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戦後70年~未来に向けた北東アジアとの関係構築を! 100の行動92 世界の中の日本編4

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初稿執筆日:2015年3月13日
第二稿執筆日:2016年10月28日

江戸時代、鎖国によって外国との交渉を閉ざし、太平の世を謳歌していた江戸幕府に対して、最初にその扉を開けに来たのはどの国かご存じだろうか?

それは北からやってきたのだ

 1770年代から松前藩に通商を求めていたロシアは、1792年にはラクスマンを根室に派遣し、正式にロシア使節として幕府に通商を求めた。これらの北からの動きに危機感を持った幕府は、近藤重蔵らに千島を、間宮林蔵に樺太を探索させ、東蝦夷地を直轄地とするなどの対策を進めたのだ。その後の幕末の歴史は、ご承知の通り1853年にペリーやプチャーチンが来航し、翌年の日米和親条約を皮切りに開国へと向かう。その近代日本の扉を最初にノックしたのは実はロシアだったのだ。

 中国とは、1世紀に倭奴国の王が後漢の光武帝から金印を授かったのが、史書(後漢書)に登場する最初の日中間の交流である。3世紀には魏志倭人伝に登場する邪馬台国の卑弥呼がいる。

 朝鮮半島とは、日本の律令国家創世期に、驚くほど積極的に関与していた。当時の朝鮮は、高句麗、百済、新羅の三国時代。日本は百済に肩入れし、百済を復興するため白村江に大軍を投入して、唐・新羅の連合軍に大敗した。

 一方、台湾とは、1593年、戦国時代に豊臣秀吉が当時の「高砂国」に使者を派遣し、1874年、近代日本最初の海外派兵となった台湾出兵が行われている。その後、1895年から1945年まで日本が統治していた。

 このように、歴史的にみて日本が世界とつながる際、地政学的に北東アジア諸地域が玄関口になってきたのである。「世界の中の日本」を考える際、北東アジア地域との関係性を抜きにしては考えられないのだ。

 これらの隣国とは、歴史が長く、緊密だからこそ、そこに極めて難しい外交問題が横たわっている。しかし一方で、長く付き合ってきたからこそ、文化的にも類似性が高く、難しいと思われる問題の解決にも希望が持てるのだ。今年(2015年)は戦後70年の節目だ。100の行動92では、この節目にあたって、未来に向けた北東アジア近隣諸国とのあり方について論じることにする。

<中国>「遠交近攻策」で大局的視点に立った外交を!

 中国はアメリカに次ぐ世界第2の経済規模を誇る大国であるだけでなく、日本にとっては最大の貿易相手国でもある。日中関係の重要性は、あえて言うまでもない。

 中国の最大の問題は、自由化、民主化、法の支配の確立を経ずに台頭を果たし、世界に大きな影響力を行使するまでに至っていることである。このため、尖閣問題や東シナ海などの安全保障上の問題から、食の安全や人権問題に至るまでさまざまな問題が生じている。

 我々はこの大国と経済など実質的な利益を実現しながら「大人の関係」を構築しつつ、長期的には法の支配や国際法の普遍的価値を共有することを目指す必要があろう。

 2014年11月7日、「日中関係の改善に向けた話し合い」において日中の4項目の一致点を合意するに至った。これは、尖閣問題以降緊張が続いた日中両国が現時点でたどり着ける重要な見解の共有だった。だが、この4項目では、あえて曖昧な表現が残されている。この戦略的曖昧性を尊重し、互いに解釈を悪用せず、日中の戦略的互恵関係の推進という目標と、東シナ海における危機管理メカニズムの構築という目的を見据えることが、日中の両国関係の基礎となっている。

 現在の日中関係は囲碁でいう「セキ」の状態だ。「セキ」とは動いた方が負ける状態をいう。自分から先に動こうとすると何かで譲歩せざるを得ず、それが国内的に難しいため、互いに動けないのだ。4項目一致で対話へのドアを開けたはいいが、互いに一歩踏み込んだ状態で睨み合っているといった状態だろう。

 この点、安倍政権の「地球儀を俯瞰する外交」は正しい姿勢だと言える。大局的観点から遠交近攻で俯瞰外交を続けて、日本にとって有利なパワーバランスを形成したうえで、中国と向き合う。民主主義の基本的価値を共有しない中国との関係構築はトップ会談を通じて行うしかないが、必要以上に譲歩して日本からトップ会談を嘆願する必要はない。

 そのためには、「遠交近攻策」をとり、アメリカ、欧州、その他の諸国と日本が緊密な関係を築き、国際社会における日本の影響力を強くする。すると、中国は日本との関係改善に動かざるを得なくなる。大局的な外交姿勢、囲碁でいえば周りの囲いが崩れた「セキ崩れ」の状態になり、硬直状態が崩れ、動きが出始めるのだ。

