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市橋達也被告に対する判決、報道について感じたこと諸々

先週、イギリス人英会話講師殺害した罪などに問われた市橋達也被告に対し、求刑通り無期懲役の判決が出ました。
遺族が満足してるといってるにも関わらず「死刑にしろ!」と怒る人々がいるようですが、そういう人々は普段言ってる「死刑は遺族のため」との理由は実は都合のいいおためごかしで、本当は自分の感情の満足のためなのだとわかりますね。
それにもし被害者が中国人や韓国人や在日コリアンや生活保護受給者などが被害者だったら、果たして死刑にしろという声がこれだけ大きかったかな、と想像したりもします。

死刑の次に重い無期懲役でもまだ「日本は被害者より犯罪者を守る犯罪者天国、犯罪者にどこまで甘いんだ」とのたまう人々もいます。
そもそも先進国と呼ばれる国で死刑を存置しているのはアメリカと日本しかないのに、一体どの国と比べて甘いと評価しているのでしょう?
まさかアジアで非民主主義国家と評価されてる国や石打刑があるイスラム国家と比較して甘いと言ってるのでしょうか?そういう人権後進国言われる国々と肩を並べたいのでしょうか?

また、無期懲役というと「10年もすれば出てくる」みたいなことを垂れ流す人が必ずいるのですが、過去記事にも書いたように、無期懲役では仮釈放になる方が少なくしかも仮釈放まで平均25年以上かかっています。10年たてば「法律上は仮釈放が可能になる」だけで、10年そこそこで誰でも簡単に仮釈放されてるような印象を与えるのは事実に反するデマです。
無期懲役の仮釈放の運用状況についてこちらをご覧ください。
http://www.moj.go.jp/content/000057318.pdf

さて、47newsの公式アカウントが上のようなツイートを堂々と流したというのですから驚きです。刑事司法に対するこの国の無理解度はここまでひどいのかと脱力しました。

◆J-CASTニュース
「日本で無期懲役とは事実上の無罪放免」 「47NEWS」不適切ツイートで謝罪2011/7/22 18:42

(引用開始)
問題となっているのは、47NEWSの公式アカウント(@47editors)。自己紹介では「公式キャラクターのてくにゃんだにゃん」と名乗っており、語尾に「にゃん」とツイートするのが特徴だ。

「このツイッターは47NEWS編集部の記者とスタッフによるものですが、会社の公式な見解とは必ずしも一致するものではございませんのでご了承下さい」
との但し書きはあるものの、報道機関としては不適切な書き込みに、批判が殺到している。

特に問題視されているのは、英国人英会話講師リンゼイ・アン・ホーカーさんが殺害された事件で、殺人などの罪に問われた市橋達也被告(32)に対して千葉地裁で行われた裁判員裁判をめぐるツイートだ。

例えば、遺族が死刑を望んだことについては

「死刑のない国の遺族がこの発言をしたのは重いニャ! やはり死刑は世界に誇れる極刑ニャーッ!」(2011年7月11日)
と肯定的にとらえる一方、検察が無期懲役を求刑したことについては、「遺族は死刑を求めているのに、何故検察は無期求刑なのか? 検察は不誠実だニャ!」(7月13日)と非難。

7月21日に無期懲役の判決が下った後は、

「リンゼイさんのお父上、申し訳ないが日本で無期懲役とは事実上の無罪放免なのですにゃ…」
と、明らかに事実と異なるツイートをした上、弁護団を「人殺しを自分の名誉と共に必死になって守らなければならないなんて、弁護士も因果な商売だニャー」と罵倒した。
(引用ここまで)
いくら会社の公式見解ではないとはいえ、47newsのジャーナリストがこんな認識だとは絶句です。
死刑は世界に誇れる極刑?今や死刑廃止は世界の趨勢、先進国では死刑は姿を消し、EUでは死刑廃止が加盟の条件です。国連人権規約委員会からは再三死刑を見直すよう勧告されているというのに、世界に誇れる?
まるで独裁体制は世界に誇れる政治体制だ、と言うのに匹敵するKYぶりです。

