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観光業界のムスリム対応について

ちょっと気になった記事があったので、ご紹介します。以下、blogosからの転載。
「それは議会の質問に馴染まないので…」とか言ってくるのは、すごい失礼だと思う。
http://blogos.com/outline/106941/

さて、質問があることを伝えると、あの手この手で

「いまやっている以上のことは必要ありません」
「何ら問題なく、事業は円滑に進んでいます!」

というような、いわゆる「木で鼻を括ったような」答弁で済ませようとする行政側との熱いバトルが繰り広げられるわけで、曖昧模糊とした表現によって正面から答えようとしない態度には、時にイラっとすることも確かです。

こういう対応にしびれを切らして、怒鳴り声を上げるなどの高圧的な態度を取る議員も中にはいるようですが、私は極力ロジカルに、冷静に話しを進めていくように努力をしているつもりです。…が、どーしても我慢できず声を荒げてしまうときがあります。

それが、「先生、そういった質問は議会(委員会)に馴染みません」と言われるときです。
記事の本旨は、ブロガー議員として知られるおときた氏の「議会質疑」準備に関するものです。

この点に関しては、実は弊社は逆に「議員が急にカジノに関して質問してきまして、●●日までに資料準備をしないといけないのですが…」などと役所側から泣きつかれて資料提供をするという「駆け込み寺」的な役回りも負っておりまして、立場上「お互い大変すな」というコメントしか出来ません(笑

まぁ、でも役所側が議員に対して質問を取り下げるように迫るのは、確かにおときた氏が言うように越権かなと思われます。一方で、議員の中には役所側の周到な準備を妨害する為に、ワザと質疑書の提出を遅れさせることを「議会戦術だ」などと公言して憚らない人間も居て、そういう議員には「オマエは言論の府たる議会にそぐわないから、さっさと議員バッジを外せ」としか思いません。(念の為、これはおときた氏のことではないです)



…で、本論ですが、私が気になったのは質疑書準備の話ではなくて、おときた氏が今回、議会質問をするとしている「ムスリムの受入れ環境について」です。

観光業界界隈では、最近、ムスリム対応というのは比較的大きなテーマとして挙がってきておりまして、やれハラル食がどうだとか、キブラがどうとか、という話が、結構あちこちから聞こえてきます。(ちなみにハラル食はムスリム対応の食事、キブラは彼らが毎日のお祈りの為に必要なメッカの方角を示す印のこと)

勿論、観光振興の観点からはムスリムの方々が来訪しやすい環境を整備しましょうというのは必要な主張なのですけど、一点、いつも気になるのは「なぜ、このようなムスリムの方々だけに対して手当をしなければならないのか?」という論議が多くの場合、欠けているということです。

世の中にはムスリムの人達だけではなく、宗教的な戒律により「観光がし難い」環境にある様々な人達が居ます。例えば、ユダヤ教徒。ユダヤ教徒にも「コーシャ」という食事規定があって、敬虔な信者はこれを厳密に守っています。また、観光業界の中で時々問題になるのが、ユダヤ教が「安息日」として定める毎週土曜日の対応で、実は土曜日になると敬虔なユダヤ教徒は宗教的な戒律に基づき、エレベーターに乗れない(正確にはエレベータのボタンを押せない)人が出てきます。

ところが、日本のホテルは非常時を除いて客室への経路がエレベータしか整備されてない事が多く、このような敬虔なユダヤ教徒にとっては非常に利用がしにくい。都内のホンの一部の高級ホテルでは、低層階の客室をユダヤ教徒用に整備していて、この種の方々には従業員用の内階段を開放するなどといった形で対応していますが、最近のホテル開発は高級なものになればなるほどビルイン型(複合商業ビルの上層階などに組み込まれている)になる事が多く、そもそもこのような対応ができません。

また、これは宗教ではなく思想・信条の類ですが、ベジタリアン対応も日本は非常に不十分ですね。我々日本人の感覚ではベジタリアンというと「ただ肉を食べないだけだろ」という理解ですが、実はベジタリアンの中にもいくつかの流儀(?)が存在しており、肉を食べないのは共通しているものの、卵、牛乳、ハチミツなどを「食べられる/食べられない」など違いがあります。欧米圏の高級ホテルのレストランなどでは、多くの場合が各ベジタリアンの流儀に合わせたメニューなども置いているケースがありますが、日本では高級ホテルでもまだまだですね。

…と、実は世の中にはムスリム以外にも様々な宗教、思想、信条に基づく制約を持っていて観光がしにくい人達が存在しているワケで、これらに行政側が公金をもって対応すべきとするのならば、何の基準をもってその対応に関して線引きをするのかという事を大前提として論議する必要があります。

社会におけるすべての構成員が過ごしやすい環境を作るべきだという社会的正当性の下での施策ならば、少なくとも主要な宗教、思想、信条に対しては、ムスリムと同様に対応が必要となります。一方、あくまで「観光振興」を趣旨とするものならば、「コスト/ベネフィット」分析を前提として地域観光にとって利益があるかどうか、でしっかりと線引きをしなければなりません。

私自身はあくまで観光業界の人間ですので後者の立場にいるワケですが、一方でムスリムだけではなくて、上で挙げたベジタリアンおよびユダヤ教徒くらいまでは視野に入れた上で、その対応施策が必要となるかの政策的な判断を行うことが必要であると考えています。

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