 近年、中国は軍事面では「アジアの新安全保障観」、経済面では「海と陸のシルクロード構想」や「アジアインフラ開発投資銀行」(AIIB)、「BRICS銀行」(正式には新開発銀行)など、スケールの大きい提案をしてきている。

 アジア新安全保障観は、「アジアのことはアジアで」「中国がアジアの安全保障を主導する」という2つが主眼で、アメリカも参加するASEAN地域フォーラム(ARF)といったアジアの既存の安全保障秩序にチャレンジするものと言えよう。AIIBやBRICS銀行なども、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、アジア開発銀行(ADB)などに代表される既存の国際金融秩序に挑戦するものだと認識されている。さらには、こうしたインフラ投資を通じて「海と陸のシルクロード」といった自国中心の経済ブロックを作ろうという構想だ。

 このため、日本は、アメリカやアジア諸国との軍事的協力関係を深めて、ARFなどの従来の安全保障体制を守るとともに、TPPへの積極的対応、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の関与継続、IMFや世銀、ADBなどへの積極関与、弱体化している西側的価値観に基づくグローバルな枠組み(WTOなど)の再構築への貢献といった外交姿勢、すなわちマルチにおいても「遠交近攻」による大局的外交姿勢が必要となろう。

本稿の初稿を執筆した前後から、日中両国関係が改善プロセスに乗っていることは、両国首脳間でも認識が共有されている。2016年9月には、G20サミット中に日中首脳会談が行われ、日中間で協力できるところは協力して両国関係の「プラス」の面を増やし、懸案についてはマネージして「マイナス」の面を減らしていくとの両首脳の共通の認識に基づく、前向きな会談が行われている。

 両国間には未だ残された課題もあり、複雑な要素の干渉があるのも確かだ。しかし、2017年には日中国交正常化45周年、2018年には日中平和友好条約40周年、さらに、2020年、22年には日中両国でオリンピックが開催される。今後そういった点を捉えて様々な面で交流を密にし、首脳同士がより頻繁に会談し、大局的観点に立って戦略的互恵関係を推進していくことが重要だ。

<韓国>「法の支配」の徹底を韓国に強調し、安全保障、経済における戦略的リアリズムによる外交を!

日韓関係の重要性も論を待たないだろう。経済的には、韓国にとっても日本にとって第3位の貿易相手国であり、日本は韓国にとって第2位の投資国でもある。文化的にも、観光的にも交流が深い。

 韓国は、自由、民主主義、基本的人権などの普遍的価値と、地域の平和と安定の確保などの利益を共有する日本にとって最も重要な隣国だが、近年懸案が続く日韓関係の問題の根本は、韓国側がこの「普遍的価値」の共有に関して揺らぎ始めていることであろう。

 特に「法の支配」が揺らいでいるのは懸念すべき状況だ。韓国には、憲法より上位に「国民情緒法」という法律が存在すると揶揄されることがある。法の支配や罪刑法定主義、時効、法の不遡及が無視され、「国民情緒」という揺らぎやすい世論に迎合して、実定法に縛られずに司法が判決を出してしまう状況だと言うのだ。

 セウォル号沈没事件やナッツリターン問題の判決であれば国内問題と言えなくもないが、昨年(2014年)、産経新聞ソウル支局長がパク大統領の名誉を毀損したという理由で出国禁止措置が出されるなどの事件は、明らかに法の支配を逸脱している。

 また、2013年、朝鮮半島の日本統治時代に日本で戦時徴用された韓国人4人が未払い賃金などの個人補償を求めた訴訟で、ソウル高裁から被告の新日鉄住金が計4億ウォン(約3500万円)の賠償を命じられる判決を受けたことなども、法の支配に反するゆゆしき事態だ。

 元徴用工の賠償請求権問題については、日韓両政府とも1965年の日韓請求権協定で、日本が韓国に無償3億ドル、有償2億ドルを供与することで、両国および国民間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記し、解決している。これを覆す判決を韓国司法が出すのは、両国の戦後処理を崩壊させるものだ。従軍慰安婦問題も同様の課題を抱えている。

 「法の支配」の徹底は、日韓関係の基礎であり 、日本から繰り返し強調しなければならない。法の支配などの基本的価値の徹底を韓国に粘り強く求めていき理解を得れば、曲がりなりにも民主主義という価値観を共有する韓国とは、草の根の交流、民間交流が奏功する素地があろう。

 他方で、朝鮮半島情勢の不安定化に備えた日米韓3カ国の連携の重要性も、日韓の経済関係の重要性も不変だ。日韓関係はこうした安全保障、経済などにおける戦略的リアリズムによって推進されるべきであろう。

 2015年以降、北朝鮮による核実験や累次の弾道ミサイル発射は、これまでとは次元の異なる新たな脅威となりつつある。北朝鮮問題に連携して対応していく上でも、未来志向で強固な日韓関係を築いていくことがますます重要だ。

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