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天皇と皇太子のリベラルさに感激しすぎるのはやめませんか

(昨日の連続twをまとめてみました)

皇太子は2/23の自分の誕生日に際して「戦後70年にあたり、戦争を知らない世代に悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切」と述べました。

そういえば天皇も今年の元日に「本年は終戦から七十年という節目の年に当たります。 多くの人々が亡くなった戦争でした。 各戦場で亡くなった人々、広島、長崎の原爆、東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」と述べていました。

二人とも安倍内閣の歴史歪曲主義を牽制しているのではと、ちょっと話題になりました。

おかげでネットでは天皇や皇太子は「反日左翼だ」という、矛盾極まりない&“不敬”極まりない書き込みも(笑)

天皇や皇太子は安倍氏とは違い、歴史を歪曲して戦前の日本を正当化することを拒否し現憲法を守ることを是とする人物なのでしょう。それは良いことだし、そういう考え方を持つ人がいてくれること自体は嬉しいことです。

しかしこれに対し、さすが陛下!とひれ伏さんばかりの勢いで絶賛する人がいるのはどうなんでしょう。

また、内田樹先生は『それにしても、天皇とホワイトハウスしか自民党の「革命」を止める実効的な勢力が存在しないというような時代を生きているうちに迎えることになるとは思ってもみなかった。』と、天皇の発言に効果を期待するようなことを述べてみえますが、私は首を傾げてしまいます。

天皇も皇太子も政治に関わってはならぬ以上、会見であの程度の軟らかい表現で述べるのが限界ですから、安倍政権には何のダメージも望めないでしょう。華麗にスルーしておしまい。

天皇や皇太子に「自民党の革命を止める実効的な勢力」なんて過大な期待をするだけ無駄というものですし、そもそも期待なんかしてはいけないでしょう、天皇は政治と関わっていけないことは憲法上の定めですから。
(ついでに言うと、ホワイトハウスにも実効的な勢力があるかどうか疑問ですが、これはまた別の機会に)

というか、憲法遵守義務を負う天皇や皇太子が歴史歪曲主義を拒絶し護憲の立場に立つことは、実はちゃんと義務を果たしている当たり前の状態であって、本来なら特に感激するほどのことでもないのです。

ですが、憲法遵守義務を負う総理大臣が遵守義務に背きまくる異常事態が長く続いているので、つい感激したくなっちゃうんでしょうね。その気持ちはわかります。

でも、天皇や皇太子に対する過大な賛辞、評価はむしろ有害だと思います。

天皇や皇太子のこうした発言に「感動」し、私たちを導いて欲しいと讃えるのって、慈悲の心で民を思いやる名君に感涙する下々の平民とあまり大差ないメンタリティではありませんか?とても水戸黄門的ですね。

実はそういうメンタリティが、成熟した民主主義を阻む一番の要因だと私は思うのです。

「名君」をありがたがる前近代的なメンタリティでは民主主義は決して維持できません。

民主主義の維持発展には三権分立だとか普通選挙だとかいった制度=「ハード」を整えるだけではダメで、最も必要なのは、国民一人一人が近代的な民主主義的メンタリティを持つという「ソフト」だと私は強く感じています。

余談ですが、近代的な民主主義的メンタリティを国民の中に培えるのは「教育」だけです。

三権分立などの「ハード」は一度制定してしまえば、後は安定的に持続します。

しかし「ソフト」はそういうわけにはいきません。民主主義的メンタリティを育て維持するには、教育の場で不断に努力し続けるしか方法がないのです。それが途切れたらたちまち民主主義的メンタリティは後の世代に維持できなくなり、民主主義は後退を始めるでしょう。

だから安倍氏は真っ先に教育を狙って奪ったのです。

天皇が戦前戦中のように政治的権力を持つことはおそらく二度とないでしょう。

しかし天皇制は、前近代的なメンタリティを強化し民主主義的メンタリティを育てないようにするにはもってこいの「ハード」です(例えそれが天皇個人の思いに反していようと、そうなってしまうものなのです)

だから自民はいつでも天皇を神聖化したがっているし、改憲案でもそうしてるのです。

理不尽な「菊のタブー」は戦前から連綿と国民の心を支配しています。

天皇制も国に存在する一つの制度にすぎません。他の制度について論じるのはどうってことないのに、天皇制ついて自由に論じたり批判することはもとより、天皇が関わることになると、とたんに「畏れ多い」と縮こまって合理的な思考が出来なくなります。

理不尽な「菊のタブー」が国民の心を支配している限り、「民主主義的なメンタリティ」の合格点には到達できない、と言えるでしょう。

天皇や皇太子が「リベラル」であることを過度に賛美したり、安倍政権の暴走に対する牽制を過度に期待したりするのもまた、浸透した菊のタブーによる非合理的で前近代的なメンタリティのあらわれですから、私は賛成できないのです。

別に天皇や皇太子個人に反感を持てと言ってるわけではありません念のため。

要は、天皇や皇太子を特別扱いせず、他の人を評価するときと同じ基準で評価しましょう、だって同じ人間なのだから、と言う話です

天皇や皇太子がリベラルな発言をしたって迫害を受けることはまず考えられませんが、一方では、長期間にわたって日々の嫌がらせに屈せず歴史歪曲主義を批判し憲法遵守を声を上げ続ける人々(例えば君が代不起立を貫く先生達)も多くいて、大概はそれにふさわしい尊敬を受けていないのです。

天皇も不起立を貫く先生達も同じ人間なのですから、天皇のリベラルな発言に過度に感激する分を、少しは後者に向けてもいいのでは?

そんなことも思い起こしてみませんか?

そんなわけで、年明けの天皇と皇太子の「お言葉」に大きな希望を託したり「感動」したりするのは、民主主義的な物の見方という点からはちょっと見直した方がいいのでは、といいたかったのでした。

民主主義的メンタリティ・民主主義的な物の見方と日本人、というのは私が追っていきたいテーマの一つでもあります。

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