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「地方創生=農業改革」はメディアの描いた幻想

全中から監査権を奪い、単なる社団法人へ格下げしたことは、農協解体へ向けた第一歩として評価できる動きである。中長期的には、莫大な予算を持つ農林水産省も格下げに向かうだろう。ただ、安倍首相としては、農業改革を断行することにそれほど思い入れがあるわけではなく、その本心はTPPに反対して(対中国政策の橋頭堡となる)日米関係の足を引っ張る彼らを、押さえ込むことにある。

日経新聞のような”一流メディア”が、このような事態の本質を見抜けずに、「農業改革こそ地方創生の第一歩」と盛り上がっているが、これは明らかに論点がずれている。日本の農業はGDPに占める割合は1%程しかない、零細産業である。それが効率性を今の倍に上げ、輸出額も現在の4,000億円から引き上げたところで、地方はまったく潤わない。

それどころか、200万戸の農家に本当の効率化の波が押し寄せたら、地方から人はいなくなり、都市への人口集中が更に加速するだろう。海外の事例を参考にすれば、農業に係わる人口は100人に1人の割合で十分である。技術力、開発力に優位性のある日系の食品メーカーは、すでに海外での現地生産へシフトしており、日本の「農業」や「食」は、所得収支として還元されている。

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農業改革それ自体は、農協、県連、全農という無用なピラミッド構造を排除し、農家の赤字を補填しているだけの助成金を減らすという意味では意義のあることだが、地方創生には決してならない。この2つの事象をごちゃ混ぜにして、「地方創生=農業改革」という考え方で様々なことを進めていくと、多くの努力が徒労に終わってしまうだろう。

では「地方創生のためには何をすべきか?」ということだが、地方発の起業家の育成や、観光業などを国が制度面でバックアップすることが有効であると思われる。あるいは、地方に有力な大学を建てるとか、大企業が地元に納税できるようにするとか、富裕層が別荘を建てた場合に税制優遇を行うなど、都市への一極集中を自然なかたちで是正する方策がよいと思う。

農業改革によって、農家に自立を促す。その上で、これまで彼らにばら撒かれていた助成金を、地方創生の財源とする。それこそが、地方創生の最短距離であると言えるのではないだろうか。

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