「申し訳ないが日本で無期懲役とは事実上の無罪放免なのですにゃ…」なんて明らかな嘘はジャーナリスト失格。

「加害者の味方をする弁護人はなど加害者と同罪だ」 と刑事弁護人に石を投げる論調は世間に広く見られますが、弁護を受ける権利は憲法上の基本的人権です。しかも刑事司法は国家権力が剥きだしにされる場面ですから、そこでの被告人の人権保障はフランス人権宣言にも記載されているいわば古参の人権カタログです。
ところがこの憲法上の元祖基本的人権についてジャーナリストからしてこれでは・・・。一体どこの非民主主義後進国なんだろう、少なくとも先進民主主義国の理解ではありえない、とため息が出ます。

また、日テレニュースは『無期判決の市橋被告、控訴判断「考えたい」』というニュースを流しましたが、控訴は被告人の当たり前の権利行使です。控訴するかどうかを考えたい、ということがニュースになること自体奇妙だと思うのですが、何故ニュースになるのでしょうか。
それは控訴するなんて反省してない証拠、けしからん、という暗黙の前提が読み手にあるからこそニュースになるのです。
これについては猪野弁護士のこちらのエントリーをご覧ください。
http://inotoru.dtiblog.com/blog-entry-348.html

日本は非民主主義後進国並みに人権教育・法教育やメディアリテラシー教育が行われていないも同然ですから、刑事司法における基本的人権についてこのような恥ずかしい無理解が広まるのも無理からぬ事だと思います。嘆かわしいことです。
国民一人一人が人権について深い造詣を持たなくてはその国の民主主義のレベルは落ちる一方ですから、先進民主主義国と呼ばれる国では民主主義教育、人権教育に力を入れています。 もちろん刑事裁判における被疑者被告人の権利についても学びます。
だから黙秘権や弁護を受ける権利をずうずうしいなどと唾棄するとか、控訴するのを非難するとか、ありえません。勿論「被害者の人権より加害者の人権の方を守るのか」などと被害者の人権と被告人の人権を比較するというピントはずれな非難もありえません。

高度な民主主義教育、人権教育を行う努力なしに基本的人権が保障された高度な民主主義社会は維持できませんが、日本では教育においてそのような努力は全くなされていません。
その結果が控訴や弁護を受ける権利という被告人の当然の権利行使を非難するという状況になるのです。


ところでおまけ。
市橋被告の事件では弁護人は「殺意はなかった。従って殺人罪は不成立、強姦罪と傷害致死罪だ」と主張していたことについて、弁護士でもある某知事に話を聞いてみました。

――弁護人によれば、被告人には殺意がないから殺人ではなく傷害致死だとのことですが・・光市母子殺人事件でもこれと同じ主張が弁護側から行われましたね?

某知事:首を絞めて殺しておいて殺意がない?けしからん!何言ってるんだ弁護人は!これも光市事件同様、弁護士が中心になって主張を組み立てたとしか思えない!許せないと思ったら、弁護士会に懲戒請求をかけてもらいたい!

――しかしですね、弁護人が被告人に有利になるように弁護するのは刑事弁護では当然の責務かと・・・弁護士であるあなたが刑事弁護制度の趣旨を根底から覆すような発言していいんですか?

某知事:何を言うか!最高裁はこういうけしからん弁護人に懲戒請求をどんどんかけろという私の発言は、表現の自由の範囲内で何の問題もないと言ってるんだぞ!つまり、こんなとんでもない殺人犯を「殺意がなかったからッ傷害致死にしかならない」なんて弁護する弁護人などとんでもない弁護人だ、懲戒請求されての仕方がないという僕の主張が正しいと最高裁が認めたも同然なのだ。
選挙で選ばれた俺様の主張は民意だから、僕のこの意見に異議を唱えるということは民意に敵対するということだぞ!そして最高裁の判決に逆らうということだぞ!
ですから心ある皆さん、この市橋被告の弁護人はけしからんと思った人はぜひ懲戒請求をかけてほしい!それが民意です!!


・・・てなインタビューになってもおかしくないですね

はは・・笑えない。

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