対に上手く行きませんよ」と説明してやるのですが、決める権限を持っているのは向こうですから、どうにもなりません。ここで素直に「やります」「できます」「努力します」と即答しつつ、失敗に終わった後は巧みに責任を回避できるようであれば出世コースに乗れるのでしょうけれど、どうしても私は成功の見込みがないことを忠言してしまうので、嫌がられますね。

 それはさておき、実務担当者レベルで何を説明しようが、決める権限を持っている人が思いついたことは動かせません。日本では末端の非正規社員にも経営者意識が求められるものですが、決定権は常に偏在しているわけです。だからトップの思いついた馬鹿馬鹿しい改革案が強行され現場の負担ばかりが増えては会社が傾いていく、そんなこともよくあります。まぁ、会社の業績は落としても自分の評価は落とさない、そうした振る舞いこそ経営者の腕の見せ所ですから。

 ……で、社内のお偉いさんなり親会社の人間なりが、しょっちゅう馬鹿げた提案をしてくるわけです。提案と言っても名ばかりで、実際は決める権限のある人の頭の中で出た結論ですから、こちらの回答とは無関係に断行されることが決まっています。成功するはずがない理由をどれだけ説明しようと聞く耳など持たれることはなく、実際の作業者が「はい」と言うまで話は終わりません。物わかりの良い社会人は素直に「上」の言うことを聞いては無茶なプランを前に悪あがきするものですが、私なんかは「仕方が無いからやりますけれど、賛成はしていませんので」と言っちゃいますね。

 意見を聞く風を装いつつ、その実は相手(部下)の同意しか求めていない、そんな人も多いと思います。上の人々の頭の中ではとっくに結論が出ていて、それは決して覆ることがない、にも関わらず実務者の意見を聞く「フリをする」そんな人を頻繁に見かけるところです。だったら率直に「やれ」と命令すれば良いのにという気もしますが、実務者から「同意」を得るまで延々と話し合いを重ねる、そんなプロセスが繰り返されているわけです。お前らは話を聞くフリをしているだけだ、実務者の話を聞いて意見を改めたことが一度でもあったのか――そんな風に言いたくもなります。

 ある意味、日本では「強制している」という事実を取り繕いたがる人が多いのかも知れません。本当は無理強いしている、選択の余地など与えていないのに、同意あるいは合意の上だと装って自らの行動を正当化したがる人が目立つ気がしますね。冒頭の事例も然り、実際のところ生徒側の自発的な意志などあろうはずもないのですが、それでも部員側に「自ら」念書を書かせるというプロセスを経由することで、事実上の強制に対する言い訳を作っているわけです。一方的に暴行を加えたのではない、生徒の同意を得ての行為だ、と。

 会社でもやはり、結局は上が思いついたことを強制されるという結論は変わらないのですけれど、それでも「同意を得た」というプロセスだけは経由したがる人が多いと言えます。「意見など聞かずに無理にやらせた」ということにはしたくない、「下」に説明をしてお互いに納得の上でやらせたのだと、そういう体裁を整えるために膨大な時間を費やしている人は多いです。全く、これ以上無いほどの無駄です。素直に強制している、強制してきたという実態を受け入れれば良いのにと思いますが、それだけの度量がないんでしょうね。

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