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「メディアの明日」を探りに米国へ行ってきました

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2/23から3/6まで約二週間にわたって、NHKさんの取材でアメリカに行ってました。「メディアの明日」というNHKBS放送の番組なんですが、僕は第5回放送の出演者の1人ということで、ノースカロライナ、シカゴ、シリコンバレーの大学や企業を回って取材して来ました。

思えば最初にメディアとテクノロジーに関してまとまった記事を書いたのが1995年、インターネットの商用利用が始って間もない頃でした。当時、時事通信社のサンフランシスコ支局で記者をしていた僕は、インターネットの可能性の大きさに驚き、まずは自分の仕事がどう変わるのかという興味もあって「電子新聞の時代」というタイトルの連載記事を書きました。僕が書いた最初の連載記事だったと思います。今回NHKのディレクターの要請で押入れの中を探してみたら、黄色く変色した5枚の紙が出てきました。最初の連載記事だったので、記念に取っておいたのでしょう。読んでみると、いずれだれもがスクリーンで新聞を読むようになる、というようなことが書いてありました。

時事通信社の契約社である地方紙に向けて配信した連載記事だったのですが、実際に掲載した地方紙は一紙もなかったと聞いています。ただ5枚の記事は複数印刷され、当時の時事通信の部長級以上の幹部全員に配られたそうです。懇意にしていた部長からあとで聞いた話ですが、ほとんどの幹部は「スクリーンで新聞記事を読む時代など来ない」と相手にしなかったそうです。

その頃から僕は、自分の仕事がどうなるのか、自分の会社がどうなるのか、メディアはどうなるのか、ということを、常に考えるようになりました。

2000年に帰国した僕は、2003年に「ネットは新聞を殺すのか」という本を書きました。この本を執筆しているときは、「ネット時代にメディア企業はどのように変貌すべきか」という観点で書き進めていました。でも、いざ出版するときになると、出版社がよく売れるようにと、刺激的なタイトルをつけてきました。内容はさほど挑発的でもなかったのですが、タイトルに反応したのか、共同通信の編集委員からは「このような本を書く人間が、同じ業界にいたとは信じられない」という書評を書かれてしまいました。本が出たあとは新聞社、テレビ局、広告代理店などから講演依頼がたくさんきました。当時の電通の新聞局の局長は、怒ったような顔をして僕の講演を聞いたあと、何も言わずにさっさと退室してしまいました。僕を講演に呼んだ若手の電通マンの、バツの悪そうな顔を今でも覚えています。

このころから僕はメディアとテクノロジーの関係についての自分の考えを一切公表しなくなりました。1つには、メディアの未来の形というものが自分の中で見えたからです。これ以上、調べても結論は変わらないだろうなと思ったので、このテーマに対する興味がなくなりました。もう1つの理由は、メディア業界の頑迷さに愛想が尽きたからでもありました。よかれと思って提言したのに裏切り者のように扱われてしまったということが、悔しくもありました。メディアの未来に関する講演依頼も、断るようになりました。

連載記事「電子新聞の時代」から20年、書籍「ネットは新聞を殺すのか」から12年。今回2週間に渡る取材旅行から戻って感じたことは2つあります。1つは自分の中にあった悔しさやわだかまりが、長い年月を経て溶けてなくなっていたのだということです。従来型メディアに対する反発は消滅し、彼らが抱く不安や悲しみに理解の心を持てるようになっていました。

もう1つは、やはりメディアという仕事は楽しい、ということです。自分は本当にこの仕事が心の底から好きなんだなって感じました。特に今回は、10人近くのスタッフで1つの作品を作り上げるというチームワークがとても楽しく感じられませた。

実際の取材内容に関しては、番組を見ていただければと思います。NHKBS放送「メディアの明日」第5回は、月末か来月初旬に放送されるそうです。


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