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「英雄を必要とする国は不幸だ」

「救世主待望論」はいつの時代も変わらず存在します。これはカルト宗教の教祖にのめり込むのと似た現象です。
世論が英雄を待ち望むようになったら、その社会はファシズムの条件が整いつつある危機的状況にあると思った方がいいようです。

マガジン9条

マガ9的!2006ワールドカップより
(引用開始)
「1930年代初め、町には失業者があふれて、(当時のドイツの通貨)ライヒスマルクはハイパーインフレで紙屑同然。国民経済が破綻寸前にあったとき、ドイツ国民はヒトラーを救世主とみなしたのです」

 国民のなかに英雄待望論が漂うのは危険の兆候です。ナチスドイツを逃れ、アメリカに亡命していた劇作家ベルトルト・ブレヒトが当時書いた『ガリレイの生涯』という戯曲には「英雄を必要とする国は不幸だ」というセリフがありました。
(引用ここまで)


ヒトラーは世界恐慌でどん底に落ちた当時のドイツにとっては救世主でした。
泥沼のイラク戦争や不況にうんざりしていたアメリカにとって、オバマ氏は熱狂の対象でした。
小泉劇場もそうでしょう。
そしてこちらでも述べましたが、現在ネットでは、主に政権交代を熱心に支持した人々を中心に小沢さんを熱狂的に支持する「小沢信者」現象が顕著です。
リベラルな人々にでさえこういう救世主待望論が見られるのは興味深い現象ですし、「英雄を必要とする国は不幸だ」という台詞からすれば、いかに今の日本が限界に追い詰められた不幸な状態かを物語っていて憂うべきことだと思います。

ところで、ネットはありのままの現実の縮図にはなっていないように思います。ネットで多数を占める世論と現実の世論とではずれが存在するのです。
たとえば人気ブログランキングを見れば上位は狂信的なネトウヨサイトばかりが占めますが、現実社会ではむしろ彼らはマイノリティです(ノイジーではありますが)
また、一昨年田母神論文に問題はあるかというネット意識調査が行われたとき、ネットでは問題なしとする方が多数を占めましたが、現実の世論調査では問題ありとする方が多数を占めました。(どうやら問題無しに投票するよう呼びかけがあって、そこから一気に「問題無し」が増えたとの噂も聞きます)
また、去年の衆院選では麻生陣営はニコニコ動画で麻生支持が高かったのを真に受けて勝利を確信し、とんでもないことになったという失笑伝説もあります。きっと麻生信者が「勝利」を呼びかけて麻生支持の票が集まったんでしょうね。

推測ですが、このネット世論と現実の世論のズレは、どうも特定の層がネットで頑張ることに大きい価値を見いだす傾向にあることから起きるのではないかという気がします。
実際ネットで多数を占めようと頑張るのって、ほとんど無意味な努力なのに・・・ネットを制す者は現実世界をも制す、とでも勘違いしているのでしょうか?もはやネットで勝利を収めることが自己目的化してるような感すらあります。
政治サイトを見ていない人口の方がまだ遙かに多いのですから、いくらネットで呼びかけて多数を取ったってそれは単にネット上に存在していた同類項が寄り集まっただけのこと。それで現実でも多数派になれるわけがないのに・・・。
ですから、こういう層に対してネットでムキになって対抗しすぎるのも「コップの中の嵐」になりがちだと私は感じます。(なのでわざわざネトウヨサイトに論戦を挑みに行かないわけですね笑)

現実の世界では、小沢信者はネットで見かけるほど多くないように感じます。現実では救世主として待望されてるどころか、小沢さんはどうもね〜、と冷めた見方をする人の方が私のまわりでも多いのです。あるいは、支持と言っても、菅さんに比べればまだマシだから仕方なく、という消極的支持です。
ネットユーザーには信者が多数いるのかもしれませんが現実の世界ではどうも救世主として待望されてるわけではなさそうですね。代表戦でかなりな苦戦を強いられている、その程度の「待望率」ですから、ネットユーザーの世論と現実の世論は少々ずれてるように思います。

むしろ現実の世界で救世主として待望されているのは小沢氏よりも橋下氏や、名古屋なら河村市長なんかです。私には小沢信者より橋下信者や河村信者の方が遙かに深刻な問題に思えます。だってこちらは現実の世界でネットユーザーでない人々からも救世主として待望されてるのですから。
ですから私は小沢崇拝現象より橋下崇拝現象の方が長期的に見て、より危険だと思います(今まであまり小沢信者現象をブログで取り上げなかったのはこれが理由です)
あと陰りが見えてきましたが、石原信者、東国原信者も。

いずれにしろ「救世主待望論」が出てくるということは、ファシズムが生まれる土壌が整いつつあると警戒しなければなりません。
救世主の出現で物事が急転直下すいすい好転する、という都合の良いことが起きる可能性は現実ではあまり高くありません。ほとんどが苦しく地道な努力の積み重ねです。
アメリカ大統領選の時は、オバマが大統領になれば明日にでもよくなる仕事にもすぐありつける、みたいな雰囲気で満ちあふれていましたが、それは幻想に過ぎませんでした。

優れた政治家は、その成し遂げた仕事に対して賞賛を受けるべきです。何もしないうちから偶像崇拝して英雄に祭り上げてはいけません。救世主に身を委ねたくなる衝動と戦うことは、ファシズムの到来に抵抗することでもあると思います。

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