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官僚を辞めて月間約30万PVのブロガー税理士に転身!イヤ客と付き合わない楽しく働く秘訣~井ノ上陽一氏

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独立起業し、フリーランスになっても、イヤな仕事に追われるだけのつまらない人生ではなく、仕事やクライアントを選んで楽しく働き、生きていく――。そんな理想的な働き方を実践しているのが、月間約30万PVのブロガーで、税理士の井ノ上陽一氏(42歳)だ。

独立してやってしまいがちな罠への対処法が書いてある素晴らしい井ノ上氏の本、「フリーランスのための一生仕事に困らない本」を読んで感銘を受け、取材依頼をしたところ、すぐさま快諾していただいた。

今はとっても理想的な働き方をしている井ノ上氏なのだが、これまでの人生は決して順風満帆ではなかった。これまでの人生の経緯をたどりながら、理想的な働き方、楽しく働く秘訣について話を聞いた。(取材日:2015年2月23日)

■1:就職浪人を挽回するため公務員試験に。でも官僚になじめず3年で退職就職試験、全滅。就職浪人だ・・・。

井ノ上氏が大学4年生、22歳の時。特にやりたいことがあったわけではなく、ただ漠然と数字やパソコンを使う仕事がいいなと思い、今でいうところのIT関連企業やゲーム会社などを受験したものの、まさかの全滅!就職浪人となってしまった。

「このままでは敗北者で終わってしまう。真っ当な道に戻らなければ!」

敗者の人生を挽回するには資格しかない。祖父が税理士だったことや、数字が得意ということもあり、税理士資格取得をめざそうと思ったが、難しそうなのであっさり断念した。

資格が無理なら公務員試験に受かればいいんだと試験勉強に励むことに。第一志望の国税庁はダメだったが、数字が得意なことが活かせそうな総務省統計局に合格。25歳にして国家公務員となることができた。しかも希望通り、数字とパソコンを使う部署に配属。これで就職浪人のハンデを巻き返し、人生安泰なはずだった。

ところが。働くうちにいろんな不満が出てきた。井ノ上氏はいわゆるキャリアではなく、ノンキャリア。このため、どれだけ仕事をがんばっても、キャリア組の方が入省当初から地位は上。ノンキャリアは昇進できるポジションの上限も決められていた。給与体系も年功序列。どれだけ仕事をかんばっても成果に関係なく、先輩の給料を追い越すことはできない。地位も給料も限度があり、先が見えてしまったことで、次第に働くモチベーションが下がっていく。

しかも入社4年目に他省庁との調整をする部署に。数字もパソコンも使えない。自分の望む仕事じゃない。このままここで働いても自分の未来はない。そう感じた井ノ上氏はせっかく国家公務員になれたのに、わずか3年、28歳の時に辞めてしまったのだ。

省庁内では3年で辞めるなんて前例のない珍事に大あわて。希望の部署に異動させようか?休職扱いにしてしばらく休むか?といった提案もあったが、ここにいても未来はないと感じ、「税理士をめざす」という大義名分を掲げてなんとか辞めた。

■2:税理士合格するも独立に踏み切れず。独立直後も金を借りて散財総務省を退職後は税理士事務所を転々としながら、税理士試験の勉強に励んだ。31歳の時に税理士試験に合格。32歳で税理士登録をした。

しかし独立開業する勇気もなく、でも勤めていた税理士事務所は辞めてしまい、一般企業の経理を経験しようと転職することに。税理士事務所はあまり給料はよくなかったが、一般企業の方が給料がよいので貯金ができることと、企業の経理=税理士にとってのお客様側を経験できることが転職した理由だった。

しかし1年ちょっとでこの会社も辞めてしまい、でもまだ独立起業する勇気もなく、33歳の時に再び税理士事務所に転職した。

ここではパートナー税理士として自由にやらせてもらった。しかし35歳=2007年の時のこと。事務所の人に一緒に共同事務所でやらないかと誘われた。将来的には一人で独立したいと話をしたところ、その2週間後に、独立めざすなら月末で退職したらという話に。えっ!もうちょっと準備してから独立するつもりだったのに。

これはまずい。独立して一人でやっていくには、仕事をとるために、ブログをはじめようと、退職勧告されたその日からブログをスタートした。

でも独立の踏ん切りがついた。金融機関からお金も借りることができたので、顧客0件にもかかわらず、都内に事務所を借り、月約20万円で一人スタッフを雇い、広告宣伝やホームページ制作などにお金を注ぎ込んだ。後々から考えれば、散財してしまった失敗だった。独立起業したら立派な事務所を構え、人を雇い、宣伝に金をかけるべきとその当時は思っていたからだ。

ただこの時から顧問契約の月額料金を5万円に設定した。月2~3万円の税理士が多い中、強気の値段だった。高い料金設定のために仕事が入りにくいにもかかわらず、なぜ独立直後からこのような料金設定にしたのか。

「多くの税理士が仕事欲しさに安い値段設定してしまう結果、安い仕事の数が増えてしまい、他の仕事を受けれなくなったり、安いゆえに数をこなさないといけないというジレンマに陥っていました。こうした働き方に疑問を持っていたので、きちんとコンサルティングする代わりに、月5万円という料金設定にしました」

