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「政治の世界は今女性の力を必要としている」~民主党・山尾志桜里衆議院議員インタビュー~

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昨年の総選挙で当選した議員の475名のうち、女性は45名。全議員のうち女性の占める割合は9.5%とOECDの中で最低となっている。安倍政権が「女性の活躍推進」を謳う中で、国会の中では依然、女性が増えていない状況がある。こうした状況を解消するためには、どのような施策が必要なのだろうか。現職中に妊娠・出産を経験し、2012年の選挙で落選しながらも今回国政に復帰した山尾志桜里議員に話を聞いた。(取材・文:BLOGOS編集部)

政治が「自己責任」を最初に言ったら終わり

―山尾さんは、政治家になる以前は検事でした。最初に政治家を志したきっかけから教えてください。

山尾志桜里議員(以下、山尾):私自身は、自分が政治家になるなんて考えたこともありませんでした。

どんな職業も3年目ぐらいで、「一つの案件を自分一人で担当してみろ」と言われるようになると思うのですが、私は検事3年目を名古屋地検の岡崎支部で迎え、そこで殺人などの重大事件を扱うようになったんです。

起きてしまった犯罪に対して検事が出来ることは、捜査をして現状の法律の枠の中で容疑者の罪を糺すということだけです。ですが、取り調べをしていく中で、容疑者の家庭環境から罪を犯すまでの過程を聞いていくと、生まれた環境や社会に出てからの様々な事情などがあるわけです。もし、そういうものが逆だったら、自分と取り調べをしている相手が座っている場所も逆だったかもしれない。そう思うことが何度もあったんです。

そうした経験から、犯罪が起きてしまった後の対処というよりも、犯罪が起こってしまう原因や背景、社会情勢を少しでも良くしたいと考えるようになったんです。それで初めて自分の中で、政治家になるという選択肢が出てきたんですね。

―政治家を目指す中で、民主党を選んだ理由については?

山尾:一つは、二大政党制というものを考えたときに、その実現性が最も高い野党であったということがあります。

「検事出身で何故民主党なの?」というのは、多くの人から言われましたし、今でも言われます。ただ、私の見てきた犯罪の世界というのは、自己責任論が通用しない最後の世界だと思うんです。

つまり、雇用や教育の格差、社会保障のセーフティネットの網の目がやぶれているといった問題を放置していた結果生まれた社会の歪みが、最後に犯罪となって出てきてしまう。そして、その最後のツケは、何にも関係ない被害者やご遺族がはらうことになってしまうわけです。それは、もうその人の責任論では説明のつかないことですよね。

自民党さんは、「自助」とか「自己責任」といったものを結構前面に出してくるような部分があると思うんですが、個人的には、そこに違和感があったんです。もちろん、民間の企業や経済活動の中で、「自立を目指す」とか「自助が大事だよね」というのは構わないと思います。でも、政治がそれを先に言ったら終わりだろうという思いがあるんです。だから、自民党という選択肢はちょっと考えにくかったんですよね。

―2009年に初当選を果たすも2012年の民主党から自民党への政権交代選挙で一度落選されました。2年間の浪人生活を経て、昨年国政に復帰されたわけですが、政治家は落選するとただの人ですから、キャリアプランも描きづらいですし、お子さんも抱えながらの政治活動も大変だったと思うのですが。

山尾:2012年の落選時は、非常に悔しい思いをしました。当時、小学校に上がる前の一番手のかかる小さい子どもを育てている女性議員というのは、私の知っている限り、私と小渕優子さんと野田聖子さんの3人でした。

お二人は当選をされて、私は落選しました。もちろん、当時の自民党と民主党という違いもあったと思います。しかし、その時に強烈に思ったことは、やはりある程度の地盤がないと、子育てしながらの選挙活動は難しいのか、ということでした。そうした地盤がなくても政治家としてやっていけるんだ、ということを見せたかったのですが、できなかった悔しさを感じました。

本当に政治とは縁のない、いわば“普通の一般人”が、自分の思い一つで選挙に出て、多くの女性が望むように子供を産んで育てながら、そのまま政治家を続けていける。そのことを自分で証明したいという強烈な思いがあったので、それが出来なかったことは非常に悔しく思いました。

―落選した際に政治家を辞めようと考えなかったのでしょうか?

