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きっと、スマホ的感性の時代がやって来る

 近頃の通勤風景を眺めていると、新聞を読んでいるのは四十代より上ばかり、雑誌を手にしている人も珍しくなりました。

 三十代より下の男女が手にしているのはもっぱらスマホです。ゲームもスマホ。小説もスマホ。音楽もアニメもスマホ……。あらゆるサブカルチャーコンテンツをスマホで楽しんでいる景色を目にします。

 そういう風景を眺めていて思うんですよ。「ああ、将来のサブカルチャーは、こうやってスマホを覗き込んでいる人達と、その感性に牽引されていくんだろうなぁ」と。

 若い頃にどんなメディアに親しんでいたのか・どんなメディアのサブカルチャーを愛好していたのか――これって、すごく重要だと思うんです。20世紀に各ジャンルの漫画が円熟を迎えられたのは、それぞれの初期の名作に親しんで育った人達がいればこそ。アニメやゲームにしても、80~90年代に一生懸命にテレビにかじりついていた人が沢山いたから、クリエイター側にも“パトロン”側にも大勢の担い手がついているのでしょう。

 それぞれの時代のサブカルチャーは、子ども時代にメディアに親しんだ体験に紐つけられて成立している、と言い換えられるのかもしれません。雑誌やテレビゲームや子供部屋が普及し買い与えられていた子ども達が、子ども時代のサブカルチャーや習慣を捨てることなく、漫画を買ったり、DVDやブルーレイディスクを買ったり、据え置きゲーム機を買い替えたりして界隈を買い支えている――そういう部分はあるように思えるのです。最近とみに見かける、古いアニメのリメイクバージョンなども、そうした購買層をあてにしている部分が大きいのでしょうね。

 それなら、これからはどうなるのでしょうか?

 スマホでアニメやゲームを楽しみ、スマホで音楽を聴き、スマホで情報収集もコミュニケーションもまかなう世代が順次社会人となり、マスボリュームとしてのウエイトを増していくとしたら……若者向けサブカルチャー全般がその状況を正しく反映したものになっていくのではないでしょうか――かつての雑誌やテレビがそうだったように。

 雑誌的感性ともテレビ的感性とも違った、スマホ的感性とでもいいますか。

 この理路に基づいて考えるなら、「年少者のほとんどが、スマホ(やスマホ的)メディアに依存したかたちでサブカルチャーコンテンツを消費している」状況は、サブカルチャー界隈の予測因子としてとてつもなく重要な事実のように思えるのです。小さい頃にテレビやファミコンにかじりついていた層によって2015年のサブカルチャーが担われているのと同じように、将来的には、スマホであらゆるコンテンツを消費している層によって2030年頃のサブカルチャーが担われるのではないでしょうか*1。そして情報収集もコミュニケーションもスマホに頼り、雑誌には頼らない世代が成人を迎える頃には、雑誌やテレビ、特にゴシップ誌的なものや情報誌的なものはいよいよ老人向けになっていく……。

 もちろん、その頃にはスマホも他の違った何かに置き換えられてはいるかもしれません。

 スマホは携帯性と汎用性に優れた端末ですが、ディスプレイが小さい等、「完璧なメディア」とまでは言い切れません。遅かれ早かれ、そうした弱点を自ら克服するか、克服した上位互換な何かに取って代わられる可能性の高いものだと私は思います。

 だとしても、学齢期~思春期に(ガラケーや)スマホばかりいじってきた世代が三十代四十代と年を取っていけば、“スマホ越しに培われた習慣”や“嗜好のテンプレート”は近未来のサブカルチャーやメディアの位相に反映されていくとは思うんですよ。逆の視点で考えるなら、今現在の学齢期~思春期にリーチできていないサブカルチャーやメディアの感性は、近未来の文化生態系には反映されにくいと予測されます。

 こうした変化は、既に始まっているのでしょう。スマホでも楽しめるゲームやweb小説は既に繁栄していますし、子供のPC使用率がたいして上昇せず、ユーチューバ―なるパフォーマーが年少者の視線を集めている現状なども、将来のコンテンツ消費の風向きを予測させる材料と言えるかもしれません。

 であれば、スマホ的感性の時代、スマホ的消費者の時代は、まず間違いなく到来すると読んで良いのではないでしょうか。

 スマホに軸足を置き続けたサブカルチャー的感性と消費者の時代が巡り来れば、今日のサブカルチャーコンテンツの需給状況もきっと成立しなくなるのでしょう。例えば、解像度の高いディスプレイでアニメのブルーレイディスクを再生するような習俗(そう、これは習俗です)は「おじさんオタクやおばさんオタクの道楽」と見做されるようになるのかもしれません。いや、もうそうなりかけているのかもしれませんが。

 若者向けサブカルチャーが雑誌やテレビを前提としたものから、スマホを前提としたものへと移行することで、きっと色々なものが失われ、きっと色々なものが生まれてくるのでしょう。とみに最近は、その喪失と勃興の瞬間に居合わせているような気がしてならないので、備忘的にこれを書いておきました。

*1:コンテンツの制作にスマホ以外の機材を要しがちな点は、こうした傾向を軽減させるかもしれません。それでも、コンテンツの制作者と消費者の双方の感性・嗜好そのものがひとたびスマホ親和的なものになれば、その感性や嗜好の影響は必ず反映されるでしょう。制作される作品の傾向とヒットする作品の傾向の両面において。

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