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クラウドファンディングは地域萌えキャラ「東北ずん子」をメジャーに押し上げられるか? - 村山聡

東日本大震災の復興を応援する「東北ずん子」というキャラクターをご存知でしょうか?その東北ずん子がアニメ化を想定した画集を製作するための資金調達を、クラウドファンディングで開始したことが話題になっています。

■クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは目的達成のために資金を必要としている組織や団体が、インターネットを通じて不特定多数から資金を調達する仕組みのことです。国内では「READYFOR?」、「CAMPFIRE」などのクラウドファンディング業者が2011年からサービスを開始しています。CAMPFIREのウェブサイトに掲載されている総支援額(目標金額を達成したプロジェクトに対して支援された金額の合計)を見ると、順調に利用が増加していることが伺えます。

「CAMPFIRE総支援金額」(CAMPFIRE Webサイトより)
2014年 207,031,468円
2013年 167,391,521円
2012年 91,899,454円
2011年 18,383,846円(7ヶ月間)

クラウドファンディングを使う目的は様々ですが、日本では特定のセグメントに向けた受注生産に近い商品の開発や、地域課題の解決などの社会貢献といった用途で活用されています。銀行やベンチャーキャピタルからの融資が期待できない小額、かつ単発のプロジェクトにとっては、自ら先行投資をすることなく、資金を集められると言うメリットがあるからです。また商品開発の観点では、支援者イコール販売先にもなるため、在庫リスクの軽減も期待できます。

■東北ずん子の収益化戦略

このようにクラウドファンディングは、単発の企画に対して支援を募ることが一般的です。ところが、東北ずん子については、若干事情が異なります。その事情を説明する前に、東北ずん子というキャラクターの収益化戦略について説明しておきましょう。前述のように、東北ずん子は東日本大震災の復興を応援するという目的で企画がスタートしました。復興支援をする萌えキャラという意外性もあり、注目された東北ずん子ですが、一方でくまモンのように自治体公認によるサポートがある訳でもなく、また「萌え」という二次元のキャラクター故に、地域イベントに着ぐるみを貸し出すといった活動ができないという制約がありました。

そこで東北ずん子は二つの戦術をとります。一つ目が「キャラクターの商用使用の無償化(東北地域に限定)」です。使用に関する申請すら不要という大胆な方策をとることで、東北地域の企業がキャラクターを使用しやすい環境を整えたのです。二つ目は「非商用における二次創作利用条件の大幅緩和」です。インターネット上には、pixivというイラスト投稿サイトや、ニコニコ動画など、個人が創作した作品を投稿できるサイトがあり、これらのサイトはキャラクターの人気に対して高い影響力を持っています。二次創作利用条件を緩和することで、こうしたサイトへのファンによる作品の投稿の活性化を図ったのです。

つまり東北ずん子の運営は、利用制限を可能な限り無くすことで、キャラクターの利用を活性化させ、認知度向上とファン層の拡大をした後に、収益化を狙うという戦略をとったのです。

■マーケティングを目的としてクラウドファンディグの活用

では利用制限を無くすことで、すぐに認知度が向上したり、ファンが増えるかというと、そう簡単ではありません。人気タレントだからこそ企業のCMに起用されるように、話題性や人気がなければ、利用者やファンはキャラクターを使ってはくれないからです。そこで東北ずん子の運営が利用したのがクラウドファンディングです。実は東北ずん子がクラウドファンディングを使用するのは、今回が初めてではありません。以下のように過去4回クラウドファンディングを利用しています。

・iPhoneアプリ製作  (募集金額 30万円)
・VOICEROID製品製作  (募集金額 500万円)VOICEROID:音声合成による会話音声作成ソフト
・MMDモデルデータ製作 (募集金額 25万円)MMD   :キャラクターの3Dデータ
・VOCAROID製品製作   (募集金額 500万円) VOCAROID :音声合成による楽曲作成ソフト

東北ずん子がクラウドファンディングを開始するたびに、新興のネットサービスと萌えキャラという組み合わせに話題性があると判断され、サブカルチャーを主題に扱う情報サイトに記事として取り上げられました。またクラウドファンディングにより製作する商品は、ニコニコ動画などで作品を投稿するために使用可能なデータやツールであり、これらの製品がクラウドファンディングにより製品化されることで、ファンの作品の投稿を促進させることにつながります。さらにクラウドファンディングにより資金も調達できる訳ですから、一石二鳥ならぬ、一石三鳥の効果を生み出しているといえます。

商品を世に送りだすことを目的とするのではなく、マーケティング活動を主目的とし、その手段としてクラウドファンディングを利用する斬新な発想が、東北ずん子というキャラクターの成長に大きく寄与したといえるでしょう。

■アニメ化を実現するための工夫が成功への鍵か

このようにクラウドファンディングを上手に活用しながら、着実にキャラクターを成長させてきた東北ずん子がメジャーなキャラクターとしての地位を築くために始めたのが、今回のクラウドファンディングプロジェクトです。クールジャパンの象徴として何かと話題の日本アニメですが、実際にアニメとして製作される原作は、マンガや小説の人気タイトルがほとんどです。もし地域萌えキャラとして始まった東北ずん子がアニメ化されるとしたら、まさに快挙といえるでしょう。

この快挙を達成すべく、東北ずん子の運営はさまざまな工夫をしているようです。まず話題性やさらなるマーケットの拡大を意図してか、これまで利用してきた国内のクラウドファンディングではなく、アメリカの事業者であるKickStarterを利用しています。またいきなりアニメ化の資金を募集せず、アニメを製作する際に必要な設定資料となる画集を製作する企画への資金の募集にすることで、ファンの期待感を高めるとともに、募集金額を3000$と比較的集めやすい金額に落とし込んでいます。ほんの数秒ですが、著名なアニメ監督によるアニメーションも公開されており、アニメ化への下準備が進んでいることのアピールもなされています。

こうした工夫が実を結び、果たして東北ずん子のアニメ化が実現されるのか、企画の成否が注目されるところです。

※画像は、運営会社であるSSS合同会社に許諾いただき、かつ利用のガイドラインに違反しないことを確認の上、掲載しております。

《参考記事》
■企業任せでは済まされない?女性活用が進まない理由をデータで考える(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43516534-20150224.html
■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40838018-20140914.html
■メジャーで最も不運な投手?黒田博樹の安定力(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40241196-20140808.html
■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。  村山聡
http://sharescafe.net/39363307-20140614.html
■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと 村山聡
http://sharescafe.net/38576145-20140430.html

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