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お金稼ぎは生きる基本 小学生はどう学ぶ? - 岸 裕司

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息子が秋津小学校の6年生のときのこと。

 私が家に帰るなりニコニコして寄ってきて、「お父さん! ビール、飲むんでしょ!」といいながら、冷蔵庫から缶ビールを持ってきました。

 ふだんは見せないサービスに、私は気を良くしながらもなにげないふりをしていました。

 しかし息子は、私の横から離れずに早く飲むことをうながしているようでした。

 「なんか、こんたんがありそうだな?」と、思いましたが特には聞きませんでした。

 1本目が空くころ、待っていたように2本目を持ってきました。

 私はさすがに「なんだ?」と聞きました。

 しかし、息子はうれしそうな顔をしながらも「べつに!」と、いって応えてくれません。

 でも、「お父さん! 空き缶はぜんぶちょうだいね!」と、いいました。

 私は、工作かなんかで使うのだろうと勝手に思いました。

 それが大間違いであることが、翌朝から察せられました。

 今回は、てなことで始まった、秋津っ子の金稼ぎのお話です。

空き缶集めて、ユニフォームを新調!

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秋津まつりで子どもが持参した不用品を売り買いして現金のやり取りをする秋津っ子バザーの受け付けをする私

 さて、翌朝から息子はいつもより早く起き、「いってきま~す!」の元気な声とともに、ありったけの空き缶を抱えながら出かける毎日が続きました。

 こんたんはすぐにわかりました。

 ワイフがお母さん仲間から仕入れた情報によると、男子のバスケット・ボールクラブ(男バス)のみんなで空き缶を集めて売って、試合用の新しいユニフォームを新調するとのことなんです。

 これまでのユニフォームは、代々の先輩から受け継いできたのでかなり古くなっていたことから、だれとはなしにいいだして空き缶集めが始まったとのこと。

「空き缶を集めて売って、ユニフォーム代をいくら稼ぐつもりなんだ?」と、私。
「レギュラーメンバー用全部だから、10万円位らしいわよ!」と、ワイフ。
「そりゃ、無理だよ! 10万円分の空き缶を集めるなんて! 集めているあいだに卒業しちゃうよ!」と、私。

「でも、子どもたちは一生懸命に、朝と放課後に秋津のまち中の空き缶を拾って集めているのよ! やめて、とか、無理だわよとか、いえないじゃない!」と、ワイフ。
「そりゃ、そうだよなぁ」と、私も考えこんじゃいました。

 ほかの親たちも、このあたりの事情は知っているとのこと。

 夫婦してうれしくも考えこみながら、結局「せっかく一生懸命にやっているんだから、しばらく見守っていよう」「助け船が必要になったら、その時にはほかの親たちとも相談して考えよう」ということになりました。

親たちができること

 さて、息子のビールのサービスは毎晩続きます。

 息子のサービスのこんたんを知らない振りをするのもけっこう大変でした。

 子どもたちが20日ほどかけて集めて学校に山ほど積んだ空き缶を、廃品業者の方にきていただいて売りました。

 しかし、やはり全部で2000円ほどにしかなりませんでした。

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2年生が生活科の授業で育てた花の苗を秋津小学校コミュニティルームの廊下に置いて大人に販売するコーナー

 子どもたちはそうとうに気落ちしたそうです。

 息子はだまっていましたが、がっかりした様子は手に取るようにわかりました。

 そこで、親たちの出番です。

 集まって会議をしました。

 その結果、このような方向を確認しました。

1.子どもたちのこれまでの自主性を尊重する。
2.その上で足りない分を、親子で10月の秋津まつりになんらかのお店を出して稼ぐ。
3.それでも足りなければ、その時は親が負担することを含めてあらためて考える。
4.その際、親の会が責任を持ち、男バス顧問の先生にはオブザーバーとして見ていてもらう。

 この親の会とは、学校のクラブ活動のそれではなく、社会体育団体として上部団体に登録している男バスの親の会のことです。

 試合や他校に出向いたりが休校日に多いことから、親や地域の人が代表になり責任も持つ会です。ほとんどの大人のメンバーは変わりませんが、先生への休日保障などの配慮のためにそうしています。

秋津まつりで親子で稼ぐ!

「いらっしゃい! いらっしゃい!」
「バスケットをやりませんか~! 1回10円だよ~っ!」

 子どもたちの元気な呼びこみのかけ声が、晴れわたった秋津まつりの会場に響きます。

 子どもたちは、手づくりのミニ・バスケットボールのお店を開店し、友だちを誘い込んでいます。

 小さいボールを、バスケットの網に投げ込む簡単なゲームを考案しました。

 ボールが網に入ったら「ナイスシュー!」と褒め言葉を発しながら、親たちがどこからか集めてきた景品を、シュート数に応じてあげています。

 見ていると、投げる小さなお客さんの足元には何本かの白線が引いてあり、低学年の子どもは前の線から、高学年以上は後ろの遠い線から投げるように差別化しています。

 6年生ともなると、お兄ちゃんらしくなり、小さい子に対する配慮の気持が自然に出てくるのでしょうか。

 顧問の若い女性の先生も、楽しそうに子どもたちと一緒に「○○ちゃん! やらない?」などといいながら誘い込んでいます。

目標達成!晴れてユニフォーム新調

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2年生が育てた花の苗を秋津っ子バザーでそろいのハッピを着て販売する様子

 さて、そのとなりは稼ぐ本番場所。

 親たちのお店コーナーです。

 相談の末に利益が大きいとのことから決めたうどんや手づくりクッキー、元手がタダのバザー品の販売などを行なっています。

 子どもたちの勢いに乗せられて、どこで確保をしたのかわらないのですが、かなり高価そうな品も並んでいます。

 「ここで稼がなければ、かわいい子どもたちのユニフォームは買えない!」「ガンバルゾー!」との親たちの想いの熱気が伝わってきます。

 で、子どもも親のコーナーも完売し、楽しいまつりが終わりました。

 売上を締めてみると、なんと、純益で10万円をはるかに越えていました。

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ビオトープ改修の資金にするために校庭のイチョウの樹から落ちてきたギンナンを集めて洗い仕分けする秋津っ子

 バンザーイ! バンザーイ! やったね、子どもたち! やったね、お母さん! お父さんたち!

 てなことで、めでたく目的のユニフォームを新調することができました。

 新調のユニフォームの胸には、秋津の象徴のとんぼのマークとAKITSUの文字がまぶしく輝いています。

 立役者の6年生は、卒業までの何回かの試合にこのユニフォームを着ることができました。

 一緒に稼いだ後輩の4・5年生は、6年生をいっそう慕うようになりました。

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