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そもそも誰もおもしろいと言わない話だった『かぐや姫の物語』

『かぐや姫の物語』鑑賞。TVで放送したヤツ。

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今作では余白についてのこだわりを見せ、青空はおろか木々の様子も細かく描かれず、むしろ地面ですら着色が途切れたりしている。あえてそうすることにより、空間を閉じ込めない。逆に広がりを感じてほしいとは監督の弁。

とはいえ、自分で絵が書けない監督のイメージに一介のアニメーターが近づくのは至難の技であり、しかもダメ出しのほとんどが「書きすぎ」ということから。背景を最初から書き直すなんてことは日常茶飯事。

そのこだわりはキャラクターの動きも同様で、宮崎駿のように走ったりコケたりと目立つようなアクションでの指示よりも、人が歩いて立ち止まったりするスピードを微調整するというのがほとんど。しかもキャラクター自体が筆でさっと書いたイラストのようなものなので、色を塗るためにわざわざその線をキャラクターに重ねるなど(線がつながってないとコンピューターで色が塗れないため。便利なんだか不便なんだかわからん)、その労力は通常の二倍にもなる。

しかもプレスコという、役者の声を先に録音し、それに合わせて絵を書くという手法をとったことでさらに時間はかかることになった。とはいえ、これが奇しくも最期の仕事になってしまった地井武男のかぐや姫が月にいってしまうというくだりは舞台のお仕事がしたいと留学することになった娘さんに対する心情と重なり、主役の女の子がセリフの読みあわせだけでその演技の重厚さに泣いてしまったというすさまじいエピソードもある。鈴木プロデューサーも実写で見たいと思わずいったほどであった。

大友克洋がかつて「手書きのときは一度書いたら直せないんですけど、デジタルになったら直し放題ですからね」と『スチームボーイ』の製作時に言っていたが、手書きでなければならない部分も直していったので、その徹底ぶりに完成は遅れに遅れ、制作費も膨れ上がっていったのは有名な話。

それだけ時間も手間もかかった映像は見ごたえあるし、絵巻物のような絵本のようななんともいえない温かみのあるタッチは他のアニメとは一線を画す出来で、全カットひとつも見逃せない。宮崎駿が触発されて「引退」を「長編作品からの引退」に変えたいうのもなんとなく頷ける。

しかし、ここまで書いておいてあれだが、劇中「美しい絵巻でございましょ。流れるように物語が…」と言いながら少しずつ見せていってる最中にかぐや姫がばーって全部広げて「ホント!流れるようね!」ってやるけど、まさにああやりたかったというのがぼくの正直な感想だ。じっくり見たいというよりも早く終わってほしかった。
「『竹取物語』ってあれだけ有名なのに読んだ人全員が「おもしろかった」とか「感動した」っていわない変な話なんだよ」

と、高畑勲もインタビューで言ってるが、まったくその通りで、この『かぐや姫の物語』は意外にもめっちゃ『かぐや姫』であり、そもそもそこまでおもしろい話ではなく、それこそ50億かかった『浦島太郎』とか『金太郎』を見たいか?という感じだったのだ。「こうすればおもしろくなると思ったからやった」ともいっているが、その改変も物語に負けているというか……じゃあ、本来の『竹取物語』とどこが違うねんと言われれば返す言葉もないのだけれど。

こってりとした映像だって手塚治虫の『ジャンピング』や大友克洋の『大砲の街』が2時間17分あったらどうなるか?みたいなもんで、予告編でさんざ流れてたかぐや姫のダッシュシーン以外、絵がさほど動かないということもあって、結構早い段階で飽きてしまった。もちろんあれを一枚の絵として見れる人にとっては至高の時間だっただろうが、ビデオゲームの『大神』と何が違うの?もっといえば、あっちの方が見続けられるんだけどなんてことも思ってしまう始末……すみません。

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『大神』のゲーム画面。まさに動き出す絵巻である。

元々高畑勲監督のこだわりと相性が悪く(紅花を徹底取材してそれを絵で表現するとか)、まぁこだわりという言葉自体も「どうでもいいことにこだわって」というマイナスの意味もあるので、ぼくにとってはそれこそどうでもいいことにこだわったアニメだった。それだけの話である。

参考にしたメイキング番組「人生が変わる1分間の深イイ話」「世界一受けたい授業 世界に誇れるNIPPONスペシャル」「探検バクモン 魔法のアニメーション工房」「100博士アカデミー」

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