記事

中学1年生男児の惨殺事件を少年法改悪の口実にさせてはならない

先般、中学1年生の男子生徒が惨殺されるという事件がありました。

 これに対し、警察は出頭してきた18歳の少年を殺人容疑で逮捕しましたが、その少年は現時点では容疑を否認していましたが、認めるという供述を始めたという報道がありました。

 折しも憲法改正国民投票の投票権者の年齢が18歳に引き下げられることから、民法における成人についても20歳から18歳へ、少年法の20歳も同様に扱うべきという議論が出始めています。

 公職選挙法では20歳以上の者と規定されていますが、これと成人年齢を同じにしなければならない必然性はありません。

 特に民法の成人年齢、少年法による少年としての年齢は、その法律の目的から決めるべきものであることは当然のことです。
少年法の「成人」年齢引下げに関する意見書」(日弁連)

 今回、殺人容疑で逮捕された少年が18歳ですが、このような事案をみてもなおさらのこと、成人として扱うことは不当です。

 身柄拘束され、警察という捜査機関のプロが密室でもって取り調べを行うのですから、18歳の少年が到底、太刀打ちできるはずもありません。

 今回の事件では当初から弁護人が選任されていますが(少年の出頭に同行)、だからといって弁護人に取り調べの立会権が認められているわけでもなく、経験未熟な少年は取調中は孤立無援なのです。

 これと選挙権を18歳に引き下げる場合と比較すれば、その違いはよくわかります。選挙権の行使は、誰もがそれを前提にして高校までの教育を受けるということ、そして身柄は当然に自由な立場ですから、色々な人たちと意見交換をしたり、自ら情報を集めるなかで自由な思考ができます。取り調べの対象となる場合と比べればその立場の違いは明らかであり、それ故に同じに考えなければならない必然性はないのです。

 そして何よりも、今回の事件では、この中学1年生の男子生徒が殺されるに至るまでに社会が何もできなかったのかが問われているのです。

 容疑者が有罪であることが前提となりますが、厳罰に処すればいいんだというこれまた短絡的な意見が出てくるのが常です。

 ここでは犯罪抑止というよりも犯罪被害者遺族の処罰感情こそ最優先という発想があります。
 現実に今回の犯罪が防げるのであれば、それを否定する人はいないはずです。「自分の身を守るの自己責任!」なんていう人は、ごく少数だと思いますが(これが「イスラム国」との関係になると途端に自己責任論が吹き出すから困るのです。「読売新聞の「自己責任論」 後藤氏、湯川氏が「イスラム国」に殺されたのは自己責任?」)、この男子生徒のSOSに何故、周囲が気付かず受け止められなかったのかという点です。

 特に今年1月には目に大きな痣まで作っていたのですから、今回の事件は防ぎようがあったのは間違いないのです。

 その意味では今回の事件を防げなかったことが日本社会の恥であることを自覚すべきなのです。

 ところが、そうなると(担任)教師は何をやっていたとか、親が悪いとかというような吊し上げの論調が目立つのは嘆かわしいことです。

 夜回り先生こと水谷修氏が述べていることがやはり気になります。
川崎で中学生が亡くなったことについて

 しかし、現実に個別の教員や親のせいにするだけの論調は筋違いです。

 そのようなことでは、このような事件がなくなりません。個人の頑張りだけに矮小化してはいけないのです。

 今回の事件に至るまでが重要なのです。

 18歳の少年が真実、犯人であったならば、極めてその生育歴がひどかったものと思われますし、実は、それまでも粗暴だったとすれば(この男子生徒へのリンチなど)、それ自体、問題を抱えた少年ということができます。

 しかし、社会はずっと放置し続けてきたのです。

 仮に今回の事件で捕まらなかったとしても、将来に渡って犯罪予備軍にならないとは言い切れません。

 そうなれば、損失を負うのは社会全体であり、私たちでもあるのです。

 その意味では少年のころからの育成こそが重要なのです。

 その少年のためでもあれば、私たちのためでもあるのです。

 犯罪を行ってから社会から排除すれば済むという問題ではありません。

 幼少期からの全ての子どもたちに対して社会が支援していく、そのための施策を実施しなければならず、そこに税金の投入を惜しむなどと愚の骨頂なのです。
財務省が目論む40人学級復活の暴挙

 夜回り先生がしていたようなことの内容の是非はともかく、教員が聖職として生き甲斐をもって子どもたちの向き合えるような体制とすることは重要なことです。

 また、それに見合った報酬も当然に必要です。精神論で頑張るなどという水谷氏のような発想では制度としては成り立ちません。

 家庭でも、貧富の差などで教育格差などがあってはならず、給食費の無償化を始め、すべて平等に扱われなければなりません。

 児童相談所の権限拡大も重要です。
児童虐待 グレーの部分をどうするのか

 昨今、愛知県で起きた殺人事件でも週刊新潮が容疑の少女の実名報道をしてカネ儲けの道具にしていましたが、本当に品のない行動です。
少年の実名等報道を受けての会長声明」(日弁連)

 このような少年を取り巻く社会が品のない大人ばかりでは少年の健全な育成にはほど遠い社会と言わざるを得ません。

あわせて読みたい

「川崎中1殺害事件」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    天皇陛下の政治利用疑惑。都議選前夜に、宮内庁長官の発言は軽率と言う他ない

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月25日 08:16

  2. 2

    <TBS「週刊さんまとマツコ」>悩みなき萬斎娘・野村彩也子アナに悩み相談させるのは残念

    メディアゴン

    06月25日 09:00

  3. 3

    金融資産1億円はもはや「富裕層」ではない

    内藤忍

    06月25日 11:24

  4. 4

    「天皇陛下が五輪に懸念」…異例の長官「拝察」発言に賛同相次ぐ

    女性自身

    06月25日 08:32

  5. 5

    反ワクチン派への否定に医師「長期的な副作用は不明であることを念頭に置くべき」

    中村ゆきつぐ

    06月25日 08:57

  6. 6

    安倍政権下でおかしくなった霞が関 自民党の良心は失われてしまったのか

    早川忠孝

    06月24日 08:39

  7. 7

    NHK「たけしのその時カメラは回っていた」予定調和の気持ち悪さ

    メディアゴン

    06月25日 08:27

  8. 8

    【Amazon Go】、レジなしコンビニが次々に臨時休業!4店減らし22店も6店が休業の訳?

    後藤文俊

    06月25日 08:42

  9. 9

    NYT「中国製ワクチンには効果が無い」と指摘 接種国で感染状況が悪化

    ABEMA TIMES

    06月24日 15:08

  10. 10

    池袋暴走死傷事故・飯塚被告の“記憶違い”の写真  

    NEWSポストセブン

    06月24日 17:10

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。