独立して4ヶ月間は顧問契約が1件のみ。収入は月5万円のみだ。このままではどんどん資金が底をついてしまう。そんな時、超ラッキーな形で仕事が舞い込んできた。ホームページを見て「誕生日が一緒だったから」という理由で、大きな仕事が入ってきたのだ。

ブログは毎日更新していたが、はじめはなかなか仕事獲得にはつながらなかった。親しみを持ってもらうために日記的な内容が多かったからではないか。そんなのではダメだ。人の役立つ内容でないとダメと気づき、ブログの内容を徐々に方向転換していくようになった。

仕事獲得のために、簿記や決算書のセミナーを開催した。しかし来るお客さんは税理士や経理の人ばかりで、顧問契約してほしい経営者が来ない。

むしろ井ノ上氏が他の税理士と違った特徴はExcelがめちゃくちゃ得意なこと。Excelの強みを活かした税理士・経理向け情報発信にシフトすると、出版社から声がかかり、2010年(38歳)の時に初の著書となる、『そのまま使える経理&会計のためのExcel入門』を出版できることに。企業の税理顧問契約だけでなく、税理士や経理向けのコンサルティングや、Excelコンサルティングが仕事になるようになった。

■3:拡大至上主義のせいで疲弊する税理士業界を改革したい!2011年の震災を機に、事務所を借りるのをやめ、人を雇うのもやめた。これを機に税理士業界にいてずっと疑問に思っていたことが明確になった。それは拡大至上主義による疲弊のジレンマだ。

従来の税理士事務所は、拡大することがいいことだと思っているせいで、
事務所を借りて固定費増大、人を雇って人件費も増大

事務所代や人件費を稼がなくてはならないので、安易な価格競争にはしり、なんでもかんでも仕事を獲得

仕事が増えるので人が必要

人が増えると人件費もかさみ、事務所代もかさむ

安い仕事のため利益が出ないので、利益を出すために、スタッフを低賃金、長時間労働でこきつかう

このためスタッフがやめていくなど人事面や人間関係で苦労する

こんなはずじゃなかったのにと苦悩する という負の連鎖に陥っていたのだ。

こんな働き方はおかしい。拡大路線で疲弊した働き方をしているのは健全ではない。拡大至上主義ではなく、事務所もなく、人も雇わない身軽な「ひとり税理士」になるべきではないか。

それに何より単純作業はどんどんITなどに置き換わって、いずれ人手がいらなくなる。Excelや会計ソフトやシステムを使えば、かなりの部分は自動化できる。税理士が代わりにやってあげるのではなく、Excelやソフトの使い方を教えてあげればいい。税理士がやるべきことは、付加価値の高いサービスやコンサルティングをすることではないか。

そんな風に考えた井ノ上氏は、ストレスの多い働き方ではなく、従来のビジネスモデルから転換した税理士の働き方を実践しつつ、それを他の税理士にも情報発信するようになった。

またこれまでの経験上、自分がイヤだと思うクライアントと、無理につきあってもいい仕事はできないと痛感。そこで井ノ上氏は実におもしろい試みを始めた。ホームページで「当事務所が苦手とすること」と題し、いわば「こんな客は来ないでほしい」というシャットアウトリストを明記したのだ。

例えば・電話で頻繁に連絡をとりたい・打ち合わせ時にはたばこを吸いたい・会社に意思決定者が複数人いる・領収書を送って試算表だけを安く作って欲しいという方は「当事務所では、お役に立てない」と書いてある。

「あらかじめホームページに書いておけば、自分と合わないお客さんが来ることはなくなるのでよいです。何もすべてのお客さんに気に入られる必要はない」とその効用を話す。

ブログには「やらないことリスト」も明記している。例えば・値下げして契約しない・個人事業主のお客様と契約しない・外出時以外の20:00以降のFB、Twitterをみない・たばこをすう人(気遣いがない人)とつきあわないなど。

なぜわざわざ公表しているのか。「今の自分があるのはブログのおかげ。ブログでやらないことリストを書いたり、自分の考えを書いたら、自分がブレなくてすむ。ついついフリーランスという不安定さから、自分の原点を忘れてしまいがちですが、ブログに書いておけば、人にも公表しているので、きちんと自分の理念を守れるようになる」

今ではブログのアクセス数は月間約30万PVに。ブログの広告収入もそれなりにあり、ブログコンサルティングも行っている。

独立起業に憧れて独立したものの、高い固定費のためにサービスを低下させ、価格を安くし、馬車馬のごとく働くスタイルは働く側もお客側にもマイナスではないか。すべてのお客さんに無理していい顔しようとせず、自分のやりやすいお客さんとだけ付き合った方が、自分にとっても相手にとっても幸せではないか。

税理士の働き方のみならず、士業全般や、フリーランス全般も陥ってしまいがちな不幸な働き方をやめ、雇われない、雇わない働き方を提唱する井ノ上氏の考えは、これから個人が主役の時代となる中で、幸せな働き方ができるヒントになるのではないか。

・ぜひ独立企業志望者や個人事業主の方は、自身の働き方を見直すために井ノ上氏の著書を読むとよい。「フリーランスのための一生仕事に困らない本」井ノ上陽一著

・2007年から毎日更新している井ノ上氏のブログhttp://www.ex-it-blog.com/

・当事務所の苦手なことなども書いてある井ノ上氏のホームページhttp://www.inouezeirishi.com/

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