山尾:まったく思いませんでした。落選者の中で日本一得票が多かったという結果に支えられたということもありますし、ここであきらめたら、日本に二大政党が根付くのが何十年も遅れてしまうという危機感がありました。

自分の政治家としてのキャリアも始まったばかりですし、ここでまだやめられないという思いの方が強かったですね。

公開討論会を日頃の当然やるべき政治活動として根付かせたい

―山尾さんのように官僚→政治家というルートをたどる方は多いと思います。ただ、一度落選してしまうと官僚には戻れません。30代、40代の働き盛りの方が、官僚に戻れないというのはもったいないとも思うのですが。

山尾:官僚、民間、シンクタンク、政府、政治という中で、人材がグルグル回っていくという制度は絶対必要だと思います。

政治家というのは、一つの顕著な例ですが、それこそ例えば法科大学院で司法試験はなかなか突破できないけれども有為な人材が、ある一定の年齢を超えると、どこの扉をたたいても、その扉が開かないという問題もあります。

もちろん政治の世界に飛び込むと、役所には戻れない。戻れないとは言わないけれど、民間もおそらく政治の色がつくと結構戻りにくい部分があるでしょう。この問題を解消できれば、もっともっと政治にチャレンジできる人材が増えてくるのではないでしょうか。

―子育てをしながらの政治家活動において、苦労された点などはありますか?

山尾:昨年の選挙で国政に復帰するまでの2年間の間で、私が感じたのは、小さい子どもを育てている女性には、いわゆるドブ板選挙をやる上で、物理的、時間的限界があるということでした。

もちろん、私もそうした選挙活動は相当やったという自負もありますが、とはいえ制約がある。そうした制約を乗り越えるために、公開討論会を選挙活動中、また日頃の当然やるべき政治活動として根付かせたいという強烈な思いが芽生えたんです。

日本の場合、選挙期間に入ると合同演説会は出来ても公開討論会はできません。仮に合同演説会や公開討論会をやろうとしても、中立の団体が運営を引き受けてくれなければ実施できません。さらに、例えば自民党と民主党の一対一の対決であれば、相手が受けてくださらないと開催できない。

私が最初に出馬した2009年の選挙の時は、政権交代という波の中で、全国的に青年会議所(JC)のような団体が「公開討論会やるぞ」と盛り上がったので、私の選挙区である愛知7区でもJCが主体となって実施してくれました。調べていないので、確かなことは言えないのですが、09選挙の時はほとんどの選挙区でやっていたと思います。

しかし、12年の時は、私自身は相当呼びかけましたし、様々な団体にも開催してほしいと言いましたが、結論としては一回もできませんでした。今回は、女性自身が見て聞いて、いい議員を選ぶことを目指す「るくぶ」(女性の見る・聞く・選ぶ)という団体が、たまたまうちの選挙区内にあり、そこが「ぜひやりましょう」と提唱してくださって、合同演説会を1回実施できました。

それも選挙期間に入っていたため、候補者同士が議論することはできないわけです。一つの質問に対して、「はいAさん、次Bさん」みたいな感じになってしまう。実施できたことは良いのですが、クロストークできた方が、もっとよかったと思います。また、最近は突然の解散総選挙ということがずっと続いているので、時間がないから団体の側も準備ができないといったこともあって、どんどんやりにくい方向になっているように感じています。

例えば、イギリスなどでは選挙期間中に複数回、地元の自治体や教会で、候補者をそろえて平場からの質問に答えるというようなイベントをやるそうです。そうした機会があるのが当然だと思います。解散の声を聴いた瞬間に、みんな自分のポスターや政策ビラを作るのではなくて、まず合同演説会をやるためにお互いの日程をおさえようと。こういう風になるのが、候補者にとっても有権者にとっても、良いことだと思うんですよね。

特に、どうしても物理的、時間的制約がある子育て中の女性の候補者には、ドブ板で足りない部分を補えるチャンスになると思うんです。そういうイベントをやって、それをメ ディアがしっかりと伝える。様々な団体と連携しながら、なんとかそういう雰囲気作りをしていきたいなと思っています。

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