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大増税時代の到来 〜給与所得控除額の改正〜

 政権はぐらついており、来年度予算の成立すら不透明ではあるが、前回に続き、税制改正をテーマにしたい。

 企業競争力の強化という観点から法人税については、実効税率の引き下げなどの減税策(実際の減税効果は限定的?)が打ち出されている一方、個人の所得税は増税色の強い改正案になっている。

 今回は、納税者の大多数を占める給与所得者に係る税制改正を整理したい。なお、内容は本コラム執筆時点(平成23年3月1日)のものであることから、最終的には内容に一部修正があり得ることをご承知置き頂きたい。

個人にとっては大増税時代の幕開け



 平成23年度税制改正の個人にとってのキーワードは、“大増税”である。

 特に高所得者層に対して、厳しい増税策が打ち出されている。

 具体的には、給与所得控除の見直しである。

 そもそも給与所得控除という制度をご存知だろうか。

 給与所得控除とは、給与所得者に対して設けられている控除制度であり、給与収入の金額に応じて一定金額をみなし経費として差し引いてもらえる制度である。

 例えば、病院に勤務している医師や看護師は一般的に給与所得者であり、医療法人の理事長も医療法人から受け取る役員報酬は給与所得であることから、給与所得者である(ちなみに個人形態で医療機関を経営されている場合は事業所得者となる)。

 給与所得者の必要経費は、原則として、認められない。つまり、いくら仕事に関係のある経費の領収書を集めて確定申告をしても、原則として税金上は何の救いもない。

 しかし、給与所得者であっても必要経費に相当する支出はあるはずだ。

 例えば、サラリーマンの場合、仕事のためにスーツや靴を購入するだろうし、勉強のために書籍を購入することもあるだろう。これらの支出は、明らかに仕事のための支出、給与という所得を手にするために必要な支出であると考えられることから、本来であれば、給与所得に係る必要経費として認められるべきといえる。

 しかしながら、日本全国の給与所得者が、支出の都度、領収書を集めて、必要経費として確定申告をするという制度にしてしまうと納税手続が煩雑になってしまう。

 そこで、必要経費とされるものが実際にいくらあるかどうかにかかわらず、給与収入の金額に応じて、一定額が控除される給与所得控除という仕組みにして、給与所得者の必要経費を割り切っているのである。

 給与所得控除は、 給与の収入金額が増えるにつれて控除される金額も連動して増える仕組みになっており、上限は設けられていない。

 しかし、今回の税制改正では、給与の収入金額が1,500万円を超える給与所得者の給与所得控除額については、245万円を上限とする改正が予定されている。

 つまり、1,500万円を超える給与所得者は、確実に増税となる。

 更に、企業の役員等に対して支払われる役員報酬については、上限が設定されるどころか、縮減されることが予定されている。例えば、2,500万円の役員報酬を受けている者については、現行の制度下の給与所得控除額は295万円であるが、税制改正後の給与所得控除額は110万円縮減され、185万円となり、その結果、所得税住民税合わせて55万円の増税となる。

 医療法人の理事長・理事の役員報酬もこの改正の影響を受ける。

 一般的な同族会社であれば、役員=株主とケースが多く、株式配当という形で増税分を補うことも可能であるが、医療法人の場合には、配当が禁止されていることから、増税分を補う代替手段が制限されているという点から言えば増税のインパクトは大きいといえるかもしれない。

人材の空洞化?



 以上のように、給与所得控除の改正は、給与収入が多い人、そして、一般的に高い水準になる役員報酬を標的にした増税策となっている。

 以前、騒がれた国内産業の空洞化よりも深刻な国内人材の空洞化に繋がりはしないかと不安な気持ちになる。優秀な人ほど日本で働くのではなく、広く海外に働き場所を求めることになるのではないだろうか。

 給与所得控除の改正案は、“最小不幸社会”の理念が分かりやすく示された例であり、財際破綻の懸念⇒(富裕層に向けての)更なる増税⇒人材の空洞化のシナリオの序曲ではないだろうか。

 税制は平等であるべきであろうが、今回示されている税制改正は色々と考えさせられる。

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