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大本営産経新聞発表 AAV7は国防の切り札だ?

例によって産経新聞杉本康士記者の「自衛隊は常に正しい」という、大政翼賛会的な記事です。


>AAV7が米軍に配備されたのは1970年代で、古い装備であることは否めな
い。潮位によってはサンゴ礁が多い沖縄の離島に上陸できず、水上速度(時速13キロ)
も十分ではないため、国会審議では野党議員から「相手は火器を持っている。ぷかぷか浮
かんでいたら、的になってしまう」と批判されたこともあった。

と一応批判的な記述があります。ですが、


> だが、AAV7が着上陸を想定しているのは、離島を占拠した敵が待ち構える“激戦地”だ。

 つまり、尖閣諸島などではなく、宮古島や沖縄本島が占領されるような事態でしょう。それが今喫緊に想定すべき事態でしょうかね。いま最大の懸念はもっと小さな島をめぐる紛争でしょう。
 今日出た宿題もやらない中学生が大学入試を心配するようなものです。


> AAV7のように装甲されていないエアクッション型揚陸艇「LCAC(エルキャッ
ク)」だと、上陸しようとする際に敵弾の餌食になり、航行不可能となりかねない。ヘリ
コプターで装甲車を運ぶこともできるが、敵軍にとって上空の標的が狙いやすいことは言
うまでもない。陸自関係者は「水陸両用車がなければ、すべての離島に部隊を置くしかな
い」と語る。

 じゃあ、なんでLCACにAAV7が搭載できるような改造を施しているんでしょうか。途中までLCACで運ぶならば、むしろリーフや防潮堤の踏破能力の高いバイキングのほうがまともな選択じゃないでしょうか。ところが陸幕は他の水陸両用装甲車をまともに評価すらせずに、折木元統幕長が言ったからと、思考停止でAAV7の採用を前提で話を進めてきました。

 AAV7の導入は唯一の正しい選択であるという願望をもとに、あれこれ屁理屈をならべてそれを正当化しているとしか思えません。

>陸自関係者は「水陸両用車がなければ、すべての離島に部隊を置くしかな
い」と語る。

 この発言ををした「陸自関係者」は余程軍事的な素養のないでしょう。普段「アサヒ芸能」くらいしか読んでいない幹部じゃないですかね。世の中にAAV7以外の水陸両用装甲車が存在しないとでも思っているのでしょう。また揚陸作戦にはヘリ空輸の可能な装甲車輌を組み合わせるという発想もありますが、陸幕ではそのようなリサーチもやっていないようです。

 まあ富士学校ですら、富士調査研究合同で堂々と業者の団体が作ったレポートのカーボンコピーみたいなものを、自分たちの研究でござい、と発表してているくらいです。まあ、確かに恥ずかしくてマスメディアの取材を受けないわけです。


>中国の強引な海洋進出が懸念されるなかで「今そこにある危機」に対
処するため、AAV7に乗る水陸機動団は、文字通り背水の陣で修羅場に臨むことになる。


 いや、まるで戦時中の御用ニュース映画のアナウンスのような曲筆舞文(笑

 水陸両部隊編成にあたって、陸幕はまともなリサーチなどしておりません。単に米海兵隊の真似をすればいいや、というレベルです。


 本来ならば、より陸自の水陸両方部隊に近いであろう、英海兵隊や諸外国の水陸両用部隊を研究、それも実地に視察ぐらいすべきところですが、何もやっていません。

 仮に島が占領された場合の偵察の手段すら、特殊部隊の投入に必要な装備を含めて満足にありません。
 情報収集もしないでいきなり強襲上陸でもするのでしょうかね。まあ、血沸き肉踊るシチュエーションでしょうけれども死屍累々ですよね。陸自はまともなファーストエイドキットすら持っていないから、大戦中の万歳突撃のような有り様になるでしょう。産経新聞的にはそれが「美談」になるのでしょうが、現場の隊員たちはたまったものじゃないでしょう。

 しかもAAV7にしても繰り返し申し上げておりますが、まともな選定をしておりません。
 そもそも水陸両用装甲車の運用など、これまたまともに調査なんぞをしておりません。

 本来4年ほどかけて調査し、採用をするかしないかを決定するはずが、それが半年に縮められ、今年の予算で要求した指揮通信車、回収車は使用されないまま、AAV7の採用が決定されました。
 試験に供されたのは4輌のAPC型のうちの2輌だけで、南西諸島でまともな運用試験すらしていません。

 試験を端折ったのは、アメリカ様に言われたからだと陸幕長も防衛大臣も申しておりました。当事者意識が無いんじゃないでしょうかね?
 まともな試験もしないで、えいやあで、血税を使って装備を買うんですよ?無責任とは思いませんか。
 何か面妖ではないか、と疑問を持ちたくなるのがブンヤのネイチャーじゃないでしょうかね?

