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【書評】孫正義の参謀―ソフトバンク社長室長3000日

そのあまりの圧倒的なスピード感にまず引き込まれる本だ。

ボーダフォン買収に始まり、光の道、311が契機となり自然エネルギーへと注力していく。そして、さらにはスプリントを買収して世界市場へと打って出ていく。

稀代の起業家である孫正義氏をそばで見つめ続けた参謀による本だけあって、非常に説得力がある本だ。ただ、著者である嶋氏がソフトバンクの社長室長になったときには孫さんはすでに雲の上の存在ではあったので、常に一定の距離感はある。

この本では繰り返し下記の言葉が語られる。

「一生の間にどんなことでも達成できる。それが誰の功績とされても気にしないのであれば(トルーマン元アメリカ大統領)」

孫さん自身は周りに感謝こそすれ、自分の功績などには一切興味がないのではないかとは思う。著者はこの言葉を自分自身の理念として何度も繰り返しているが、じつは孫さん自身がそれを一番体現しているのではないだろうか。

自分の限界を超えて、ぎりぎりまで己を追い詰めて、時には錬金術士と罵られ、311のときに100億寄付しても「売名行為」と言われ、それでも前へ前へと突き進む。その胆力と実行力は、本当に素晴らしいと思う。

我々の持つベクトルではもう測ることが出来ないくらい遥か遠くへと行ってしまっている感があるが、この本にあるようにソフトバンクの最大かつ唯一の懸念は、孫正義氏の後継者問題だろう。

誰も彼の代わりを勤めることは出来ないと思うが、そのような無理難題でも孫さんなら、なんとかして克服してしまう気もする。

「さすらいアフロ」という漫画で主人公のアフロ田中が孫正義に憧れて、なんとなく「孫正義!」「やりましょう!」とつぶやき、周囲から「つぶやくだけで孫正義みたいになれるわけがないだろう!」と怒られる場面があるが、赤の他人までもがそれほど憧れるのだから、周囲の人たちは彼のために骨身を削りながら働くのだろう。

(漫画なんですけど・・・・稀代の起業家に憧れてしまう男子像の描写があまりにリアルでおかしくて、本当に笑えます)

ソフトバンクの株式総会が「孫正義ファンクラブ」となっていて普通の株式総会で起こるような問題は一切起こらないという記述があるが、さもありなんと思う。みんな、これから孫正義氏が一体どこまでいけるのか楽しみで仕方がないのだ。

彼が見ているビジョンと我々が見ているビジョンは大きくかけ離れているので、その隙間を埋める人材はこれからも必要になっていくのだろう。すでに晩年に差し掛かっている孫正義氏の「これから」に今後も期待し、またその期待もいい意味で裏切られ、我々は驚かされ続けるのだろう。

誰も孫正義氏のようには絶対になれないが、世の中にはこういう人もいるということを知ることはとても重要だ。そういう意味で、良書だと思う。

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