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【詳報】「今、日本は戦後最大の危機を迎えている」大江健三郎氏、鎌田慧氏が会見

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質疑応答

ー東京地検が東電の経営陣の不起訴を決めたタイミングについて。一回目がオリンピックの開催地が決まろうとする時期、もう一回は総選挙の直後でした。何か政治的な配慮があったと思いますか。

大江:もちろん彼らは政治的な言葉を発している。日本の裁判官たちも、あるいは官僚たちも、政治家とともに、非常に不思議なほど、安倍政権のやり方を支持するほかない、というところに固まっていて、原発の再稼働に向かって、あらゆることよりもそれを第一目的としている。すなわち今や我が国は原発再稼働に向かっての動きにおいても、非常に危険な状態を迎えている。

これを日本人が、我々が集会や運動によって作りかえなければいけない。
今、原発事故の大きな悲劇の後で、どのように人間的なものを回復していくかを中心に考えて、それ以外のことは二次的なものとする、そしてその原則に従って我々が今取ろうとしている態度はすなわち、ともかくも原発は再稼働させよう、それだけの目的で全日本的な宣伝活動が行われ、オリンピックの決定も含めて明るい要素があるかのごとく振る舞おうとしているのは間違っていると。
その大きい大きい一番の間違いがわかるのは次の原発の大事故がおこるときでしょうが、そのときは我々の未来はないんですから、芸術はないんですから、今の政府の原発に対する態度を根本的に改めさせないといけない。

そのために唯一あるとすれば、選挙によって完全に安倍を打ち倒すということですが、その希望はこの2年ほど、なくなってしまっている。まさに我々は窮地にある。しかし、そういう窮地にも、強い認識でもって新しい動きをはじめなければいけない、それが一番大切な問題だと、そう考えたい。
皆さんからの知恵を頂きたい、励ましを頂きたいと考えている。

ー原子力規制委員会は、原発の現場で働く人材について、バックグウランドのチェックを義務付けないとしているようです。極端に言えば、犯罪者でも仕事ができる状況になります。ISILが日本をテロの対象とすると言うような状況の中、これをどう思いますか。

鎌田:これは物理的に不可能な状態になっています。いま、第一福島原発の廃炉と修復作業では5,000人から6,000人が働いていますし、これからオリンピックの工事で労働力をかき集めなければならない状況なので安全に手が回らない状態です。

やはり日本は遅れてきた資本主義ということがありまして、とにかく追いつけ、追い越せで頑張ってきたわけなんで、基本的には国の政治は民衆にすこしくらいの犠牲があっても、国益というか、国の富、名誉、権威が先行しているということが続いています。戦争責任をきちんととらなかったということもありますし、やはり、これからの問題は、経済優先という中で、人間性のある社会にどうしていくのか、パラダイムを変えていく、それが問われていると思います。

ーサイードの話には大変感銘を受けましたし、社会に訴えかけて作り変えければならないというのは素晴らしい話ですが、福島で一生懸命に生きようとしているひとたちにとっては、インテリたちが自分たちの頭の上でやっている議論に聞こえてしまうのではないかと思います。

また、復興を実現するために、彼らには何が必要だと思いますか。


鎌田:生活に対するリアリティが政治家に少ないし、まして安倍内閣には、人々の生活をどうするのかという発想がないわけです。国の名誉とかそういうことしか無い。たとえば強制移住をさせられている人たちの精神的なダメージについての思いが全くない。どういうふうに還すのかというイメージもない。補償金を払えばいいということになっている。そういう政治家としての人間性が問われている。

どういう解決策がいいかと言えば、やっぱり政治家たちが仮設住宅に行って、丹念に人々の話を聞いて、それを総合して政策に結びつけていく。
今は機械的に、とにかく原発から復興したということを証明するために無駄な除染の作業をしている。果たして住めるのかどうかということを、人々の話をきちんと聞きながら、新たな所に住むようにするとか、明確なイメージを出すのが精神的に一番安定することだと思います。

私たちの運動は、原発反対とか再稼働運動とか反対の運動で精一杯でして、被害者をどう救済して、地域で人々の意思の沿った復興をしていくかというところにまで手が回らない。これは政治家の仕事なんですけど、ですから、原発反対の運動ともう少し後ろを向いた、ゆるやかな運動をどういう風にしていくかのが今問われている課題で、4年目の課題はそこが重要なものになってくると思います。

ー私はインドネシアの記者ですが、今のインドネシアの経済はものすごく順調で、政治家も原発を検討しています。その件について、できれば大江先生からメッセージをいただきたいと思います

大江:非常に単純なことで、今現在、日本の政府、日本人、日本社会が新しい原発の開発を世界に求めることはできない。
いかなる国に対しても、我々は原発は人間の手段としてはもう終わったんだと言い続けたい。

今までやってきた経済的繁栄があるから、そういうものがあるから、そういうことを言っているんじゃないか。"我々が貧困を乗り越えるためにどうするかを、あなたは何も考えないのか"、と言われると思います。

しかし私は、日本も悪い状態そして、世界の国々には確かに原発を必要としている人々がおられる。しかしそこで踏みとどまって、原発というものを我々の文化から押し戻してしまう。それが私の主張で、日本人として世界に何か最後にいうことがあるとしれば、そのことなんだと。そのことを私の「最後のスタイル」にしようと。 それはもちろん、あらゆる意味で、いろんな批判がありうるわけで、インドネシアの人々からの批判も確実にあるでしょう。

原発がない社会というものを実現するほかない、それが次の世代に対する一番根本的な態度であって、それを修正して次の原発に希望を託すということを私をしない、少なくとも私はできない。そこで声を発し続けるというのが、私が今やれるかもしれない、唯一最後の仕事として思っていることです。

ー東電の経営陣は不起訴になりましたが、福島原発を建設した人たち、許可を出した人たちの責任も追及するべきではないでしょうか。何か犯罪的な行為があったかもしれません。

鎌田:日本の原発はご存知のように国策民営、政府の方針に従って民間が儲けていくということで、明治政府以来一貫しています。政府が資金を出して産業を振興、誘導する。原発もそうなので、国の方針ですから責任はない、従っただけだという考えが強いわけます。

メーカーの責任を弁護士さんも検討してみたようですけれど、なかなか製造者の責任までは裁判では争えない。これは日本の司法の問題なんですけれども、事故を起こした経営陣の責任でさえ追及できないですから、それを作ったメーカの責任の追及までは残念ながらできないという状態です。行きたいんだけど、状況を見ると行けないというまどろっこしい状態です。

政府の責任を追及することがなかなか今までないわけで、これはひとえに戦争責任の追及がうやむやになってしまって、追及できたイタリアやドイツと違うところですが、最高責任者が追求しきれなかった。責任はどんどんどんどん下の方にいってしまう、これがこの国の現状で、あまりこれ以上は恥ずかしくなるので言いたくないですが(笑)

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