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自衛隊への好感度が過去最高に 「ゆるすぎる」公式ツイッターが貢献? - 多田慎介

テレビのニュースには拾われないかもしれないけれど、ネットの一部で盛り上がったあの話題。知りたい人へお届けします。

自衛隊の好感度アップが目立つ20代

 東日本大震災で被災者救出や復興作業に尽力した自衛隊。世のため、人のために働く隊員の姿は、組織のイメージアップにも大きく貢献した。

 この事実は、内閣府が発表している「自衛隊・防衛問題に関する世論調査(http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-bouei/2-2.html)」(2015年1月)で確認することができる。毎年行われる世論調査の中で、「自衛隊・防衛問題」のテーマは3年ごとに実施されている。

 この調査によると、「自衛隊に対する印象」についての設問で、「良い印象を持っている」「どちらかといえば良い印象を持っている」と答えた人の割合が全体の92.2パーセント。これまでのデータと比較して、過去最高の数字だった。

 前回調査の2012(平成24)年の同指標は91.7パーセント、前々回調査の2009(平成21)年は80.9パーセントで、震災をはさんで自衛隊の好感度は大きく上昇していることが分かる。今年の調査結果でも勢いは衰えていない。国防についての政策論議とは違った次元で、自衛隊そのものは広く国民に受け入れられているのだ。

 この世論調査を対象の年代別に見ていくと、さらに興味深いことが分かる。前々回、前回、今回の調査で、良い印象の割合が増え続けているのは20代、50代、70代以上だけ。特に数値としては20代の伸びが大きいのだ。この要因はどこにあるのだろうか。

自衛隊の日常を身近にした公式ツイッター

 20代への影響力という点では、自衛隊・宮城地方協力本部が運用するツイッターが「ゆるすぎる公式アカウント」(https://twitter.com/miyagipco)として知られている。プロフィールによると地方協力本部は各県にあり、自衛隊員の募集や広報を担っているという。中の人(運用担当者)は「サト吉(海自♂)」「あっちゃん」と名乗る2人だ。

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自衛隊・宮城地方協力本部が運用するツイッター
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 12万を超えるフォロワーを抱え、平日は毎日、積極的につぶやく。この内容が自衛隊の公式アカウントとは思えない面白さで、ネット的に秀逸であるとして人気を集めているのだ。最近のツイートを紹介すると、

「トイレに付いてる音姫の自衛隊版って無いかね。 「対水上戦闘!CIC指示の目標 攻撃始め! 主砲撃ち〜方始め!ドンドンドン!」 とか「弾着(だんちゃーく)!今!!」とか。 腹痛と戦う男達へ捧げる円舞曲みたいな。 売れないな!」
https://twitter.com/miyagipco/status/572333540186066944

 さらにトイレネタをたたみかけるように、

「一歩前進 捧げ銃 帽振れ」 自衛隊の施設の何処かに貼られている紳士の約束だよ!機会があったらトイレを借りてみよう! あ、言っちゃった」
https://twitter.com/miyagipco/status/572335296357920768

 実にゆるいテンションで、ゆるいテーマを取り上げる。そのツイートの中で、さりげなく自衛隊の日常を伝えている。一般的な生活を送っている限りは縁遠いはずの軍事用語も、あまり違和感を感じさせない。このスタイルでなければ難しいことだろう。

 自衛隊員の募集という大きな目的があるので、必然的にターゲットは若者。12万フォロワーという数の威力を考えると、20代の間で自衛隊への好感度が上がっていることにも、少なからず影響を与えているのではないだろうか。これは若年層を対象にしたツイッター広報の好事例と言えるのかもしれない。現在、自衛隊では他の地方協力本部でも公式アカウントの運用を進めている。

「華麗なる公式」の広がりに期待

 一般企業にも、同じように人気を集める公式アカウントの運用例がある。「おもしろ企業公式アカウント」として、NAVERでもまとめられていた。
http://matome.naver.jp/odai/2137905274433219701

 「目の付けどころがわかりません」とつぶやくシャープ、「お・も・て・え・な (´Д`) 【ご家庭にあるタニタの心の中】」とつぶやくタニタ、フォロワーからの「○○は取り扱っていますか?」という質問に対してユーモアたっぷりに返信するニッセンなど、どれも担当者の遊び心を感じさせる公式アカウントだ。前述の自衛隊宮城地方協力本部とともに、これらのアカウントは「華麗なる公式」と呼ばれてハッシュタグが付けられている。

 誰がどのような立場で見ているか分からないSNSで、ときに炎上のリスクと隣り合わせの公式アカウント。大手企業では特に「守り」に入らざるを得ないテーマだ。ゆるい運用を勇気と見るか愚挙と見るかは企業の価値観によって異なるだろうが、多数のフォロワーを獲得し広報に大きく貢献しているのは事実。かつては内部情報を知る機会が限られていた自衛隊も、ツイッターを通して身近な存在となりつつある。今後も同様の取り組みが広がっていくのかもしれない。

 個人アカウントとは異なり、人事異動や退職によって「中の人」が交代することもある。この季節、フォロワーに卒業の報告や別れのあいさつをする公式アカウントも出てくるだろう。ツイートのゆるさ、面白さにも一貫性が必要だということを考えると、個のスキルに負うところが大きいという課題はある。さまざまなアカウントで運用ノウハウが継承され、華麗なる公式が増えていくことを期待したいと思う。

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