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地方議会の「土日・夜間開催」 ~日本のど真ん中の千代田区から実現できないか

原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】

地方議会はこのままでよいのでしょうか?

昨年は、号泣議員やセクハラ野次問題など、地方議員の質が問われる事案が続きました。「あまりに低レベル」と感じられた方が多いことでしょう。しかし、そんな議員たちを選んだのは、私たち有権者です。ただ、「ダメだ」と言っているだけでは、問題は解決しません。

4月の統一地方選挙が近づく中で、どうしたらよいのか、改めて考えるべきではないでしょうか。

2月26日、「地方議会を変える国民会議」という団体を、筆者も参画し、立ち上げました。

26日夕方に半蔵門で行なわれたキックオフ会合には、堺屋太一氏(作家、元経済企画庁長官)、屋山太郎氏(政治評論家)、佐々木信夫氏(中央大学教授)、岸博幸氏(慶應義塾大学教授)、藤原里華氏(プロテニスプレーヤー)らが参加。また、ビデオメッセージを寄せた竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授、元総務大臣)ほか、20人を超える発起人が名を連ねました。

ポイントは、結論から先にいえば、地方議会の「土日・夜間開催」です。

欧米各国の地方議会は、「土日・夜間開催」で、普通の人が仕事をもったまま議員になることが当たり前です。一方、日本の場合は、「議員=特殊な仕事」です。議員になるといったら、勤めていた会社は退職し、すべてをなげうって立候補することが一般的です。これは決して世界標準ではありません。そして、「議員=特殊な仕事」となっているが故に、議員になる人材の幅がごく限られ、多様性や質を損なっているのではないか、ということです。

こうした問題提起は、かなり以前からなされています。例えば、政府の地方制度調査会(総理大臣の諮問機関)では、2005年に、「休日、夜間等に議会を開催」「勤労者が議員に立候補でき、また、議員として活動できるような環境の整備」を進めるべきとの答申が出されました。しかし、10年経っても、何も進んでいません。

「議会は平日昼間にやらないといけない」と法律で決まっているわけでも何でもありません。それぞれの議会で、「土日・夜間開催」と決めればできることです。しかし、現実の地方議会では、これがなかなかできないのです。

できない理由は、地方議員の現状をみればわかります。

「地方議会を変える国民会議」の資料で、現状を整理していますが、簡単にご紹介しておきましょう(資料は以下のサイトでご覧いただくことができます)。

日本の地方議員は、総数34,879人(都道府県:2,739人、市・特別区:20,425人、町村:11,715人)です。議員たちに報酬などの形で支払っている総額は、試算してみると、2,690億円(報酬、期末手当、政務活動費、費用弁償・諸経費の合計)に達します。例えば、ゲームソフトや携帯電話向けゲームの市場規模は0.2~3兆円ですから(経済産業省ホームページより)、これに匹敵する、かなりの規模の“産業”なわけです。

また、一人あたりの報酬等の合計額(年額)は、試算によれば、都道府県:2,026万円、市・特別区:833万円、町村:370万円です。これは、多くの国の地方議会と比べると、かなり突出しています。例えば、イギリスの地方議会は一人あたり支払が73万円、ドイツは50万円程度、フランスの基礎自治体はほぼ無報酬です。アメリカも、100万人以上の都市を除けば、交通費や日当程度(50万円程度)とされています。(いずれも佐々木信夫『地方議員』PHP新書より。)もちろん、こんな金額で生活はできませんから、ふつうの仕事をもったまま議員を務めることが当たり前なのです。

世界的に異常な金額を支払っていても、金額に見合う成果があがっているならば、まだよいでしょう。現実はどうでしょうか? 

議会の平均会期日数をみると、都道府県:98日、市・特別区:85日、町村:44日です。キックオフ会合で佐々木教授も指摘されていましたが、一日当たりこれだけの金額を稼げる人は、日本にそう多くいません。

もちろん、仕事の成果は、日数がすべてではありません。そこで、実質的な活動ぶりはどうかというと、

・議員提案の政策条例が一つもない「無提案」議会が91%
・首長が提出した議案を全く修正・否決していない「丸のみ」議会が50%、
(2011年朝日新聞アンケートによる)
などといった状態です。つまり、到底機能を果たしているとはいえない議会が大半なのです。

一方で、90日程度とはいえ、これが平日昼間に開催されますから、ふつうの仕事をもった人の兼職は難しくなります。「議員専業」が多くを占めるわけです。

この結果、日本では、地方議員になることは、多くの場合は仕事をやめ、高いリスクを背負って、「政治」という特別な世界に飛び込むことを意味します。これは、ほとんどの人にとって、およそとりえない人生の選択肢です。「議員=特殊な人」になってしまうわけです。

もし、多くの国でなされているように、地方議会は「土日・夜間開催」にし、ふつうの仕事のある人が地域貢献の一環として(いわばPTA活動や地域活動などのように)、ふつうに務めることが当たり前になったら、どうでしょうか。もっと多様な知識・経験・能力のある人材が参画し、議会の機能を高めることができるのでないでしょうか。

一方で、ふつうの仕事のある人が兼務するならば、報酬等の額はずっと少なくてよいのでないでしょうか。

これが私たちの問題提起です。(提案の詳細は、前記のウェブサイトをご覧ください。)

議論しているだけでは、10年経っても進みません。どこかでまず、具体的に実現してみることが必要です。

そこで、私たちは、まず日本のど真ん中の千代田区で、区議会の「土日・夜間開催」を実現することを提案しています。

千代田区には、永田町・霞が関・丸の内・大手町はじめ、日本の政治・経済・文化の中心がすべて集まっています。こうした特別な場所だからこそ、先端的な変革を実現できる可能性が十分あります。そして、キックオフ会合で岸教授も強調したように、こうした特別な場所だからこそ、その効果と意義も極めて大きいと考えられます。これまでならば決して議員にはならなかったような人たちが、「土日・夜間開催」を前提に参画することで、議会と地方行政を大きく転換できるはずです。

「地方議会を変える国民会議」は、特定の政党や党派に与するものではありません。政党・党派を超えて、問題意識を共有できる方々とともに、「土日・夜間開催」を実現したいと考えています。当面は、

・これまでならば決して議員にならなかったような人たちに、議員兼務という可能性の検討を呼びかける
・企業の経営者などに、自社の役職員の議員兼務を認める(さらには、地域貢献の一環として奨励する)よう呼びかける
・現職の地方議員を含め、できるだけ多くの方々との意見交換の場を設ける

といったことを進めていくつもりです。

ぜひ、一人でも多くの方々に、この運動にご賛同・ご参画いただければ幸いです。

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