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極めて妥当なサマーズ氏の見方 - 長谷川公敏

 6月13日、ローレンス・サマーズ氏はロイター通信社に寄稿し、米国経済の見方や景気対策の提言をした。サマーズ氏は、16歳でマサチューセッツ工科大学に入学、28歳でハーバード大学教授になるなどの天才で、その後も米財務長官を務めるなど極めて優秀な経済学者である。

サマーズ氏は厳しい認識



サマーズ氏の寄稿の内容は、

・米国経済は政策を総動員して2008年〜2009年の危機を脱したが、まだ失われた10年の渦中にある
・米国がおかれている需要不足の経済は、通常の経済とは全く違う動きをし、(その証拠に)日本はこの20年間ほとんど経済成長していない
・需要不足経済は、潜在的な供給(潜在成長力)を増やしても、効果が期待できない
・需要不足経済では、職業訓練をしても全体の求人数増加には効果がない
・バブル崩壊後の景気下降は10年以上続くことがあり、軍備増強など(需要増加)の要因がなければ脱却できない
・米ルーズベルト元大統領は、戦争に伴う軍需拡大がなければ1941年に失政者として退陣 していたはず
・インフラの整備・更新を先延ばしにするのは誤りで、金利が低く、建設業の失業率が高い(20%)今こそインフラ投資を拡大すべき
・(異例の超低金利)金融緩和政策を転換すべきではない
・米国経済の低成長が、米国財政の最大の脅威なので、財政面の需要喚起を続けるべきで、所得減税、法人減税をすべき

というものである。つまり、「需要不足経済は通常の経済とは全く異なるので、供給力を高めても意味がない。超金融緩和の中で、財政支出を拡大しインフラ整備を行い、減税を実施すべきで、それが財政再建に繋がる」という主旨だ。

羨ましい米国経済



米国経済は昨年のうちに、四半期ベースでは、名目GDP、実質GDPともリーマン・ショック前のピークを更新しており、今年になってからもGDP成長率は、年率換算で名目4〜5%、実質2〜3%で推移している。日本から見れば羨ましい限りの経済成長だが、失業率は9%程度で高止まりしており、サマーズ氏やバーナンキFRB議長などは、需要を拡大しなければ経済は正常化しないと見ている。

日米中央銀行の意見は一致していない



一方 日本は、この20年間で2度のバブル崩壊に見舞われており、名目GDPは20年前とほぼ同じ水準になっている。日本こそ、サマーズ氏が提言する政策やFRBのような超金融緩和策を取らなければならないのだが、必ずしもそのようにはなっていない。

サマーズ氏の寄稿について、白川日銀総裁は6月14日の記者会見で記者の質問に、「バブル崩壊後に金融政策や財政政策を積極化しても、経済は速やかに戻らない」と答えており、サマーズ氏の意見には必ずしも賛同していないようだ。

だが、バーナンキ氏は6月22日の記者会見で、1990年以降の日本のデフレに触れ、「中央銀行の決断がデフレ回避のカギ」とし、日銀に同情しつつも、QE2(注)の効果との対比で、暗に日銀の対応のまずさを批判している。大変残念だが、理屈で考えても実績を見ても、米国のほうが正しいようだ。

(注)QE2(Quantitative Easing Mark2:金融の量的緩和策第2弾)
 デフレ懸念を払拭し、株価上昇を図ることで、景気を回復させ失業率を低下させるために、FRB(米連邦準備理事会)が昨年11月から今年6月までに、市場から6000億ドルの米国債を購入するという金融緩和策。他に償還期限が来るMBS(不動産担保証券)などの償還金(同期間で2500億ドル程度)でも米国債買入れを行う。 

 QE2により、失業率は低下、デフレ懸念は払拭され、米国株価は上昇した。逆にインフレ懸念が出ているが、FRBは一時的なものだと見ている。

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