 本来は海自と合同でキチンと時間とカネをかけて、情報収集を行い「水陸両用部隊」のコンセプトを固め、その上で編成と運用を研究し、必要と思われる装備を各種集めてトライアルを行うべきです。

 海自がどんな揚陸艦を何隻揃えるかも決めていないのに、AAV7だけ買ってどうするんでしょうかね。しかもまともなリサーチを全くやっていない。「水陸両用部隊」とは米海兵隊のデッドコピーを作ればいいと思っているわけで、素人の思いつきレベルです。それに多額の税金が浪費されるわけです。
 中期防で52輌もAAV7を買っても当分運ぶフネすらない。陸で遊ばせておくだけです。

 しかも杉本記者が想定しているような「大戦争」となれば揚陸艦の数は二桁は必要でしょう。そこそ戦車を含んだ連隊戦闘団を何個も一度に運び、かつそれらを動かすための弾薬、燃料、食料なども同時に揚陸する能力が必要とされます。そんな想定を自衛隊がしていますか?


 率直に申し上げて、AAV7は島嶼防衛にも抑止力にも殆ど役に立ちません。しかも調達コストも運用コストも高く、維持のための固定費が今後水陸両用部隊の足かせになるでしょう。
 どうしても導入してみたかったならば、10輌ぐらい入れて使ってみればよかったでしょうに。
 初年度に30輌も買ってしまって、使い物にならなかったらどうするんでしょうかね?
 メンツがあるから意地でも使い続けるのでしょうが、不要な装備の維持と運用に大金を垂れ流すことになります。

 エラい人の思いつきによる鶴の一声で、ろくな試験も無く、しかもその試験すらオミットされて装備調達が決定することに、産経新聞は危機感、あるいは疑問を持たないのでしょうか。


 情報はまず疑うのがブンヤのイロハのイ、です。それをやらずにまず信じるところから始まるのは「宗教」です。 であれば産経新聞の報道姿勢は聖教新聞と同じ、ということになります。

 大変失礼だとは思いますが、杉本康士記者は以下のような人たちと同じレベルじゃないでしょうかね。
 
「官公庁HPしか信用しない」“マスゴミ批判”するネット依存大学生の言い分
http://dmm-news.com/article/919309/

>日本人なら国にもっと誇りを持つべきです。国家や自衛隊を貶めるマスコミはなくてもいい存在です。あと権力監視と言いますが、国は各省庁や自治体で今は皆、どこもHPを持ってますよね? それを情報の受け手である国民が閲覧できればそれでいいではないですか?

>「左翼ならともかく国がいっているんです。だからいいんです。もし捏造とかあればネット民は黙っていません。プロのジャーナリズムよりも上質な情報分析力がネット民にはありますから」

>「産経新聞だけは信頼できます。自衛隊を貶めることはないので。購読しています(註:購読料を支払い定期購読しているのではなく、ネット上での記事を読んでいるという意味)。自衛隊を批評する記事があっても、産経新聞なら建設的な批評です。でも朝日や毎日は叩くための批判で、議論に値しませんね」

 唯一の違いは匿名で書いているか、実名で書いているかの違いだけのような気がしますが、気のせいでしょうかね?

 はじめから採用が決まっている八百長を両手を上げて褒めるのがジャーナリズムじゃないでしょうに。

 ぼくから見れば産経新聞の勇ましい「愛国無罪報道」は自衛隊を弱体化させて、「支那」を利しているようにしか見えません。ぶっちゃけた話「利敵行為」です。仮想敵を利するのが愛国報道なのでしょうかね?

 実際の戦争を戦争ゴッコ程度にしか思っていない記者が、軍事的な常識を無視し、あたら威勢のいい言葉を弄して世論を誘導するのは極めて危険であると考えます。



以下の記事を寄稿しました。

東洋経済オンライン
中国がスーダンの武器産業を支援する理由
急激に勃興する武器輸出大国の秘密とは?
http://toyokeizai.net/articles/-/62626

日本の武器輸出戦略には致命的な弱点がある
国際見本市で中小企業を積極支援するべき
http://toyokeizai.net/articles/-/62456?cx_click_topnews=article_header

Japan in Depth
【日本の「文民統制」は「官僚統制」】~政治が軍を統制しない国、日本 1
http://japan-indepth.jp/?p=16012

アブダビのIDEX 2015、IWAに関しては東京防衛航空宇宙時評でレポートしていきます。
http://www.tokyo-dar.com/






今も昔も変わらない「軍部」の意識。杉本記者に是非読んで頂きたい。

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