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10年国債入札が低調となった理由

「日銀トレード」とは比較的最近生まれた言葉である。これは国債のプライマリー・ディーラーを中心とするいわゆる業者、それは主に証券会社や銀行となるが、入札で国債を大量に仕入れ、それを若干でもプレミアムを乗せて日銀に売却するという手法である。もちろん日銀はあくまで実勢価格で国債を買い入れているわけであり、この手法が成り立つのは国債の相場が右肩上がりでじりじりと上昇してきている場合に限る。

もちろんこれは日銀の買入がなくても通用する。バブル期の株のように買えば上がるような相場であれば、買い回転が効く。国債市場では1987年の債券市場のバブル時、さらには2003年の6月あたりまでのVARショック前の国債市場もそうであった。前者は大手証券中心に、後者は大手銀行中心に仕掛けられていた。

今回も一部大手証券や大手銀行を中心に右肩上がりの相場が仕掛けられていたとの観測もあるが、国債を入札で購入し、それをより高く日銀に売却して益を稼ぐという手法が通用していたことは確かであろう。それが結果として、1月20日の10年債利回りの0.195%、5年債利回りのマイナス化を生み出した。ところが、ここで債券相場がピークアウトしたことで、日銀トレードが通用しなくなってきた。入札で国債を抱えた業者が損失を発生させる可能性が出てきたことにより、いわゆる業者のリスク許容度が急速に低下し、その結果が2月3日や3月3日の10年国債の入札結果に現れていたのである。

ただし、2月3日と3月3日では若干、様相が異なるというか条件が異なる面があった。2月3日の10年債入札は相場がピークアウトしたあとの日銀トレードが効かなくなったことを端的に示したが、3月3日の10年国債については国債の発行日も影響していた可能性がある。

国債の償還月については毎月発行されている5年、10年、20年、30年の国債は年4回となっている。つまり3月、6月、9月、12月のそれぞれ20日が国債の償還日となっている。

国債の発行日は通常は2営業日後となる。これは国債の受け渡し日がT+2、つまり売買約定日から起算して原則3営業日目の日に受渡し・決済を行うことに揃えているためである。2月3日の10年国債の発行日は2月5日であった。ところが償還月に入札された国債の発行日は原則20日となる。つまり3月3日入札の10年国債は、3月という償還月となっているため、発行日が3月5日ではなく3月20日となる。これは3月5日の30年国債についても同様である。

国債利払期日前の3日間は振替停止期間に設定されている。今月で言えば17~19日が振替停止期間となる。これがあるため、3月償還の国債については13日の約定分から20日の受け渡しとなる。日銀が3月3日に入札された10年国債を買い入れるのは、20日の受け渡しが可能となる3月13日が最短となる。

当然ながら発行されていないものは買えないため(WI等の取引は例外)、日銀の国債買入日は通常、国債取引の決済スケジュールに合わせて2営業日後に設定される。しかし、償還月の新発債については最短で今回でいえば13日というやや変則的なものとなる。つまり入札日の2日から13日という期間が空くため、その間の価格変動リスクに晒されることになる。

相場が右肩上がりの状態、もしくは最悪でも同水準が維持されるのであれば、この程度の期間でも価格変動リスクは小さいとの認識となるかもしれない。しかし、右肩上がりの相場が終了し、右肩下がりなり、値動きの荒い相場となると業者には価格変動リスクがのしかかる。このため、3月3日の10年国債の入札も低調な結果となったとの見方もできるのである。

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